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大学芋 担当:ヤナイユキコ

今年獲れたばかりの
洗い立てのように色鮮やかなさつまいも。
新物だから、まだ甘味は薄いよう。
それならば少し手間はかかるけど、
艶々の甘い蜜を絡めた「大学芋」にしよう。
おいしく食べられるのが一番。
私もあなたも。

さつまいもを洗う。
手のひらで擦るだけで、
削れていってしまうほどに儚い皮。
柔らかそうだし、皮付きのまま使おう。
切り方は迷いなく、
カリッと仕上がる、角の多い乱切りに。

何角形とも言えない姿になった、
素肌のままのさつまいも。
瑞々しい断面から
乳白色のあくが染み出ている。
ボウルに水を張り、沈めていく。
どれくらい水にさらせばいいかな…
と考えながら、
黒ごまのパッケージに目をやる。
裏には偶然にも大学芋のレシピが載っていた。

「水にさらした後電子レンジで加熱すると水分が抜けてほくほくに仕上がります」

そうなの? 生のまま揚げようと思ってた。

ザルにあげて水を切り、
またガラス製のボウルに戻す。
ふんわりラップをかけて2分後、
レンジから出てきたさつまいもは、
ほんのり甘い匂いを漂わせていた。

火が通っているか確認、
という名目で、一つ味見。

なるほどね。やっぱり甘味は控えめだけど、これはあまじょっぱい蜜に合いそうだ。

揚げ鍋を用意する。
火をつけて、先ほどのさつまいもの水気を拭きながら、菜種油に浸していく。

大学芋は二度揚げ推奨のレシピが多い。

料理は好きだが面倒くさがりな私は、
低温のうちに投入し、油の温度を上昇させながら揚げる手を使う。
から揚げもフライドポテトも、これでいつもカリッと仕上がるから、きっと大学芋も大丈夫。

じゅわじゅわと音を立てるさつまいもを菜箸で持ち上げると、表面はうっすらきつね色。
水分が抜け、軽さが箸を伝ってくる。

よし、これでいい。

揚げ鍋から油切り網へせっせと移していると、
皮付きのさつまいもが、どんどん揚げナスに見えてきてクスッとなる。
山になった素揚げのさつまいもは
それだけでおいしそうだ。
ぱぱっと塩でも振って食べてしまいたい。

だめだめ、さつまいもがまだ熱いうちに蜜をつくらなけば。
そう、今回の甘味はメープルシロップでつけると決めていた。

手のひらより少し大きいくらいのフライパンに、メープルシロップを3周程度回し入れ、そこに大さじ1ほどの醤油を加える。

火にかけるとブクブクと沸き立って、
たちまちとろみが増してくる。
焦がしたら台無し。ここは目を離さずに、最高のタイミングを見計らう。
さつまいもによく絡みつく濃度、綿菓子みたいな醤油の香ばしい香りが広がってきたところで一気にさつまいもを加え、火を止めた。
おっと、黒ごまを忘れちゃいけない。

絡めて絡めて。
とろりとろり。

蜜が冷めると盛り付けが難しい。
熱いうちに器に盛って、はい、できあがり。
どうです? 飴状のカリッ、中のホクッがたまらないでしょう?


今回は試みの一つとして、読んでもらうタイプのレシピを書いてみました。
おいしさ、感じていただけたでしょうか?

大学芋といえば黒ごまですが、こちら、シナモンを振って食べるのももの凄くおすすめです!

旬のさつまいも、どうぞいろいろな食べ方でお楽しみください。

では、次回「も」で、須田さ紀え氏にしりとりを繋ぎます。

*しりとり手帖の説明についてはこちらから


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