毒親からの解放ストーリー (26)

 そのうちに学校中に、生徒が先生を誘惑したという噂が広がり、他の父兄からも学校側に抗議が届くようになった。その為、学校側も顧問と美貴子の二人を呼んで、事情を聞いたのだった。当然二人は否定をしたが、貴美子はその聴取の途中で過呼吸を起こして、卒倒しまった。

 直ぐに彼女の親が呼ばれて、貴美子を家に連れて帰ったが、両親は娘を一方的に責め立てた学校側の態度に不信感を抱き、顧問を訴えると言い出した。その為学校側と美貴子の親との間のやり取りで、生徒と先生の問題は、大きくなってしまった。

 そのため美貴子は学校を中退せざるを得なくなった。そして暫くの間、彼女は家に閉じ込もったままで、外へ一歩も出られなくなったのだ。
 それ以降美貴子は、食事を摂ることも出来なくなった。摂食障害となった彼女は精神的にも追い詰められ、やせ細り、魂が抜けたように呆けてしまい、かろうじて呼吸だけをしている状態になってしまったのだ。

 そんな彼女を父親が卒業した大学病院の精神科へと連れ出した。
父親に連れられた美貴子を初めて見かけたのは登院実習時の田中先輩だった。田中先輩は彼女を見て驚いてしまった。顔つきは幼く、中学生くらいにしか見えないのに、全体の姿はしなびたおばあさんのように見えたからだった。

 彼女の身に何があったかわからないが、人間は、精神を病むと、若くてもあのような姿になってしまうという事実に驚愕してしまったのだった。
治療が始まり、美貴子は何度か治療に通ううち、徐々に生気を取り戻して来た。枯れてしぼんでしまった花に水を与えたように、徐々にふっくらとして来て、若さを取り戻し、生気が戻り、明るさも取り戻してきた。


 田中先輩は実習生なので、直接美貴子の治療に参加をする立場ではないが、研修生として患者のお世話をする事で、彼女の気持ちを和ませようと田中先輩なりに一生懸命にサポートをした。
 そんな先輩を彼女は頼りにして、彼を自分の家庭教師にしてくれれば、食事も頑張るし、勉強も頑張れるといい始めたのだった。それで美貴子の両親は学生である田中先輩に直接、彼女の家庭教師になってくれるように頼んだ。

 暫くの間は彼女も治療に専念して頑張って、食事を摂ったり、勉強にも励んだりしたけど、結局のところ、スポーツ番組を見たり、女子高生どうしが楽しげにおしゃべりをしている姿を見ると、フラッシュバックが彼女を襲い、その度に発作を起こしては精神科への入退院を繰り返すことになってしまった。

 そんな出来事に遭遇して、田中先輩は精神科の医者になって、心を病んでしまった人を助けたいと思うようになったそうだ。
 そんな時に私が何か深刻な悩みを抱えているように見えて、放っておけなかったらしい

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