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恋愛中学生 / No.002
知子「肌の奇麗な女の人」1
知子さんが突然僕の街に来たのは二〇十一年五月、2週間程僕を訪ねに来てくれた。二〇〇七年三月にこの街に引っ越して来た僕は、一度この街を一年程離れいる。その間に移り住んだ街で出会ったのが知子さんだ。僕がこの街に再び戻ってからもずっとチャットで連絡を取り合っている。
知子さんは僕に無い部分をたくさん持っている。三十三歳の僕より二つ下の彼女に尊敬というか憧れというか、そのような類の念をずっと抱いていた。
例えば、恋愛話をしても優柔不断な僕には無い考え方でいつも僕をそのスパイラルから引き上げてくれる。悩みを短時間で解決できない僕は数年の時間を要する事もザラではない。また、彼女の魅力を際出せる男勝りなところも好きだ。男性の前でも、大きなクシャミやアクビもするし、ご飯を食べるときは大きな口を開けて食べる。鼻水も平気で思いっ切りかむ。自分の気持ちに忠実な彼女がすごく羨ましい。
女性的な側面ももちろんある。よく気が利いて機転が回る。調理専門学校に通っていた経歴もあり料理がすごく旨い。
優柔不断で、鈍感な僕とは全然違う。僕は次の事を想定できない子供だ…。知子さんはそんな僕を一人の男性として見ていない。だから僕の部屋に2週間近く滞在できるのだろう。
しかし知子さんが突然僕の街に遊びに来た理由が心配だった。チャットで深く聞くことはあえて避けた。このスローな僕の街で心身を和らげてほしい。僕が知子さんにできることと言えばそれぐらいしかなかった。
『知子到着(水曜日)』
午後4時、僕は知子さんと空港で久しぶりの対面となった。
「ひさしぶり」
「ひさしぶり。元気にしてた?全然変わってないね。どれくらい会ってなかったけ?」
「一年半ぐらいかな。飛行機の中はどうやった?」
「ひたすら寝た」
他愛もない会話で始まった久しぶりの再会はすごくうれしかった。チャットではやり取りをしていたけど、やっぱり会うのが一番良い。知子さんは相も変わらず165cmの肌の白い綺麗な女の人だった。
『身長は自分より1cmでも高い人がいい』
知子さんを目の前にして〔確認事項〕が突如現れる。この〔確認事項〕はいつも知子さんと外を歩く時に、僕の右目の斜め上辺りに姿を現す。そして知子さんに対し間違った考えを抱けば、フォイッスルが鳴る。まるでファウルと言わんばかりだ。
以前から知子さんが言っている彼氏の条件に、僕は該当しない。異性であっても知子さんと友達としていられるのは、恋愛対象から外れているからだ。僕は知子さんのスーツケースを手に取りに空港から電車へと向かった。
久しぶりの再会であっても僕達に大きな話題は無く、淡々と家路に向かった。旅路の安堵もあってか知子さんは窓側の座席に体をに預け、大きな深呼吸をした後、虚ろな表情で電車の中から僕の街の景色を眺めていた。
知子さんは僕の街の景色に少し魅了されているようにも見えたが、どこか悲しげだ。夕刻に差し掛かろうとする太陽の日差しは、まだ紅味が少なく黄味が残る。何か知子さんの白い肌と一つのように感じた。
外の景色を見る振りをして、知子さんを見ている自分が恥ずかしくなった。僕はスッと知子さんから目をそらした。
空港から一時間程で僕の部屋に辿り着いた。辺りは夕日の灯りでオレンジ色に染め始めていた。知子さんが僕の部屋に入る。
「独身男性の割には綺麗やね」
「貧乏やから買いたい物が買えないだけやで。置く物がないねん」
知子さんが少し笑ったら殺風景な僕の部屋が仄かに暖かくなった。
その日の夕食は行きつけの中華レストランですませ、帰宅後、お茶を飲みながら夜中の十一時ぐらいまで話をした。突然に僕の街へ来た理由を聞く勇気はない。ベットルームを知子さんに渡し、僕はリビングルームのソファで寝ることにした。
「おやすみ」
知子さんがリンビングルームの灯りを消し、ベットルームへと入った。僕はソファーで深い眠りについた。
つづく…
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