小選歌集「夏」
夏、邪魔ものを消せる魔法ならまずは自分につかいますから
麦畑 金色が水を運ぶ命は正しき模様を描く
不確かな愛撫など忘れてもよい 今日間違えのない半夏生
金星が死んだ 一人の部屋にて無口の奥歯は奇跡を齧る
眠るように音色は溶けぬ未だ言葉は無音か美しい人
この世の角部屋に住まいて海は魚眼の青と信じ続ける
いつまでもきみといたいといいながら脱走してたアメニモマケズ
憂鬱な夜明けに目覚め俺たちはしらふでだって月に吠えてる
縁日のおねだりをあとひとつお願いだからゆっくり生きて
冬の星座が去るベランダに寡黙の鍵をかける音がしており
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