紅色染恋歌

咲ひた 紅の花を
明日 摘みにゐくよ
宿を無くして 飛び続ける
わたしは 迷子の蝶

交わした言葉は たつたの二言
それでも視線を 合わせられなくて
あなたの白ひ 手袋を見つめて
あたたかくなつた 春の話をした

まうしばらくすると
鮮やかな花が
あなたを出迎へ
別れを知るでせう

咲ひた 紅の花を
明日 摘みにゐくよ
首を無くして 立ち続ける
わたしの こころは何処

泣ひた 空の顔も
撒ひた 涙の後
宿を無くして 飛び続ける
わたしは 迷子の蝶

少しずつ空が 近くなつて
わたしの気持ちも 大きく膨らむ

指折り数える
一日 一日を
はじめての気持ち
たとへ 叶わなくとも

咲ひた紅の花を
明日摘みにゐくよ
首を無くして 立ち続ける
わたしの こころは何処

これが最後と解つてる
あなたが訪ねてくるのは
いつもと変わらぬ真つすぐな声で
ごきげんやうと会釈した

咲ひた 紅の花を
明日 摘みにゐくよ
宿を無くして 飛び続ける
わたしは 迷子の蝶

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