大病になってはじめて、わかった事が沢山あった。

私は、10年前に大病をした。

きっかけは、当時某大手グループで、管理者一年生だったが仕事がありすぎて、優先順位をつける事もできず、夜も普通に家に帰れない日々だった。前任者のやり残した事が大きすぎた。

ケアプランのサインは一年近く貰えていない入居者が居る、ADLの急激変化があったにも関わらず、要介護度区分変更申請もしていない。

一番ヤバかったのは、入居金未納がとっくに退去を申し渡せる期限に来ている方が居た事。

施設内も、ぐちゃぐちゃだった。何から手をつければ良いかわからないくらいだった。

ある日、割と何でも食べれる私が、何も食べれないコンディションである事に気がついた。

近所に胃腸科の医院があるので、胃カメラで胃を撮影してもらったら、大きな腫瘍がある。

びっくりした。4センチだそうだ。

「詳しい検査を、大きい病院でしてもらった方がいいので、紹介状を書きますね。」


後日、医科大学附属病院で再検査をした。

「俗に言う、胃がんは粘膜腫です。今回のケースは胃がんではないんですが、筋肉腫の可能性があります。良性は特に問題ありませんが、悪性だと『gist』と言い、がんと同じような動きをします。


厄介なのは、穿刺をすると悪性だった場合、細胞が飛び散るのであちこちに悪性腫瘍ができてしまう可能性があるのです。対策としては、穿刺せずに根本から切除するしかありません。4センチだと、切らずに半年に一度検査して経過観察の対象ですが、どうされますか?」

…ようはグレーゾーンという事か。

嫌な予感はしていた。gistの自覚症状は無いらしいが、何かがある気がしていたのだ。

悪性になるかも知れない、いや、もしかしたら悪性になっているかも知れない腫瘍を、ずっと置いておくのも気持ちが悪いと感じた。

「先生、不安なのでもうそれなら切って貰えませんか?」

私は、先生にお願いして、手術をしてもらう事にした。

緊急性はないので、2ヶ月待ちだったが、8月に入院して手術をした。

切ったらやっぱり、悪性腫瘍の『gist』だった。

10万人に1人。

何でそんな薄いとこ引くの。

どうせ引くなら、宝くじとか当たって欲しかったなぁ。


退院した後の経過観察の受診で、主治医からgistについて聞かされたが、可能性を示唆された時点で、ある程度色々自分で調べてはいた。

だから、あぁ、やっぱり。と感じた。


この時初めて私は、自分の身体を犠牲にしてまで仕事をしてはいけないのだと感じた。

母に折檻され過ぎて死にかけた時、バイクで事故して意識不明になった時から生還した時は、あまり感じなかった感情が湧いてきた。

ダンナや子ども達。自分の家族が居る事で、人生の終わりを迎えたく無いという執着が生まれるのだと、改めて感じたら、何だか泣けてきた。

生かされたのだ。

私のような人間でも、まだやる事はあるのだという事だ。


そして、職場の同僚や部下たちから、かなり気を遣って頂いた。

色々な方から、メッセージや労いの言葉を頂いた。

普段必死になり過ぎて、気が付いていなかったが、自分が思っているよりも、人は自分の仕事や日頃の行いを見ているのだなと感じたし、だからこそきっちりやっておいて良かったとも思った。

色々な発見があり、色々考え直す事もできた。


しかし、1人できっちりやろうとし過ぎたからこそ、なってしまった病気なのだ。そこは自戒の念を込めて、ワークライフバランスを保とうと、

今でも毎日、ワークライフバランスを取る為のリハビリの日々。


今年の8月で10年、最後の検査を控えている。

無事、寛解でありますように。


そして、働く皆々様。

当たり前ですが、身体が資本です。命あってこそです。自分の身体を過信しないようにして下さい。




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