初めての針仕事

母に、針に糸を通してもらい、四角いフェルトをもらって、ぷつりと針を刺してみた。見た目を裏切る堅い手応えに、決心を固める。

そのまま引っ張るとするりと糸が抜けた。玉どめをしていなかったからだ。

母が私の手から針と糸をとり、玉どめをしてから渡してくれる。

もう一度、フェルトに刺す。裏側に針が出ているので、フェルトをひっくり返して引っ張る。もう一度刺す。裏返して引っ張る。

初めての運針は長さ2cmの並縫い、二針。満足感が胸いっぱいに広がる。自分では見れないが、私の顔は輝いていたに違いない。

母の隣で、初めて針を持ったのは、幼稚園に入る前。3歳か、4歳になったばかりの頃だ。こたつの母の横に座り、母の真似をして縫い物をした。

フェルトに鉛筆でうさぎの絵を描きその下絵にそって縫った時は、縫い終わってみるとフェルトと自分の指が一部縫い合わせてあって非常に驚いた。夢中すぎて針で指を刺してしまっていたことに気づかなかった。気づいてから痛くなり、大泣きした。

母は苦笑しながら、糸を切って、私の指を救出してくれた。

母は針を持たせることが心配ではなかったのだろうか。

母に注意されたのは、使い終わった針をどこかに置きっぱなしにしてはならない、必ず針山に戻す、ということだけだったと思う。自分の指を刺さないように気をつけて、とは言われなかった。聞いてなかっただけかもしれないけど。

母には編み物やミシンも教わった。もともと手芸は性にあっていたらしく、どれも楽しかった。自己流で大して上達しないのだが、作ることそのものが至福だった。(唯一マクラメだけは習いに行き、本格的にやるように。)

二針の針仕事に始まって今に至るまで、いつも家で何かを作っている。

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