毒親からの解放ストーリー (5)

 私が五年生になった時に初めて図書係に選ばれた。図書係の主な仕事は、掃除と本を決まった場所に戻すことだ。おかげで、本を読む楽しみをおぼえた。図書係になった初めの頃は、母はいい顔をしなかったし、借りた本を家に持ち帰ることも許さなかった。しかし私は本を読む楽しみを覚えてしまったのだ。母に隠れて、少年少女世界文学全集を一冊ずつ読破していった。
 
 そのお陰かどうかはわからないが、国語の成績が徐々に良くなっていった。国語の成績が良くなると、他の教科の成績も良くなったのは自分ながら不思議に思えた。いつも母に『バカだ、出来損ないだ』と罵倒されていて自信を無くしていた私だったが、学校では誉められ、次第に同級生達から、一目置かれるようになっていった。

 五年生の二学期の通信簿は今まで見た事も無いような良い成績だったので、父は喜び、そして誉めてくれた。母は弟でなくて私の成績が良いので誉めること無く黙っていただけだった。しかし、本を借りて家で読むのは、黙認してくれるようになった。これは、私が精神的自由を獲得したに等しい出来事だった。

 こうして学校の図書室からは、偉人伝、世界の遺跡、エジプトのピラミッドの秘密、などあらゆるジャンルの本を借りて読むことができるようになったのだ。本を読む度に、いつも怒られてばかりいる自分が日常から解放され、世界中を見ている様な気になったものだ。
 
 そんなある日、母の目を盗んで友達の家に遊びに行ったことがあった。その時は図書係の学年委員会があった日だったが、先生の職員会議の時間となってしまい、いつもより早く、委員会が終わった。それである委員のお宅に数人で遊びにいくことが急きょ決まったのだ。もちろん友だちの家にお邪魔することなど母に言えばダメと言われるに決まっているので、黙って行った。祖母の家以外の他人の家に行く事は初めてだったので、すごく楽しみだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?