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Frau Musica Novaとは。

jwcmでは、2021年5月1日(土)にブリギッタ・ムンテンドルフをゲストに約一年ぶりに【キクラボonline】を開催します。イベントに先立ってインタビューを行いました。

 2020年5月以来、約一年ぶりとなるjwcmシリーズプロジェクト【キクラボonline】。第五回目となる今回は、ドイツ・ケルン音楽舞踊大学で教授を務め、Frau Musica Nova(邦訳:女性の新しい音楽。略称:FMN)のディレクターとして女性作曲家の裾野を広げる活動を行っているブリギッタ・ムンテンドルフをゲストに迎え、FMNの活動についてレクチャーを行う。
 
 FMNは、1997年に音楽ジャーナリストのギーゼラ・グレーネマイヤーとピアニストのデボラ・リチャーズによって創設されたドイツの伝統ある女性作曲家のためのフェスティバル。2013年にブリギッタ・ムンテンドルフがアンサンブル・ガラージュとともに芸術監督を引き継ぎ、2020年以降ムンテンドルフとドラマトゥルグ兼プロデューサーのベアテ・シューラーの二人がアーティスティックディレクターを務める。現代音楽をトランスメディア、異文化、ジャンルフリーの境界実験と捉え、多岐にわたるパフォーマンスを行うFMNの実態とは。後半は客席参加型のディスカッションを行う。

●概要
キクラボonline #5【女性の新しい音楽】
2021年5月1日(土)19-21時(ドイツやフランス:12-14時)
講師:ブリギッタ・ムンテンドルフ(作曲家、FMN共同代表、ケルン音楽舞踊大学教授)
使用アプリ:zoom
言語:英語と日本語
通訳:森紀明、神沢希洋
参加費:投げ銭歓迎です(Note、Paypal)

●注意 参加希望の方は、4月29日 (木)までに下記フォームもしくはE-Mail(jwcm.site@gmail.com)にて氏名、メールアドレスを添えてお申し込みください(投げ銭歓迎・任意後払い制)。当日は19時頃から講座をはじめますので、少し前にご入室ください。

参加視聴申込はこちらよりお願いいたします。

(FMN20での演奏風景、演奏はアンサンブル・ガラージュ

わたなべゆきこ、以下わたなべ:Frau Musica Novaの活動を知ったのは、私がドイツに滞在している時だったんですが、確かブリギッタさんがやっているEnsemble Garageの活動を通して、この名前を知った記憶があります。具体的には、Frau Musica Novaではどんなことをしているんでしょうか?

ブリギッタ・ムンテンドルフ(以下BM):Frau Musica Novaについて語るために、いくつかの手がかりがあるのですが、何から話し始めたらいいかな。例えば、私たちがやっているプログラムについてお話するとすると、現代音楽とエクスペリメンタルミュージック、ポップカルチャーの境界線について、このプロジェクトを通して考えています。あと、Frau Musica Novaの活動自体は、もともとは女性作曲家のためのプロジェクトということだったのですが、最近はあらゆるジェンダーのために開かれたものになっているんですね。この世に存在する全ての性別に開かれたものなんです。

わたなべ:女性だけに特化したものではないと。jwcmでも似たような議論がありました。女性・男性と簡単に分けられるものではないという。

BM:そうなんです。それはドイツでもよく議論されることなんですよね。でも、それもここ最近のことで15年前は完全に違った環境だったんです。15年前は、「女性に特化したものである」ことがとても大事だった。でも、みんなの感じ方が少しずつ変わってきて、LGBTQIAP+(Lesbian, Gay, Transgender, Queer/ Questioning, Intersex, Asexual, Pansexual) 全てのスペクトラムにオープンである、ということがスタンダードになってきたように感じます。

わたなべ:日本の状況で言うと、そういった雰囲気もありつつも、現代音楽界においては、まだドイツの15年前のような環境である感覚があります。ドイツが、もしくはFrau Musica Novaがこの15年間でどのように歩みを進めてきたのか、とても興味があります。

何年か前にダルムシュタットでGRIDというリサーチプロジェクトがありましたよね。それ以来、このジェンダーの問題がよく取り上げられていた印象があります。実際、参加者の性別を男女50/50にしよう、という動きもありました。

BM:私が教鞭をとっている大学では、今でも1/3が女性、2/3が男性学生という割合なんですね。それは問題だと感じています。でもフェスティバルや助成なんかでも、確実に女性作曲家へのサポートが増えてるんです。ただ面白いことに、Deutscher Musikratが行った研究では、「女性作曲家は男性作曲家より稼いでいる額が30%~40%少ない」という結果が出てしまっていて、活動できるチャンスは広がっているにも関わらず、作曲委嘱料が男性作曲家のそれに比べると、それだけ低いということなんです。

先ほどお話したように、全体的に見ると女性作曲家を取り巻く環境は改善している。ただし、まだまだ50/50になっているわけではないんです。最近もZKMで問題があって、全ての関連イベントがキャンセルになったということもありました。とにかく、ジェンダーの問題は巨大化しているにも関わらず、完全なる平等性には程遠いというところでしょうか。

でもFrau Musica Novaでは、そこを目的にはしていないんです。実際「男女の数」を合わせることが絶対に必要とは感じていないんです。

わたなべ:今学生の男女比の話が出ましたが、例えば音楽大学内の教授の比率はどうなんでしょうか?

BM:ドイツでも比較的少ないのですが、段々と増えてきています。私が学生時代を思い返すと、女性の教授と言えば、ヨンギー・パクパーン(Younghi Pagh-Paan) しかいなかったわけなんですけれども、今は何人かいます。はっきりとしたことは言えないけれども、20~25%ほどでしょうか。

わたなべ:ただドイツの音大として、全体的には「女性の教授を増やしていこう」という方向性ではあるんですね。

BM:そうですね。そう感じます。日本ではどうなんでしょうか?

わたなべ:そうですね。日本では、学生時代には女性が多いのに、教える側になると極端に女性の数が少ないんです。女性の教授もいますが、まだまだ男性社会のイメージが強いです。そういった分野のリサーチもドイツほどは活発でないので数字として可視化されていない、という部分もあると思います。

BM:でも、どうして女性の教授が少ないと思いますか?何か原因はあるんでしょうか?

わたなべ:単に教授=男性という固定概念もあると思います。あとは働き方でしょうか。なかなか育児をしながら、定時の仕事をやることが難しいということもあるかもしれません。

Brigitta Muntendorf ー ブリギッタ・ムンテンドルフ
ドイツとオーストリアの作曲家、ブリギッタ・ムンテンドルフは、様々な芸術形式の交差する場所と表現方法、網の目のような多層引用と接続方法から音楽を作り上げる。彼女はシテ・アンテルナショナル・デザール(パリ)とゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川(京都)に奨学生として滞在、2014年にはエルンスト・フォン・シーメンス賞を、2017年にはGEMAからドイツ音楽作家賞を受賞。 彼女の作品は、アンサンブル・モダン、クラングフォーラム・ウィーン、モクレプ(シカゴ)、ムジークファブリク、レ・シエークルなど、数多くのアンサンブルによって、フェスティバル・ドートンヌ(パリ)、ルール・トリエンナーレ、テアター・デア・ヴェルト、ドナウエッシンゲン音楽祭、ワルシャワの秋、ミュンヘン・ビエンナーレ、ムジカ(ストラスブール)、 アルティマ(オスロ)、オナシス(アテネ)、メトロクラブ京都、アートシェアLA、エルプフィルハーモニー(ハンブルク)など世界中のフェスティバルで演奏されている。 2017年以降、ブリギッタ・ムンテンドルフはケルン音楽舞踊大学で作曲の教授を務める。 


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