毒親からの解放ストーリー (11)

 最近ユリの態度が変だ。
ユリは元々気が小さくて、臆病だったのに、大きくなるにつれて、何かわからないけれど変わった。だいたいユリは、赤ちゃんの時から夜泣きがひどくて大変だった。あの頃は何度も首を絞めて静かにさせてしまおうか思った。それでも夫の正男がユリのことを、ことの他可愛がるものだから、私も夫の前では一応可愛がるふりをした。

 結婚してわかったのだけど、夫には、私が妊娠した時、婚約者が居たらしい。つまり夫は二股を掛けていたと言うことだ。でも私の妊娠を知って私との結婚を決めのだろう。これは夫なりに男のケジメをつけたと考えられる。しかし夫に婚約者がいた事は、思いの外私を悩ませたものだ。

 出産後は二時間おきの授乳やおしめの交換で起きなくてはならなかったし、寝不足のままで家事もしなくてはならない。結婚前まで家事は母親や姉さんが全部してくれていたので、こんなにも家事が大変だとは、想像してもみなかった。それでも私の心を脅かす夫の元婚約者に負けたくなかったから、私なりに頑張った。

 それは夫の背後にかすかに見える彼女の影に怯えていたからだ。
夫を取られるのではないかと心配しながら赤ん坊の世話をするのは、私にとって物凄いストレスだった。その捌け口は夫が可愛がっている赤ん坊のユリに向かったのは当然のことだった。

 産気づいて夜中に病院に連れて行ってもらったけど、陣痛がなかなか進まなくて、一晩以上もかかって、やっと子供が出て来た時には、嬉しくて、神様に感謝をした。が、同時に夫の元婚約者に勝ったつもりになって喜んだものだった。

 でも退院してからは、赤ん坊の世話でゆっくりと寝てもいられなかった。2時間おきにお乳をあげないといけなかったし、小さな命が儚く思えて、安心が出来なかったからだ。その為に身体も、気持ちも、すっかりまいってしまった。少し大きくなれば、大丈夫と思っていたけど、今度は夜泣きが始まった。

 ますます寝不足になって疲れてしまったけど、仕事をしている夫を起こすわけのもいかず、赤ちゃんが泣き止むまで、一人でずっと抱っこしていた。本当に心身共に辛かった。そのうちにだんだんこの子が憎らしくさえ思うようになってしまった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?