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Malin BÅNGの「Hyperoxic」を読んでみることにした。②

さっきょく塾では、それぞれ塾生が好きなことを語る会「聞いてください」を毎月開催しています。今回はスウェーデンの女性作曲家Malin BÅNGの作品を取り上げてみたいと思います。

前回に続き、マーリン・バングの作品「Hyperoxic」を見ていきたいと思います。まず作曲家のウェブサイトに書かれている曲解説から一部を抜粋します。

Hyperoxicでは、人間の必需品であり管楽器の基礎でもある酸素に注目し、バスフルートに空気を送り込む異なる方法を模索しています。日常には空気を基本的な機能として使用しているものが多く存在しますが、この作品ではフルートの息音に対抗したり融合できるオブジェクトを選びました。注目したのは、三つの異なる姿をした空気です。一つ目は話したり、ささやいたりするときに使うコミュニケーションのための空気、二つ目は呼吸や風のような有機的な空気、そして三つ目は幾つかのごく単純な道具や機械に使われている機械的な空気です。
http://malinbang.com/testa-plats-2/
(Malin BÅNGウェブサイトより。意訳含む)

ここで書かれているように、この作品の中心になっている音響は空気の音なんですね。これまで空気、呼吸は音楽の重要な要素ではありましたが、「音を出すための力」としてではなく音響そのものが注目されるようになったのは、現代の時代に入ってからではないでしょうか。既にそこにあったものだけれども意識下に置かれ、作曲上の核になるような作品が多くあらわれたのは、少なくとも最近のことのような気がします(最近とは言え、50~60年前の話です)。特にフルートにおいて、それが大きく取り扱われるようになったのは、シャリーノの影響が強いのではないでしょうか。

(フルートの様々な奏法、空気の音を含む)

シャリーノの作品で使われるような息音、息を含むサウンドは、ジョージ・クラムや武満徹などの作曲家によっても使用されていたことを考えると、ノイズを含む音色パレット拡張の要求から生じる、同時代の類似性だったのかもしれません。

話を戻して、ここからはマーリンの作品で使われる空気音の種類に注目してみたいと思います。前回書いた楽器編成をここでもう一度思い出してみます。

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