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【サンノゼ1日目】Airbnbの鍵が開かない!

7月26日のお昼過ぎ、成田空港で出国手続きを済ませると、そこはもはや日本ではないみたいだった。外国人ばかり歩いていて、私は急に不安になった。本当に外国へ行って、私はこの子たちを守り切れるだろうか。

でももう、行くしかないんだ。

子どもを産む前、単身で海外へ行ったときとは見え方が違った

10時間のフライトを終えて、サンノゼ空港に着いた。7月26日の16時半に日本を出たけど、着いたのはまた26日の朝10時。サンノゼのほうが16時間遅れているからだ。

入国ゲートを抜けるとそこは空港のロビー……とかではなく、いきなり出口だった。急に外へ放り出され、子どもたちに私のそばを離れないよう指示しつつ、迎えのタクシーを探す。でも、見つからない。iPhoneにはタクシー会社から、立て続けにSMSが送られてくる。「ゲートを抜けましたか?」「どの出口にいますか?」

SMSを確認し、返信するのも一苦労だ。子どもたちの手を離すのが不安だし、離した隙に画面を見ている間にも、立ち止まっているのが苦手な次男がどこかへ行ってしまうかもしれない。緊張と警戒心でいっぱいの私の心境とは裏腹に、頭上には気持ちのよい晴天が広がっていた。

そのとき、黒人の運転手さんが誰かを探しているのが目に入った。

「あなたの名前は?」
「ユキナ ◯◯です」

「こっちへ」。どうも、案内してくれるようだ。私は少し警戒したが、子どもたちの手をぎゅっと握り、ついていくことにした。案内された先にはきちんとタクシーが停まっていた。

乗車中は、外の景色がまぶしかった。私は18年前、イギリスに降り立ち、その美しい景色に魅了されたときの気持ちを思い出した。

やっぱり、欧米の美しい景観が私は本当に好き

子どもたちは緊張しているのか、疲れているのか、無表情だ。

予約していたAirbnbのマンションには、15分ほどで着いた。緑の木々と花と噴水に囲まれた、綺麗なエントランス。

一泊2万円ちょっとと今のアメリカにしては格安なのに、素敵な場所だった

オーナーさん(女性)からのメッセージに記載されていたとおりにガレージを開け、無事に鍵を見つけた。

が、その鍵でドアを開けようとするも、開かない。どうして? 外は30℃近くて、日本よりは湿気が少ないものの、暑い。オーナーさんにメールしようとするも、電波が薄くて送れない。子どもたちも心配そうに見ている。

1階がガレージ、2階と3階が部屋になっている3階建てマンション。部屋に入るには、1階の共用ドアの鍵を開ける必要があった

10分くらいがちゃがちゃ、がちゃがちゃと回して、やっと鍵が開いた。

「やった……!」

重たいスーツケースを引きずりながら懸命に階段をのぼり、無事に部屋に入ることができた。

しーん……。

美しい部屋なのに、私はなぜかとても不安になった。しょっぱなから鍵が開かなかったのが大きい。長男は「日本みたいなホテルがよかった。ここぼく怖い」と言い、次男も一緒に「怖い」と言っている。今思うと、私の不安が伝わってしまったのかもしれない。

2、3分ほどして、ピンポンが鳴った。私一人なら出ていたかもしれないが、子どもたちがいるので念のため、出なかった。1〜2分してドアを開けると誰もいない。オーナーさんからメッセージが届いていた。鍵の件で心配して、来てくれたのだ。

私は、「開いたのでもう大丈夫です」と送った。もう疲れ切っていたし、今から初対面の方と、英語で試行錯誤しながら話すのが億劫だったというのが本音だ。鍵は無事開いたし、次もきっと開くだろう。

長男撮影。今思うと、せっかく来てくれたオーナーさんにとても失礼なことをしたけど、当時はそこまで考えが及ばないほど疲れていた

数十分して、気持ちが落ち着いてきたので、まずは夕食の買い出しにいこうと子どもたちと家を出た。念のため、また鍵が開くかどうか試してみた。すると、また開かない。貴重品以外、全部部屋に置いてきてしまった。電波が悪くてオーナーさんへメールも送れない。夫にLINEで電話したいのに、つながらない。

もう、だめかも……。

長男が泣きそうになっていて、私は「ごめんね、ごめんね」と謝った。長男は夫に「お母さんが困らないように助けてあげるんだよ」と言われていて、日本を発ってから今まで本当によく頑張っていた。

自分を過信して、ホテルではなくAirbnbという慣れないサービスを使ってしまったこと。子どもたちをこんなに不安にさせてしまったこと。このときの私は、子どもたちをこの旅に連れてきたことを心底後悔していた。

でも、とにかく今を乗り越えなければ。このまま外で夜まで待つことになっても大丈夫なように食糧と水だけは買っておかなければと、歩いて5分のところにあるスタバへ行き、500mlの水2本と、パンやドーナツを5〜6個買った。チップを含めて5000円くらい取られた気がしたが、もうよかった。

帰宅して、子どもたちに水とパンを渡し、また鍵を回してみたが、やはり開かなかった。しかも、前回はかろうじて鍵が回ったのに、今回はびくともしない。電話は自信がないのであまり使いたくなかったが、もう手段がないのでオーナーさんに電話した。

「また鍵が開かないのですが、どうしたらいいですか? 一度来ていただけませんか?」
「今、仕事中なの。2回も行けないわ」

私は途方に暮れた。でも一生懸命、鍵が開かなくてとても困っていることを伝えると、「OK、10分くらいで行きます」と言ってもらえた。少しほっとして周囲を見渡すと、あれ? 最初に荷物を置いた部屋の前と、景色が違うような……。

似たような外観の建物が10棟以上並んでいた

私たちは、間違って別の棟の鍵をがちゃがちゃとやっていたのだ。

「だから鍵がびくともしなかったんだ!」と言うと、長男が「なーんだ! 場所が違ったんだ〜!!」とうれしそうに飛び跳ねる。急いで元の部屋に戻ると、ブラウスにタイトスカート・ハイヒールという“まさに仕事中”の服装をした40〜50代のオーナーさんがすでに到着していて申し訳なくなった。

鍵を渡して確認してもらうと、

「あれ? おかしい。鍵が壊れているわ」

2回目は棟を間違えていたけど、1回目の到着時も開けるのに苦労した。やはり、壊れていたのだ。「ちょっと。。確認しておいてよ。。。」と怒りを覚えつつ(やっぱり私はザ・日本人なのだ)、愛想笑いを浮かべた。でも、オーナーさんはとてもいい方で、子どもたちをすごく可愛がってくれた。

その夕方、オーナーさんが修理業者を呼んでくれ、私たちは無事に鍵の開く生活を送ることができるようになった。長男は、「トラブル、もう起きないといいね!」と笑顔で言う余裕も出てきたようだ。私もそんな長男の顔をみてほっとした。

やっとできたオンライン電話。普段、どれだけ夫に助けられているかを痛感した一日だった

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