見出し画像

小選歌集「空港の朝」

十年で二度しか会わぬ友人の安否を知れる空港の朝

コンビニで購入せし本にアメリカンドッグの写真挟まる

亡くなりし会うことのない人々の名前が座る喫茶ガボール

漏刻よ月に刺されてそれからか暗き森を飼っているのは

人々を愛せなかった罰として氷を落とせ冬のカルピス

原発の文字が傾く新聞に包まれていたキャベツよ夏よ

ガスストーブの薄い火そのままにわたしはわたしの中にて眠る

今日の日に今日が終わっていくようにあなたの声も保存できない

心から優しい人が飲む酒はこんなに苦い血の味がする

生乾きの幸福で夜道を拭いてわたしはずっと迷子である

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?