ぜわす201302

絶対忘れるながやめられない 4

~会社員6人組がCDをリリースするまでの記録~
前回のお話はこちら

2012.12
高円寺のぜわすハウスでゆるりと活動(主に酒飲みながらUst配信)する日々は半年後、志賀さんとすいちゃんの引っ越しによりあっという間に終わりを迎える。半分空き家のままセル・万で過ごした数か月の間に、鍵を忘れて帰宅したセルラが二階で寝ている万次郎ルームの窓を物干しざおで突きまくって起こして開けてもらったり(通報されなくてよかった)、酔った万次郎さんが暴れて自分のメガネを壊したり(通報されなくてよかった)、ちょっとした事件は発生したけれど、12月になると青森出身の物静かなご夫婦が引っ越してきて、彼らが挨拶の時にくれた蕎麦を茹でて年を越したり、彼らにもらった林檎を食べたりしながら、基本的におだやかな日々を送っていた。

ぜわすの活動はというと、ご近所に越した新しい志賀家(きれい)で、相変わらずUstを中心に行われていた。

そんな中、突如として初ライブを行うことになった。

毎年2月に我々の出身であるバンドサークルが開催している、OBも現役生も出られるライブイベントの1枠にエントリーしてみることにしたのだ。つまり「いきなり知らない人の前でやるのは怖いから身内相手からはじめてみよう」という圧倒的守りの姿勢である。さらに場所は高円寺のShowBoatで、アルバさん以外はチャリまたは徒歩圏内。しかも楽器がないからほぼ手ぶらでいける。最高。出るしかない。たぶん動機はそんな感じだった。

しかしよくよく考えてみれば、基本的にコピーバンドが出演するそのイベントで、我々のような「全員MCです。楽器は使いません。PCから音を出します。」みたいなグループは普通に浮いてしまう。しかもサークル時代は普通に本名で呼ばれてたのにエントリー名は「志賀ラミー」「セルラ伊藤」とかいうふざけた名前。これは相当工夫しないとシラけるぞ…。ということで色々と我々なりに考えてライブにのぞんだ。ひとまずわたしはMacBookAirを買った。

2013.2
かくして記念すべき絶対忘れるなの初ライブ「狂気の沙汰デーナイト」は2013年2月10日の日曜日に決行された(土曜夜出演の予定が諸事情で日曜昼になったがいい代案が思いつかなかったのでイベント名はそのまま)。

冒頭、ぜわすで作った「貫地谷翠れんのテーマ」のトラックに乗せて、あらかじめすいちゃんの声を録音した開演前アナウンスを流す。そのときステージにはアルバさん一人。

そのまま残りのメンバーが入場して「ときめきはメモリアル」を披露。

マイクを持たず、1曲まるまる踊った。振り付けはわたしがテキトーに考えた。

次に「S.I.C.C.O」という尿意に関するラップ曲を披露したあと、次の曲へ。

そのとき、事件が起こる。
イントロが流れた瞬間、

「PPCK!」

と曲のタイトルを叫んだ男性がいたのだ。

彼こそが後にぜわすに加入するDJ、益若つばめその人である。

彼はセルラが大学4年のとき同じ授業を取っていた1年生で、当時からラップをやっており、デモCDをもらったこともあった。「音楽好きでちょっと変わった好青年」という印象だった彼とは、卒業後とりわけ親しくしていたわけでもなかったのだが、彼はその独自すぎる嗅覚で絶対忘れるなの活動をばっちりチェックしており、当然のようにSoundcloudを聞きこんでライブに来てくれていた。そこにきて彼が当時一番好きだったらしい「PPCK」というパイパンをテーマにした曲がかかったということで、冒頭のシャウトはもはや必然だったのかもしれない(知らんけど)。わたしは内心、まだ初ライブなのに随分ディープなファンがついちゃったなあ…と思っていた。2018年に発表した「平日ナイトフィーバー」のMV内に登場する「益若つばめは絶対忘れるなのファン一号」というトリビアはここから。

「PPCK」の終盤にセルラがひたすら「剃れ剃れ」と言いつづけるパートがあるのだが、驚いたことにそのときつーちゃんをメインとした"剃れ剃れ"コールがライブハウスに響き渡った。異様な盛り上がりに若干とまどいながら曲を終えて、次は「絶対忘れるなの相談地獄」というコーナー(ぜわすは当時「ふくろうず」というバンドの「相談天国」というコーナーが好きだった。ちなみにベースの安西卓丸さんは同じバンドサークルの後輩)。「相談地獄」の様子は一部YouTubeで見られるので物好きの方はこちらをどうぞ…。

最後はお客さんにサイリウムを配って、アイドルに憧れて作ったアイドル曲「アイスクリームポップアップトゥギャザー」を披露。「絶対忘れるなのサイコガンダム、ZZガンダム」というすいセルの自己紹介や、志賀、アルバ、万次郎がフロアにおりてヲタ芸をやるスタイルはこの時から。これも恐ろしいことにYouTubeに残っているので怖いもの見たさの方以外はクリックしないでほしい。あと、最新バージョンの「アイス〜」を知っている方は、聞き比べると面白いかもしれない。

というわけで思った以上に盛り上がって無事初ライブは終了して、はじめてちょっとだけ手応えのかけらのようなものを感じたのであった。

さらにこの日はもう1つの事件が起きていた。驚くべきことに、Ust常連だったwikipediandsの「でれさん(@deration69)」がぜわすの初ライブを見に来るためだけにはるばる名古屋から来てくれていたのだった。とんでもない行動力である。わたしは内心、頭がおかしいんじゃないかなあ…と思っていた。

当日、少し早めに高円寺に来たでれさんと我々はついに対面した。この日のために「絶」「対」「忘」「れ」「る」「な」と1文字ずつプリントされたTシャツをそれぞれ着ていたのだが、当時は5人でもともと「な」を着る人がいなかったので、それをでれさんに贈呈したのだった。

ちなみにあれから5年半、彼は「な」Tシャツをいまだに愛用してくれている(写真掲載はご本人了承済み)。

"「な」がオークションで100万くらいで売れるくらいがんばってくれよ〜〜!!!!"とのこと。がんばります。

(おまけ。幼馴染のスモール・ラ・伊藤さんに化粧してもらった貫地谷翠れんさんとわたし)



続く。

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