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オープンDの音色を追って 18

(約5分で読めます)
 今月はマークとトミーの誕生日のある二月です。
 GAROのオリジナルアルバムについて感想を書いてきましたが、ついにラストアルバムに到着してしまいました。

『三叉路』。
 タイトルはもちろんCSN&Y『4 Way Street』から。
 命名はボーカル。ジャケットのイラストも、ボーカルのセツ・モードセミナーでの友人・ペーター佐藤です。
 三人がそれぞれ作った曲を持ち寄ってアルバムが作られました。
 ボーカルによれば、もう解散も決まって吹っ切れて、ファーストアルバムの頃のように和気藹々と作業が進んだそうです。が、ファーストと大きく違うのは、全体的にハモる量が少ないこと。それが寂しいです。
 反面、歌詞カードに三人の使った楽器が詳しく載っているのは貴重です。

『夜間飛行機』
作詞・作曲・編曲:堀内護
 マークによる『時の魔法』に匹敵する華やかな曲。
 重厚なハモりによる歌い出し。QUEENをイメージした、きらびやかなツインギター。ただ、ラストは哀愁。
『三叉路』のジャケットのイラストもこの曲のイメージで、全体の色調はファーストアルバムのジャケ写に合わせてあります。
 マークはエレキギター、アコースティックギター、ミニコルグ(シンセサイザー)、タンバリンを演奏しています。

『誰もいない朝』
作詞・作曲・編曲:大野真澄
 もともとは『一本の煙草』(前アルバム『吟遊詩人』収録)の詞に合わせて書かれていた曲。つまり『一本の煙草』の詞で『誰もいない朝』を歌うことができるという互換性があるのです。珍しいですね。
 それはさておき、傑作だと思います。
 何かの終わりを思わせながらもカラッとしていて、設定は始発電車の音のする早朝。
 今日がどんな日になるか、まだわからない。自分の行動次第でいかようにもなるだろう。そんな希望を持てそうだし、新しいことが始まりそうでもあります。
 ボーカルがアコースティックギター、トミーがボトルネックギター、エレキギターを弾いています。

『ペガサス』
作詞・作曲・編曲:日高富明
 トミーが置き土産とばかりに(?)書いたメルヘンチックな曲。
 とにかくかわいらしい。教育テレビの『おはなしのくに』で使われていてもいいくらいです。
 高校時代からの盟友・松崎しげるがタンバリンで参加。
 トミーはグレコ・ツゥインネック(エレキギター)、マーチンD-28(アコースティックギター)、マーチンの十二弦ギターを演奏しています。
 他の複数の曲では、弦編曲としてメンバー以外の作家がクレジットされていますが、ハープが入っているこの曲には弦編曲が書かれていません。トミーがハープの部分もアレンジしたのでしょうか。天才ギタリスト・トミーにかかれば、弦楽器はすべて手の内なのでしょうね。

『さいごの手紙』
作詞・作曲・編曲:堀内護 弦編曲:瀬尾一三
 GAROのラストシングルになった曲。
 いくら解散だからって、感傷的過ぎない?
 マークはアコースティックギターとスペリオパイプを演奏しています。

『ヘビー・ローラー』
作詞・作曲・編曲:日高富明
 全アルバム中、トミーの作詞で一人称が「俺」なのはこの曲だけ。
 これからはこの道を行く! といった決意表明のようです。
 演奏においてもトミーは八面六臂の大活躍。
 ハモンドオルガン、カウベル、タンバリン。
 エレキギターに至っては、
 フェンダー・ストラトキャスター1957
 フェンダー・ストラトキャスター1955
 ギブソン・レスポールJr.1958
 ギブソン・レスポール・スタンダード1958
 フェンダー・ストラトキャスター1954(歌詞カード記載順)
 凄まじいですね。

『恋のゲーム』
作詞:大橋一枝 作曲:日高富明
『ヘビー・ローラー』から一転、私の好きな軽~く歌っているトミーです。
 リバプールサウンド風で、ラストがちょっと『Please Please Me』。
 使用ギターは
 フェンダー・ストラトキャスター1957
 フェンダー・ストラトキャスター1954
 グレコ・ツゥインネック
 ギブソンJ-50(アコースティックギター)

『終りは終り』
作詞・横井潤一 作曲・編曲:堀内護 弦編曲:瀬尾一三
 フォークソングみたいな曲。
 マークの声には女性視点の歌は似合いますね。でも、ハモるところもないので、こういう曲はGAROでやるより女性歌手に提供するのが良いのではないかと。
 マークはアコースティックギターとタンバリンを演奏しています。

『仕事のあとは』
作詞・作曲・編曲:大野真澄
 これも傑作。ラストアルバムにしてボーカルの曲作りが冴えまくっています。
 こんな風に三人が掛け合いで歌う曲、もっとあってほしかった。
 ボーカルに家飲みに誘われ、ちゃっかり上がり込んでリラックスしているマークとトミー。そんな様子が描かれていてとても楽しいです。
 のちにボーカルと一緒に、あおい輝彦の『あなただけを』を作ることになる常富喜雄がハーモニカ、フラット・マンドリン、バンジョーで参加しています。

『去年の夏』
作詞・作曲・編曲:日高富明 弦編曲:高橋信之
 トミー作品のラストは美しいバラード。
 コヤマモデル(アコースティックギター)とフェンダー・ストラトキャスター1954を弾いています。

『あいつ』
作詞・作曲・編曲:大野真澄
 ボーカル自身が弾くギブソン・LTI(アコースティックギター)で繊細に。
 三角関係でフラれてしまったという寂しい歌。
 まったく恨みがましいことは言っていないのにとてつもなく悲しい。

『冬の花火』
作詞・作曲・編曲:堀内護 弦編曲:瀬尾一三
 マーク作品のラストは、線香花火、浴衣といったモチーフ。フォークソングみたい。
 マークはアコースティックギター。トミーがタンバリンで参加しています。
 このアルバムのマーク作品に関しては『夜間飛行機』がピークで、あとのはそんなに良いとは思いませんでした。ごめんなさいマーク。個人の感想です。

『青春の旅路』
作詞・作曲・編曲:大野真澄 弦編曲:瀬尾一三
 大トリはボーカルの力作。
 ボーカルがアコースティックギター、マークがエレキギター。
 詞の内容がGAROファンの間で物議を醸したと言われています。
 私もこれはあまり好きではないです。あくまでも個人の感想ですが。
 これで締めくくるとアルバム全体の印象も沈んでしまいます。

(つづく)
(文中敬称略)

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