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ただいまの場所へ

ふと目に止まったのは、一枚の写真。開かれた玄関と、その玄関を照らしている小さな明かり。

私が汐見の家に泊まったのは3回。冬と、春と、秋。


最初に泊まったのは、去年の12月。冬の冷たい風を感じながら、自転車でしまなみ海道を巡っていたときにふらっと立ち寄った。

滞在中はみかん狩りを体験したり、温かい五右衛門風呂でぼーっとしたり、小さな掘りごたつを囲んでみかんを食べたりもした。

1番の思い出は、鯛めしで私の誕生日をお祝いをしてもらったこと。外は風がビュービュー吹いていたけれど、汐見の家の中は色んな人の声でとても暖かかった。

飾らない、自然な暮らしに魅力を感じていた私。

何か惹かれるものがあったのか、1回目の滞在から少しした後、島暮らしをやってみたくなった。仕事を辞め、汐見の家でヘルパーとして過ごすことに。

個性豊かな汐見の家のゲストさんや、優しい島の住人たち。ときどきおしゃべりに来たり、野菜を届けてくれたりする近所のおじいちゃんに、愉快なルームメイト。

近くの島にレモンの収穫のお手伝いに行ったり、毎日桜を見に行ったり、さまざまな人に囲まれながら、ここでは書ききれないたくさんの経験をした。

天窓から差し込む太陽の光で目が覚める時間。今日はどんな人が来るかなと心待ちにしながら、掘り炬燵でぼーっとする時間。

毎日の美しい夕焼けや、波の音を感じる時間、その全てが私の宝物になった。

それまで、何か物足りないな〜とモヤモヤしながら日々を過ごしていた私には、どこか隣に自然について感じている島の人たちの生き方が贅沢に思えた。

旅は私たちの「日常」を見直すきっかけを与えてくれる。

そして、宿は誰かとの出会いの場所であり、情報が行き交う場所。さらに、「誰かの終わり」と、「誰かの始まり」が出会う場所だ。

はじめ、汐見の家は自分自身の「何かの終わりに気付いた」場所だった。

次にヘルパーとして泊まったときには、自分がしたい暮らしや、生き方が見つかったから、そこは私の「始まりに気付いた」場所になった。

つい先日、汐見の家に泊まりに行った。

冬の掘りごたつが、夏仕様に変わっていて、猫が増え、季節の変わりと、過ぎた時間を感じた。

そんな汐見の家は、いつの間にか終わりでもなく始まりでもなく、「ただいま」の場所に変わっていた。

私は日本中に、ただいまの場所を作りたい。

そしていつの日か、
海みたいな広い心で「お帰り」と言える人になりたい。

島で出会った、たくさんの人たちのように。

私の旅は、これからも終わらない。

Yukina

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