我が子は可愛いという以外に子供を産んで良かったこと

子供を産む産まないは完全に個人の自由だし、不妊治療に悩んでいる方とか子供時代のトラウマや金銭的理由で産み控えをしている方には全力で寄り添いたいと思うが、それとは別に私自身の話で言うと、子供を産んで良かった。子供は可愛いからとか自分の遺伝子が残せるとかそういう理由ではなく、単純に私にとって生活上メリットがあったことをつらつらと書いてみる。

第一に、男の人から気軽に声をかけられなくなった。これは実に楽だ。
前述の通り私は全くもって美人ではないがなぜか異性からモテた。それはとてもありがたいことだし、彼らの存在に救われた面も多々あるのだが、そうではない雑多なモテの処理は非常に面倒な場面が多い。この世知辛い世界、気を使わなければならない場面は多数あるのに、何故どうでもいい言い寄ってくる人を角が立たないように己に害がないようにかわす術についてあれこれ考えなければならないのか。なぜ勝手に言い寄られてやんわりとお断りしたら「悪女」的な悪い噂が立つのか。こっちは名前すら知らないあんたがなぜ私の色気だか下着の色だかを妄想してることを知らなければならないのか。女上司に「あんたは男絡みの問題が多そう。ちやほやされるのも今のうちなんだからねっ」と言われたときは本気で開いた口がふさがらなかった。それ、この時代に出てくる言葉か?こんな、無駄に女として見られることの弊害に辟易していたが、子供を産んだとたん聖母マリアのごとく周りが世間一般のお母さん像を勝手に当てはめてくれて手のひら返してお母さんとして見てくれるのが非常に心地よい。オカンは最強の女だ。

第二に、もう子供を産めるのかとかいつ産むのかとか元気な子が産めるのかとかそういったことに悶々としなくてよくなる。子育てはもちろん大変だが目の前のハプニングに対処すればいいだけであって、「私の身体はきちんと子供を産めるのか。仕事と両立できるのか」などの特に夜中に襲ってくる己が作り出したプレッシャーにやられなくて済む。ましてや私は仕事との両立でいつ子供を産むのか、年齢的に産めるのか、産んだ後キャリアはどうするのかなどずっと悩んでいたので、産んでしまった後は「でももう腹の中に戻せねーし!育てるしかないし!」という気概でいる。勝手に自分の妄想で作り出した「義実家は旦那を放っておいて仕事ばかりで家庭を顧みない嫁をどう思っているのだろうか」モンスターも出産とともに消え去った。余計な考えが取っ払われ、育てる以外の選択肢がないのはこれまた楽だ。

第三に、周囲が勝手に忖度してくれる。仕事と子育てをしているお母さんはとても大変とありがたくも周囲の方は理解をしてくれているので、子育てから離れられて楽~という仕事も、「大変だから変わるよ」とそもそも本人にも伝えずに色々やってくれる。それが申し訳ないのでこちらも色々やると、普通にやっているだけなのに評価してもらえる。お子さんがいるから・・と休日に呼び出されることもないししっかり休ませてもらえる。おかげでオンオフがはっきりとしてメリハリがついて、仕事も軽快にこなせる。子供がいなかった時よりパフォーマンスが良い気がするのは絶対的にこの休める環境があるおかげだと思っている。

第四に、地域の人とコミュニケーションが取れるようになった。子供がいない頃は、街の人から声をかけられることなんて全くなかった私だが、子供がいるだけでいろいろな人から声をかけてもらえる。年配の女性が子供に「かわいいわねえ」といって声をかけてくれたり、若い男性がエレベーターや電車の席を譲ってくれたり。よく子供がいると邪魔がられると悲しむSNSなど情報を見るが、私は今のところそんな目にあったことが一度もない。大変にありがたいなあ、と思う。そして世間から緊張感をもって捉えられるママ友という存在も、私には心強い戦友にしか見えない。子育て情報や地域の情報を教えてもらったり、ちょっと醤油貸してレベルの近所づきあいがあったり、地域に根差して生活をしているという実感が得られて非常に心地よい。

第五に、世界が格段に広がった。出産準備のため初めて西松屋を訪れ、哺乳瓶だのミルトンだの搾乳機だの見ていた時、「全く知らない世界に足を踏み入れてしまった・・」と夫婦で衝撃を受けたのは忘れられない。子供用品の店とか、子供関係の遊び場とかこの世にはこんなものがあるんだという発見や、胎児の遺伝子検査や待機児童問題などニュースで見ていても全くピンとこなかった問題が自分のものとして情報が入ってくる。世界中の国々を回ってきた私だが、ここまでの異世界はこれまで見たことがない。純粋に広がる世界を楽しいと思える。

もちろん、子供を持ったことで失っていることもある。大好きだったヒールはほとんど履けないし、おしゃれなバーで一杯、なんてことは絶対できない。大好きな辛い食べ物も子供がいると作れないし、妊娠したことで失った仕事の機会もたくさんある。体形は崩れ、それを補う定期的なジム通いもできない。毎日のように行っていたサウナは半年に一回行ければ良い方だ。旅行はコロナだからそもそも行けなかったにしても、子連れ不可の場所もあったりでなかなか自分の行きたい場所には行けない。センスの良い部屋に住みたいなんていう願望はとっちらかったレゴとプラレールで当面かないそうにない。というか、子供を産んでから夫とはレスだ。

それでも、子供がかわいいという最大のメリット以外にも、上記のようなアネックスのメリットもあり、私は子供を産んで良かったと本気で思っている。そもそも高齢出産で、子供を産むまでに一通り満足するまで子供なし生活を堪能したという余裕もあるかもしれない。かように高齢出産はメリットもあると付け足して世の子供を産もうかどうか迷っている妹たちに伝達したい所存。


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