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舞台「魔銃ドナーTestament」感想

ちょっと時間が経ってしまいましたが、3月31日にアクタリウムのちぃちゃんこと岩﨑千明さんが出演されたStudio-K'z×アリスインプロジェクトの舞台「魔銃ドナーTestament」の千穐楽公演を観劇してきました。
いつもの如く、舞台演劇の感想は書き始めたらキリがなくなってしまうので、今回もXではなくてnoteの方に書きたいと思います。

あらすじ

本公演のフライヤーからあらすじを引用させていただきます。

不死者たちの楽園・千年王国を夢見て、優秀な人間を仲間にする旅を続けるバイツ(吸血鬼)・彼岸子は、とある映画の主演女優、坂上桜子を気に入り、日本に入国する。
厚生労働省・異端審問課はバチカンからの情報を受け取り、桜子の元に浅倉神酒たちドナー隊を差し向ける。
桜子を探し出し、千年王国の夢を説く彼岸子。桜子を保護し、彼岸子たちを狩ろうとするドナー隊。彼岸子の理想を許さないバイツの貴族種、ハイネ。
さらに、バイツを根絶やしにするためならどんな犠牲もいとわない、バチカンから派遣された戦士コートニーが参戦。桜子を巡る戦いは混戦の様相を呈する。
それぞれの思いをかけて戦う少女たちの、運命を巡る物語。

Studio-K'z×アリスインプロジェクト「魔銃ドナーTestament」フライヤーより引用

本作はアリスインプロジェクトの人気シリーズ「魔銃ドナー」の原典を舞台演劇として4年半ぶりにリブート上演したものとなります。

感想

約120分の公演時間の中に、アクションあり、ドラマありの大満足の舞台でした。
オープニングでは主題歌「Balance 2024」をバックに、キャストが舞台狭しと踊る圧巻のもの。主題歌の曲調からも、今作の雰囲気を窺い知れます。
複数の勢力の思惑が絡み合う複雑な展開も、導入からの描写が丁寧で、何の予備知識が無くとも理解が出来ます。
しかしながら、その中でも、ちぃちゃんが公演前に投稿していた人物相関図は、各勢力がどうなっているのかの予習にとてもプラスでした。

序盤は、立川支部でエース級の活躍をしつつも、妹第一で規律を守らない浅倉神酒、そして、桜子を自らが目指す楽園・千年王国に加えるため、日本に入国をするバイツ・御船彼岸子の2人の主人公の勢力を中心に物語が進んでいきます。
そこにバチカン・コンフィデンシャルのクルセイダー・コートニーとミュート、バイツの中でも上位の貴族種・ハイネ・アドラーの勢力が絡み合い、一筋縄ではいかない展開になっていきます。

ストーリー展開上で私がポイントだなと感じたのが、神酒の行動原理。
全てにおいて、妹・玉串がRH-L型による苦痛から解放されることが第一になっており、自らの死を厭わないかのような行動も見られます。
神酒がブラッドドナーとして立川支部に身を置き、バイツ駆除に身を投じているのも、利害が一致しているからに過ぎず、これが命令無視、単独行動に繋がっていき、終盤での彼岸子との関係性にも影響していきます。

物語は進み、コートニーが持つ聖剣フランチェスカがバイスに対して有効打となるためには、RH-L型の血液型必要だと明かされる。
結局は魔銃と同じなのである。
そして、吾妻隊の1年生、ちぃちゃん演じるやよいが、フランチェスカの餌食になってしまいます。
ここは観ていて「あ、やよい、死んだ…」と思ってしまいましたが、負傷して血液を幾許か奪われてはいたものの、生命は助かり、後に復帰しています。

RH-L型の血液を吸った聖剣フランチェスカがコートニーの意識と身体を乗っ取ってしまいます。
バチカンの目的は、どうやらこのフランチェスカにRH-L型の血液を与えることらしい。
それによって、剣に封ぜられているものを目醒めさせるらしい。

バチカンの暗躍により、状況は混沌としていきます。
最後には神酒の妹・玉串が入院しているRH-L型の患者が集まって収容されている病院が、コートニーとミュートのターゲットにされてしまいます。
そんな中で、神酒と彼岸子は取り引きを行い、手を結ぶことに。
序盤に敵対していた勢力が手を組んで共通の敵と戦うという展開、ありきたりではありますが、激アツな展開です。
病院では玉串は無事だったものの、その他の患者のRH-L型の血液を吸い尽くし、フランチェスカが完全覚醒。コートニーの意識と身体を乗っ取って完全な形で顕現してしまいます。
圧倒的な力の前に太刀打ち出来ないところで、ハイネ達が加わります。
あの圧倒的な力のハイネですが、フランチェスカの前にやられてしまいます。
ハイネ達の加勢もあったものの、神酒は自分の血を限界まで使ってしまい、フランチェスカに対して決定打を与えられず。
生命を捨てて最後の一発を撃つ覚悟をした神酒に、玉串が自分の血を使うようにと。
瑞は神酒は玉串の血を魔銃フェンリルに込め、フランチェスカに放つ。

全てが終わった後、神酒と彼岸子の取り引きにより、桜子が彼岸子のもとへ。
彼岸子はフランチェスカにやられて、力を失って眠りにつくハイネが目覚めるその時まで、ハイネと共にいることを選びます。
桜子は自らの意思で彼岸子に血を吸われ、バイツに…。
そして、立川支部の面々が次なるバイツ駆除のターゲットとして狙っているのが、バイツになった桜子。
ここでエンディングとなります。

長々とストーリー展開を書きましたが、ここで書いた以外にも要所があり、伏線もいろいろと張られています。
アクションシーンでは役者さん達の動きと音効や照明がバッチリ揃っていて、迫力があります。
とにかく120分があっという間でした。
序盤の敵同士が終盤で手を組んで戦う展開や、作品名の「魔銃ドナー」というワードが、作中の台詞でも出てきていたり、オタク心をくすぐる展開、演出がとても良いです。

細川博司さんが脚本を書かれている作品で感じるのが、登場人物の名前の意味深さです。
今作の主人公である浅倉神酒、その妹の浅倉玉串。
神酒も玉串も日本神道が由来だと考えられ、そして共に「神に捧げるもの」であります。
作中では「RH-L型」の血液を魔銃に込めて撃ち出すことでバイツを倒す力を得ています。
これは言うなれば、血を捧げることの対価として、バイツに対抗し得る力を得るという事で、それをなす人物の名前が「神酒」「玉串」という捧げ物なのは、とても意味深長だなと。
また、もう1人の主人公、御船彼岸子。
彼女の名前にある「彼岸」は仏教で死後の世界を意味する言葉でもあります。そして、その彼岸である死後の世界には、三途の川を舟に乗って渡っていきます。
加えて、皇族が逝去された後、納棺にあたる儀式が「御舟入の儀」と言われています。
そんな「死」を連想させる言葉を名に含む、不老不死の彼岸子が作中で目指しているものが、永遠の楽園・千年王国なのだから、これまた意味深です。
これ以外にも、厚生労働省・異端審問課立川支部の吾妻隊のメンバーが、隊長のレイカのみ名前がカタカナ、その他のメンバーが全員名前がひらがなといのも、何か意味があるのかなと勘繰ってしまいます。

長々と書いてきましたが、まだまだ書き足りないくらいです。
私のスケジュールの都合で、大千穐楽の1公演しか観られなかったのが残念でなりません。
舞台演劇は生ものです。
同じ座組、同じ演目だったとしても、同じ公演はありません。
観るたびに何かが違う。それこそが舞台演劇の最大の魅力だと思います。
やはり、舞台演劇は良いものですね。

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