「そうだ、田舎帰ろう」社会人3ヶ月目の逃走劇場
4月から晴れて新入社員となった私。
6月に入って、会社に行けなくなる日があった。原因は自分でもよくわからない。
電車に乗って、駅から10分ほど歩いて、会社に行くというシミュレーションは頭の中では完璧なのに、体が、足が動かないんだ。
急な出来事に自分でも戸惑った。
「この足を前に出すだけで良いのに。動け、動け、動け」
他人の体の中に憑依したみたいに、全くもって私の体は言うことを聞かなかった。
同時に、ものすごい不安や恐怖、動悸に襲われる。
この3ヶ月、自分の思う通りに仕事ができていなかった。
いま考えてみれば当たり前だ。社会に出たてのひよっこだもの。そんなに簡単にひょいひょい仕事ができるほど、私は器用じゃない。
ただ、できない自分に対して、ものすごく責めてしまっていたんだ。
「なんでこれくらいのことができないの」
自己嫌悪に陥って、ため息ばかりの毎日だった。
家に帰ると、泣いてばかりの日々だった。
「自分は本当にこの会社にいて良いのか、みんなの、会社の足を引っ張っているだけじゃないのか」考えれば考えるほど、辛くて苦しかった。
もちろん、前向きにやっていこうって思ったこともあったんだ。でも、できなかった。普段、陽気な私とは比べ物にならないくらい、心が泣いていたんだ。
「もう、なにもできない」と思ってしたのは、「会社辞めます」宣言。
社長にダイレクトメッセージを送って、返事を待たずに田舎の実家へ帰った。
時間にとらわれず、鈍行に揺られたのは久しぶりだった。
ただ、会社のみんなに対する申し訳ない気持ちと、いまの状況をどうすることもできない自分への情けない気持ちが、棘になって心をチクチク刺していた。