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向田邦子さんのこと。

先日のこと、買い物に出たついで立ち寄った。
いや、この展示会に行きたいから、買い物先を決めた、というのが正しい。

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向田邦子さんの没後40年の展示会が青山のスパイラルビルで開催されていると知ったのは、LUNAさんのnoteの記事。

会場には、原稿や草案がいくつか展示されていた。
手書きの原稿は、きっと判読できる人が限られていたんだろうな。
彼女がパーっと書き上げたものを、急いでタイピングして撮影現場に持ち込む人がいたのだろうな。

愛用の万年筆、お湯呑み、器、洋服、靴、本。
向田さんの「好き」や「こだわり」が浮かび上がってくる。
「向田邦子が選んだ食いしん坊に贈る100冊の本」は、私も愛読しているものが何冊もあって、ちょっとうれしくなる。

旅先で撮った写真は、向田さんの視線。
向田さんを撮った何枚もの写真は、秘められた恋の相手の視線。
レンズを見つめる向田さんは凛としていて、はっとするほど美しい。

展示会では、小泉今日子さんによる向田作品の朗読が流れていて、その言葉を切り取ったものが、白い塔からふうわりと落ちてくる。

私がもらった言葉はこちら。

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「みんな、なにかを待っているのです。沢山の女たちの何かを待っているという思いが — 夜の空気を重たくしているのかも知れません」
ドラマ「あ・うん」


向田さんの作品を初めて読んだのは、高校生の頃だろうか。

かっこいい女性だなあ、と憧れて、向田さんの「うの引き出し」ならぬ「うの箱」を用意したり、ままやでも出していたという十八番の料理を真似て作ったりもした。

鹿児島に行った時、ずっと気になっていた「ぢゃんぼ餅」を食べた時は感激したものだ。帰りの飛行機の時間が迫っていて、諦めていたのだけれど、ちょうど磯浜を車で通って、信号待ちの間に、通りに出て呼び込みをしている売り子さんから買えたのだった。

10年ごとぐらいにマイブームが来て読み返しているのだけれど、その度、それまでするりと読んでいたところが妙にひっかかったりするのだ。
ああ、わかる、と感じる部分が、年を重ねるごとに増えていく。

51歳で亡くなった向田さん。
作家として、エッセイストとして、これから、という時期だったはず。
もっと作品を読みたかったな。
もっともっと、人生の、女の先輩としての文章を読ませていただきたかったな、と切に思う。









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