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雨の日の怪談先生

 小学生の時って、体育の授業がある日の朝、起きて雨降りだったりするとがっくりしませんでした? だって、広い運動場で思いっきり走り回れないから。体育館が使えることもあったけれど、他のクラスとの兼ね合いもあって、いつもいつも使えるわけじゃないし。

 でも5年生の時の私たちのクラスは違った。体育のある日に雨が降るとそれはそれで、朝からわくわくドキドキでした。

 なぜかって?

 雨が降ると私たちの担任の先生は、学校にまつわる怖い話をしてくれるから。外は雨でどんより暗く、雰囲気は最高。

 朝の会で先生が、「今日は雨降りなので、体育は教室でね。」って言った瞬間から、私たちは恐怖と期待が入り交じった時間をスタートさせます。

 そして、いよいよ体育の時間。雨が降る音が静かに響く教室に先生が入ってくるときには、私たちは怖がる体制を万全に整えて着席完了です。

 「昔ね、階段の数を数えながら上がったり降りたりしていた女の子がいてね。その子はね、階段を・・・」とか、「体育館の横にある古いトイレあるでしょ。昔ね、あのトイレでね、・・・」とか、静かに先生の話が始まると、私たちは体をカチカチにしてじっと聞き入ったものです。

 その時の話に出てきた場所へは、誰もその後一人では近づけなくなります。体育の日が雨降りになると、がっくりしている他のクラスとは対照的に、変なざわざわを醸し出している変わったクラスだったと思います。

#忘れられない先生

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