コンサートホールだけで満足してる? サイトスペシフィックな音楽
美術の分野では、サイトスペシフィック・アートという言葉があるそうです。
サイトスペシフィック・アート
美術作品が“特定の場所に帰属する”性質を示す用語。といって、美術作品にとって“特権的な場所”であるはずの美術館の機能を補完するのではなく、逆に批判するために用いられることが多い。展示空間全体をひとつの作品に見立てる「インスタレーション」や、「ミニマリズム」の純粋形式に対する反発として登場した「プロセス・アート」、公共空間における美術作品の意味を問う「パブリック・アート」といった新しい表現形態の本質とは不可分の関係にあり、1950年代末から60年代初頭にかけて台頭したこれらの形態は、作品の「場所」や「構造」といった問題を問いかけることになった。なお、場所の唯一性を意味するということで言えば、歴史的経緯は異なるものの、現象学的な問題を共有する建築用語、「ゲニウス・ロキ」との類似性を指摘することができる。
(引用: https://artscape.jp/dictionary/modern/1198204_1637.html)
それに付随して、芸術作品における場についての興味深い言及をここで引用します。
絵画表現の起源としてしばしば語られるラスコーやアルタミラなどの先史時代の洞窟絵画においても、特定の場所が選ばれていたことが明らかにされており、(中略)興味深いことに、洞窟の中の同じ場所において、古い絵の上に新しい別の絵が重ね描きされている例がしばしば認められている。このことは、その場所が特別なものとして選ばれ、長期にわたって使用され続けたことを意味している(中略)中原佑介はその著書『ヒトはなぜ絵を描くのか』の中で、実見したラスコーの洞窟絵画の場所の選定に関して、「描くという行為の始まりは、描く場所、描く空間を選ぶということと不可分だったのではないか」と述べている。
(引用:芸術作品の成立と受容における「場」の関与、八田 典子、『総合政策論叢』第8号、2004年12月 島根県立大学 総合政策学会)
音楽も美術同様、長らく場と関連がありました。
宗教音楽
室内音楽
劇音楽
どの場で(何の目的で)演奏されるかで、区分が変わってくる。そして、「その場」に応じた音楽が書かれてきた歴史が、そこにはあります。
この思考論では、現在に至るまでの「場」と「音楽」の関係について、三人の作曲家の作品・プロジェクトを提示しながら、一緒に考えていきたいと思います。
クラウス・ラング「translucent spaces」
クラウス・ラング(Klaus Lang)はオーストリアの作曲家、グラーツ音楽大学で作曲科、そして宗教音楽作曲科の教授をしています。これはクラウス・ラング自身による演奏。演奏を見せるだけじゃなくて、演奏に至るプロセスを見せるドキュメンタリー。
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