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Creator’s Wall.01「天海春香 01」

はじめましての方ははじめまして。いつもお世話になっている人は、ここまで足を運んでくださってありがとうございます。ゆきますくと申します。
初めてnote記事を書くことにしました。目的は主に二つあります。

一つ目は、小説家としての活動報告。
ハーメルンで活動してますが、あちらの活動報告は割と綺麗な部分を書いています。なので、書いた話の裏話を書く場所が欲しかったのと、書くにあたっての考察とかを残しておきたかったから。

二つ目は、常体で長文を書く場所の確保。
Twitterじゃ短い。だけどハーメルンは作家としての顔だから敬体でいたい。
二つを両立するため。

という訳で、note不慣れですが頑張って書きます。
そして、以下から常体で書きますがご了承を。


0.Creator's Wallとは

さて、じゃあ今回書く上で企画を作ったので、まずはそこから。

タイトルは「Creator's Wall」。

直訳で「作り手の壁」。つまり、自分が書くにあたっての考察。書き手としてどういうことを考え、それを乗り越えていくのかという話。
実は高校の母校にいる後輩たちと創作グループで創作していて、そこで色々考えながら講評し合ったり意見交換したりすることが多く、その中で自分の考えがまとまることが多かった。
それをしっかり言語にしておきたいのが今回の「Creator's Wall」の企画趣旨。もちろんこの企画に関係ない記事を書く時は別途タイトルをつける。

それで、今回は第一回として「天海春香」についての考察をする。
何故? っていうのは簡単で、「天海春香学会 学会誌vol2」の原稿を書き切ったから。
想定10000字~15000字と運営さんに言っておきながら、完成品は24000字とかいう超オーバー。馬鹿かよ、って思った。もう二度とプロットをあてにしない。
タイトルは「『ゆめ』の続きの話をしよう」。今回はネタバレ避けつつ(まだ公開してもないのにネタバレとかどんな最低作家だよ、ってなるので)、天海春香について考えたことをまとめておこうと思う。


1.天海春香とは

天海春香とは、ゲームシリーズ「THE iDOLM@STER(以下、アイマス)」に登場するキャラクターの一人。身長158cm、体重46㎏。17歳。初期登場時は16歳。トレードマークは頭についた二つのリボン。どういう仕組みでついているのかは不明。以下詳細についてのリンク。


2.天海春香二次創作の難しさ

天海春香って、二次創作においてめっちゃむずい。いや第一の感想それかよってなるかもしれんけど聞いてくれ、めっちゃむずいんだわ。
特に何が難しいって、キャラが定まらない。どの台詞を言わせても天海春香っぽい時もあるし、どの台詞を言わせても天海春香っぽくない時もある。だから何か台詞を書いている時に「本当に天海春香を捉えきった台詞を書けているのか」まったく自信が持てない。
今回の執筆で一番困ったのは、天海春香の描写。普通の女の子を描写しながらも、どこにその「天海春香らしさを出すか」が一向に解決しない。台詞同様に、本当に解決しない。正直24000字書いた今も解決した感触がない。

じゃあ何が難しいの? って話なんだけど。天海春香のキャラクターは「何色にも染まる」から難しいと、個人的には思う。同時に、「何色にも染まる」から面白いんだけど。

天海春香には、色んな色がある。トレードカラーの赤、春の色のピンク、センチメンタルなブルー、アダルティな紫、夜の似合うワインレッド、雪と夜のコントラストのモノクロ、元気なイエロー、海のシアン……思いつくだけでこんなにも挙がるし、そのどれもが似合う。そしてこの「キャラクターの色」を決めた瞬間に、天海春香の衣装や言葉遣いが決まる。逆に言えば、キャラクターの色が決まった瞬間に、衣装や言葉遣いが一種類、もしくは数種類しか似合わなくなる。それは、何色にも染まるが故に「この色ならこれ」という先入観や偏見が、如実に「天海春香」というスクリーンに投影されるからであると、個人的には思う。つまり書き手も読み手も、自らの先入観や偏見を頼りに書き進める・読み進めるしかなくなる。

これはかなり大きな問題。何故なら、書き手と読み手の先入観や偏見は一致しないことが多いからだ。書き手は自分が書いている大枠のストーリーの中の天海春香を考えているかもしれないし、読み手は自分が応援している天海春香像を作り、それを強くイメージしているかもしれない。それこそそのズレは書き手と読み手の組み合わせの数だけ存在する。

そこで大事なのが、書き手側の意識としての「共通項を持たせる」という観点。いやこんなの当たり前なんだけど、書いていると忘れがち。というか、天海春香を書くと忘れがちになる。
オリジナルを書いている人からしたら意味が分からないかもしれない。だって、オリジナルがベースにしているのは現実であり、それは全員が一定以上共通理解があるもので、逆にズレを生み出した方が書き手の色が出たりする。だけど二次創作じゃそうはいかない。相手と自分の「原作への理解」を一定以上共有できるような書き方をしなければ、それは二次創作ではなくオリジナルに近い何かになってしまう。
じゃあどうやって共通項を持たせるのか、というと、個人的に気にしてるのは「世界観」。語りすぎず、小出しにしていくのが個人的な美学ではあるが、それ以上に、ゲームやアニメの世界観からできるだけ外しすぎないこと。共通の舞台、共通の時空、共通のキャラクター、共通のキャラクター設定と関係。これらをおさえながら、「自分の物語」を作っていくことになる。

でも正直そう分かっていても難しい。じゃあ自分の書きたいものってどの範囲でできるの? ってなった時、その手段は「共通項に足し算する」か、「ストーリーラインで勝負する」かの、大きく分けて二択しかない。二次創作は、既に設定が存在して書きやすいという一面がありながら、既に設定が存在しているが故に書き手と読み手のズレを消す工程……つまり、書き手の「読み手意識」を要するし、オリジナリティの発揮を抑制する一面があることを、頭に入れなければいけない。


3.天海春香物語の構成

んで、今回天海春香をベースにした物語を、「よし、作ろう」ってなった時に、天海春香をベースにした物語ってどんなものができるかってことを考える。
天海春香は高校生で、身近にいる人としてはアイマスの中での同じ事務所のアイドル、事務員の音無小鳥、社長、そしてゲームのプレイヤーであるプロデューサーが存在する。
物語は主人公一人だけで完結するものにはできない。いや、厳密にいえばできるけどそれを二次創作でするくらいならオリジナルでやった方がいい。これはまたどっかで話すけど。となると、天海春香+誰かでストーリーラインを作っていくことになる。

と、ここまで話したところで、天海春香を中心とした物語を作る上でのストーリー構築テンプレ工程をここに載せる。
一.天海春香以外の登場人物と、その登場比率の決定
二.時空の決定
三.追加要素の決定
四.ストーリー構成要素と視点の決定・シーン割


この内、2.で語った「共通項に足し算する」は三.が該当し、「ストーリーラインで勝負」は四.に当たる。

例を出して考えよう。今回は一.において、登場人物のもう一人に「如月千早」を設定したとする。

この組み合わせは、俗に「はるちは」と呼ばれる。「はるちは」は天海春香×如月千早の組み合わせ、もしくは百合的なカップリングを指す言葉。この二人は年齢が近く、アニメ版アイドルマスターでは二人の物語がそのまま終盤のストーリーになっていたレベルで、公式がプッシュしている組み合わせでもある。となると、読み手の共通項を考えるなら「二人はお互いを理解し合っている」ことを前提にストーリーを組む必要があるし、如月千早の登場比率は天海春香と同等レベルまで上げても不自然ない、むしろそうすべきであると言える。ここまでを整理すると、天海春香と如月千早の登場比率を最大にし、その他の脇役としてプロデューサー、社長、他のアイドル、事務員の音無小鳥などを採用し、彼らの比率は必ず二人より小さくなるようにすることが、書き手と読み手の共通項を用いたストーリーラインの構築の基本となる「人物設定」であると言える。

そうすると、二.時空の決定においては、アニメ版終了時、アニメ版〇話と〇話の間、劇場版(劇場版はアニメ版の正統続編)などが設定としては妥当であると言える。ただ、異色さを狙うなら、アイドルマスター2、アイドルマスタープラチナスターズ(以下、プラスタ)、アイドルマスターステラステージ(以下、ステラ)、アイドルマスターミリオンライブシアターデイズ(以下、ミリシタ)など、他の天海春香出演作品も可能。特にミリシタは、ミリオンのキャラが登場するストーリーラインを組むなら妥当であると言える。ただ、劇場版に出演しているミリオンのキャラを使うなら、ストーリーライン次第では劇場版の方が妥当な場合もある。この二.時空の決定については、一つに絞るのが重要なのではなく、選択肢を絞る……つまりは二つ程度に絞ることが重要で、上手く行けば一つに絞れる、ぐらいの感覚でいるのがいいと、個人的には思う。これは感覚なので人それぞれでいいが。ただ、時空を決定しないとストーリーが定まらない場合もあるので、お好み。
何故天海春香の物語を書く上で時空決定が人物設定の次に大事かというと、時空決定をしなければ天海春香の設定が定まらないから。例えば箱マス(Xbox360版初代アイドルマスター)では、天海春香は16歳。高校二年生ではなく高校一年生だからこそ妥当なストーリーもある。また、箱マス時空では他のアイドルとの絡みが少ない。基本的にプロデューサーと天海春香の一対一である。となると、人物設定を終えてから時空を決める流れというのは、「人物設定に適したものを選ぶだけだから、絞りやすい」というメリットを持つ。ストーリー構築の際に一番気を付けるべきは、自分が考える部分を極限まで減らし、ストーリーそのもののみに注力できるようにすることであって、一.天海春香以外の登場人物と、その登場比率の決定→二.時空の決定の順に決定することは、その理にかなっている。
そのような理由もあって、できるだけ自由な幅を、というよりは絞る考え方、引き算の考え方が必要である(物語の構成筋を、書き手が把握しやすくなる副産物もある)。
以上、少々論が伸びたが、今回は例として、はるちはで箱マス終了後のストーリーを組む、とする。

三.追加要素の決定は、つまりオリジナリティをどう挿入するかである。例えば、今回は「はるちは」で、箱マス終了後という時空設定なので、そこから導き出せる要素を整理しよう。例えば今思いつくので言えば、「天海春香と如月千早はそれぞれがユニットのリーダーだったという背景」、「天海春香と如月千早は事務所に入る前から実は知り合いだったという関係」、「天海春香を担当した後、如月千早を担当することになるプロデューサーの存在」、「天海春香と如月千早でユニットを組んでオーディションに出て勝つという目標」など。
一つ目の「背景」は、人物設定への脚色である。つまりキャラクターのバックボーンにオリジナル要素を足すことである。この「背景」はメインの二人の関係性に関与しないものを指す。
二つ目の「関係」は、人物設定への脚色であり、これは二者の関係性に関与する。つまりキャラクター二人の間の関係についての過去をオリジナルに作るという工程を挟むことで、それを物語の起点やギミック、切り返し等として使っていくものである。
三つ目の「存在」は、登場人物への脚色である。つまり、メインキャラクター以外に脚色することで、脚色された登場人物は登場比率が上がり、結果としてメインキャラクター(一人とは限らない。今回の場合は、メインキャラクターが天海春香・如月千早の二人で一組である)対脚色されたキャラクター、という構造を生み出す。ちなみに、オリジナル主人公やオリジナルキャラクターはここに該当する。
四つ目の「目標」は、ストーリーラインへの干渉である。二つ目で述べた「起点を作る」という考え方に似ているが、こちらは明確に終着点を決定するため、その前提条件等も決まってくる。
このような点(あくまで上記は一例)で脚色していく。ただ、これはあくまでストーリーの道しるべのようなもので、これを決めただけではストーリーにはなりえない。ただ、ここに自分のオリジナリティが出ることは間違いなく、二次創作をする上で自分がやりたかったことを考え、決定していく必要がある。
今回は上記に挙げた四つ、「天海春香と如月千早はそれぞれがユニットのリーダーだったという背景」、「天海春香と如月千早は事務所に入る前から実は知り合いだったという関係」、「天海春香を担当した後、如月千早を担当することになるプロデューサーの存在」、「天海春香と如月千早でユニットを組んでオーディションに出て勝つという目標」を採用するとする。

さて、いよいよ四.ストーリー構成要素と視点の決定・シーン割に入る。これが正直一番大事。
まずはストーリーの構成要素とは何か。よく言われるのが構成要素が四つでできている「起承転結」、構成要素が三つでできている「序破急」の二種類。これにストーリーの要素をあてはめ、外枠を作っていく。また、この段階で三.で考えた内容を組み込む予定を立てる。これを用語でプロットという。
例で考えると、天海春香×如月千早の物語であり、前提として追加要素が四つ存在する。今回は上記の二種類の構成のうち、「起承転結」を採用するとする。
背景は物語中に小出しにする上、時系列は物語時系列の外(物語よりも過去)にあるため、回想などを挟む以外では設定上の存在。物語の起点は、「天海春香を担当した後、如月千早を担当することになるプロデューサーの存在」である。そして終着点は「天海春香と如月千早でユニットを組んでオーディションに出て勝つという目標」である。この二つを考慮して考えると、前提条件を満たすプロデューサーという存在が、二人にこの目標を課す、というストーリーラインが完成する。
よって、起承転結の起は「目標を課される」、結は「オーディションに出る」である。また、この時点でハッピーエンドにするか、バッドエンドにするか、中道エンドにするかを考慮しなければならない。今回はハッピーエンドにすると仮定して、結を「オーディションに出て勝つ」と修正する。
次の承には「天海春香と如月千早は事務所に入る前から実は知り合いだったという関係」を用いる。なので、それなりに会話イベント、二人で出かけるイベントなどの「なれそめを省いたやり取り」が中心になる。そしてそのやり取りの中心となるイベントと、間を補完する日常的なイベントを設定する。中心となるイベントといえば、例えば、買い物に行く・CDを買う・他のアイドルのライブに行くなど。間を補完する日常的なイベントと言えば、夜の電話・事務所でのやり取り・交換日記・メール・同じ楽屋など。今回は中心を「他のアイドルのライブに行く」、補完を「メール」とする。
転は、「天海春香と如月千早はそれぞれがユニットのリーダーだったという背景」と、これから二人がユニットになることを考慮して、意見の衝突・ジレンマ等を書き込んでいくことが中心になる。例えば天海春香と如月千早の理想のアイドル像が異なり、それぞれの信念がある中で、悩み、苦しみ、時に事務員の音無小鳥に相談したり、時に衝突してプロデューサーが仲裁に入ったりしながら、最終的に和解を目指す、と設定すると、どのような意見の衝突やジレンマがあるのか、それぞれの信念はどのようなものか、それぞれの理想のアイドル像とは何か、相談を受けた音無小鳥が出すアドバイスはどんなものか、仲裁に入ったプロデューサーが二人をなだめた際に決定打となる台詞は何か、などを考慮すると、より細かなプロットになるが、今回は詳細になりすぎるため省く。仮に、「理想のアイドルを目指して二人は個人個人での練習を中心にしてしまい、二人の理想像が衝突するも、音無小鳥の助言を受けて改心した天海春香が如月千早に和解を申し出る」とする。

こうして考察した結果、少し補足等を加え出来上がった起承転結は以下のようなものである。
・起
天海春香と如月千早は、前提条件を満たすプロデューサーに、二人でユニットを組んでオーディションに出て、勝つことを課される。
・承
天海春香と如月千早は、事務所に入る前からのなじみであり、様々な形でその中を深めていく。定期的にメールのシーンを出しながら、他のアイドルのライブにいくことをメインのイベントとして、二人の仲を深めていく。
・転
他のアイドルのライブを通じて「理想のアイドル像」をそれぞれ得た二人は、今までのユニットとしての練習よりも個人個人での練習を優先し、結果として理想像の相違で衝突する。音無小鳥の助言を受けた天海春香が、如月千早との和解を申し出る。
・結
オーディションへの準備が急加速で進んでいく。それぞれの理想像は統合され二人の理想像へと昇華し、オーディションに勝利する。


そして次に視点の決定。まず一人称・三人称のどちらで書くのか。二人称もできなくはないが、二次創作では向かない。なので登場人物のうちの一人を主人公にした一人称にするか、ストーリーと無関係の第三者の視点である三人称にするかを決める。また、三人称であれば視点人物も必要である(第三者が誰に注目しているかを示す)。特に、視点はキャラクターのどの部分まで描くかという点で非常に重要で、一人称だと主人公の心情に深堀できるが、主人公以外の心情は主人公の主観を通してしか描けない。三人称だと広く浅く描くことはできるが、一人一人を濃く描くには向かない。また書きやすさも異なる。自分に向いている方で書くという選択をするのであれば、どの人物にフォーカスするか(一人称なら誰を主人公にするか、三人称なら誰を視点人物にするか)を中心に考えると考えやすい。
今回は仮に「天海春香の視点での一人称」とする。

最後にシーン割。書く前の準備における最終工程にして最も時間のかかる部分。まず物語の始まり。例えば今回の起は天海春香と如月千早がプロデューサーに目標を課されてユニットを結成するところからスタートする。さらに、時空は箱マス終了時の年齢を一歳重ねてすぐであり、プロデューサーは天海春香を前年プロデュースしていながら、次年度として今から如月千早をプロデュースする設定である。それらの背景がある程度分かる(ほのめかされる)シーンを作らなければならない。
また、最初のシーンは非常に重要である。何故なら物語を読む際に最初に読む部分になるからだ。この部分で読む気がなくなるものにした瞬間、作品の価値はほぼないと思っていい。
今回は「天海春香はアイドル活動を休止中ながらプロデューサーに呼び出され、久々に事務所へ訪れる。その後、プロデューサーと如月千早がミーティングしている場所へ遭遇し、そこでプロデューサーに、二人でユニットを組んである有名なオーディションへ参加する予定であることを告げられる」というシーンを最初に置くことにする。

このような手法でシーンを構成し、シーンごとに書いていく。もちろん、起承転結の構成要素の範疇であれば、シーンごとに書いていった後に入れ替えることも発生し得る。
また、その中で用いられるのが伏線である。一見つながりのないようなものも、登場人物の思考回路を照らし合わせると筋が通っていたと分かる書き方などによって、ある描写・台詞・行動が後の描写・台詞・行動につながると、読者が作品の大枠を掴みやすくなる。

と、ここまで長々と例を用いて書いてきたが、大半は二次創作含む創作をする上での基本のような気もする。なのでこれだけでは所謂「テンプレ」のような作品ができるだけで、ここに色んな要素を足していく必要がある。ただそれを行ったとしても、上記は全てまだ準備段階である。この時点では物語でも何でもない。
これをベースに台詞・地の文を駆使して作品を作っていく。

もしこの文章を読んで、「天海春香書いてみようか」と思った人。
まず是非今回ここで例に出した手法で考えてみてほしい。
そしてどう工夫して面白くするかを考えてほしい。
天海春香を描きながら、物語の面白さを担保し、そしてネタのリンクなどの二次創作的面白さも演出していくことの考察に関して、ひとつ足掛けになるのではないかと思っている。
もし挑戦した人が居るならTwitterにて連絡をいただきたい。


4.天海春香らしさの出し方

じゃあこんな大層な準備をして、いざ書いてみると、結局2.で述べたような難関にぶつかる。いやめっちゃむずいやんと。結局ストーリーだけで天海春香らしさを出すというのは難しい。どんなストーリーを書こうと、どんな色にも染まれる天海春香は適応してしまう。

じゃあ天海春香らしさをどこから抽出するか。それは公式から少しずつ台詞や描写や展開を持ってくる。これが今の段階の個人的な答えではある。

まだ無料公開にしていない・そもそも公開していない作品なので大きな声では言えないが、天海春香学会 学会誌vol1に寄稿した「モノクロ・ドリーム」や今回vol2に寄稿した「『ゆめ』の続きの話をしよう」はこの手法を多用した。
また、特に書く際に気を付けているのは、時空によってスタンスが異なること。例えば箱マス時空の天海春香はかなり我儘な部分もある。自分本位というか、それこそプロデューサーと一対一の関係であるため、それなりに直球で来るシーンもある。それでいて、仲間想いなところや、自分の考えを抑制しがちな部分もあり、メリハリがあるキャラクターである。「モノクロ・ドリーム」や「『ゆめ』の続きの話をしよう」は箱マス時空の延長にあるので、メリハリをつけることに意識を持っていって製作した。ただ、アニメ版の時空になると仲間想いな要素が大きくなるし、映画版・ミリシタ時空では後輩の存在からリーダーとして求められることも増え、その要素が強くなる。キャラクター同士の関係もそれに基づいて決定していく。天海春香の物語らしく、天海春香のスタンスが決まらないと作品がスタートすらしないのは、やめられない面白さの一つではあるが。
このことを別の表現で言い換えるなら、「少女天海春香」と「アイドル天海春香」の区別だろうか。学会誌インタビューやハーメルンでの活動報告でも語ったが、映画版・ミリシタ時空で求められてきたリーダー要素を持つ天海春香はどちらかというと「アイドルの先輩としての天海春香」である場合が多く、これを「アイドル天海春香」とし、箱マス時空で表現された我儘さを含む天海春香を「少女天海春香」とする区別である(アニメ版はその中庸という感じが、個人的にはしている)。特に「少女天海春香」に関しては、昨今のコンテンツでは描かれる機会が本当に少なく、それこそ箱マスのテキストが原点かつ最新になりつつある。だからこそ、箱マステキストから状況や台詞、描写等をリンクさせることが、「少女天海春香」を描く際に伏線化し、文章の考察可能な深度を増す書き方をすることができるようになるのではないかと考えている。よければ二作品を是非手に入れて読んで、その手法を用いている部分を探してほしい(ダイレクトマーケティング)。

(以下、「モノクロ・ドリーム」収録の学会誌vol1のリンク。「『ゆめ』の続きの話をしよう」は2020年12月末頒布予定の学会誌vol2にて公開予定)


5.天海春香らしさを乗り越えた先に

天海春香らしさを出すこと、そして自分の中の天海春香を表現することが、どういうものなのかという話を中心に記してきたが、どうも書いているうちに「あれ、まだ乗り越えられてなくないか、この壁」と思った。正直な話をすると、天海春香に関する知識が足りなさすぎるのはある。ニコマス(ニコニコ動画上のアイドルマスター文化)・箱マス・アニマス(アニメ版アイドルマスター)・劇場版・ステラ・ミリシタについては履修済みだが、まだプラスタやOFA、2についてはノータッチで、履修が足りない。あの時空の話を書くには一度プレイしなきゃいけないし、それなりに熱意をもって研究しなきゃいけない。
天海春香に限らず、二次創作はこのような前提準備の必要性が顕著になる。オリジナルは現実にいる時間がどんな人間もそこそこあるおかげで、ある程度想像で書ける部分も多いし、なんならスケッチや写真で脳内補完するだけで描写が書けたりする。ただ、二次創作はキャラクターの関係性や有名な台詞、振り、流れ、ネタ等の知識を要求されるし、あらすじだけの把握じゃ全然足りないレベルで、読者の知識レベルが高い場合もある。書き手として、読み手と同様、もしくは読み手以上の知識を持ったうえで創作するとなると、それだけでかなりの量を要求されるのがこのアイドルマスターという界隈、そして天海春香なんだと思う。

天海春香を書くこと。それは「既存の天海春香」を知ることであり、「自分の天海春香」を生み出すことである。「自分の天海春香」が表現しづらいのは、そもそも自分の天海春香を言語化してこなかったからだ。結局、書き手として何かの壁を乗り越える際、自分を言語化してみることは重要なのかもしれない。


6.最後に

以上、今回の「Creator's Wall」の第一回とさせてもらう。
正直第一回から10000字近く書いてて笑う。だけどまぁ、今の自分の考えということでちゃんと記しておく。また考えが変わったら似た様な記事を、この記事と比較しながら書くことにする。

結局「天海春香とは何者だったのか」。vol1の時の表紙の文字でもあるが、天海春香らしさを正しく理解して使えてない以上、まだその答えは遠そうである。ただ、それに一歩近づくために、今こうして創作を続ける書き手がいるということ。それはちゃんと痕跡を残せたような気がする。

次回以降はいつになるか分からないし気まぐれです。
でもとりあえず今回はこれで終わり。疲れた。
では。

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