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月に望むは時の綾

 ※死についての話が主です。それらについての描写があります。

 某ジュブナイルRPGの「3」を劇場版とコミックで体験をしてきた。ゲーム自体は「5」をやりこみ過ぎたため、少々システムに飽きが来たのか集中力が続かなく、途中で止まっている。ただ時間があればコツコツ進めたい。

 「3」についてはメガテン系御用達ダークネスモードの「死」がテーマらしい。このファンである友人らは「つきかぜさんは絶対こっちが好き」と大変オススメされていたので、とりあえずシナリオを追うことにした。しかし私は死の気配でも漂わせているのだろうか。まあ基本的に中二なのでそうかもしれない。中二は良いぞ。お前も中二にならないか?

 細かい設定については、こちらの尺度にあわせてツッコミを始めたら終わらない。一応そういった事情があるので完璧な感想は書くことはしない。というよりも野暮なことはあまり書きたくない、そういった静かな作品にしておきたいということもある。

 今の自分には「死」といったものが、絶対的な終わりではないことをなんとなく知り始めたからか「来月世界が滅亡する」といった所謂時限付き死の宣告モードが、実際に絶望になり得るかについては少々懐疑的だ。なので「死は救済である」とも全く言えないことは明白である。とはいえ、一応ストーリーの設定上は「全ての終わり」といった概念を中心に沿って考えられている部分があるので、それをベースに考えてみている。

 何がどうなるかわからない、その先のことを考えることは基本的に怖い。「世界の終わり」に対して、もし来世や次の世界でまた会おうなどと「3」の主人公が悟ってしまったら恐らくバッドエンド以外に必要がないだろう。ちなみにこの悟り系バッドエンドは仕様上、ゲーム内選択肢にも存在するようだ。私は悟りモードと勝手に呼んでいる(今決めた)。

 主人公も私と似たような経験をしていたようだが、実際に人が死ぬ瞬間をこの目で見たことがあると、生物活動の停止という抗えぬ運命自体を体感的に無意識ながら理解をしてしまっている。私の場合も身近な存在であった父親の死によってそのような感覚になった記憶がある。心臓が止まる瞬間の表情や、筋肉が弛緩する様、それを経てタンパク質のかたまりに移行してゆく、あの状況に合う言葉を未だに見つけることが出来ない。死に抗うなんて滑稽すぎて、あり得なくて笑ってしまうそんな状況で「死ぬんだな、これがそうなんだ」と考えていた。それが目の前で起きていることは本当に怖かった。そういった意味での終わりは意味不明で恐ろしい、恐らく陳腐と言われる表現で言えば目に見える繋がりが、突然切れた時の喪失感は正に絶望なのかもしれない。

 自分に起きた喪失感を埋めるために「明日もまだある」と信じ、様々な迷いを喜怒哀楽、そして虚無を含めた全ての激情で上塗りをし今日を生きる。ジュブナイルらしく、私はそれらをあまり真剣に考えられなくてもやはり眩しかった。瞬間の連続をつなぎ合わせて生き続けるところが、人間らしくて良い。少し冷めた考え方がある一方で私はそれらをこよなく愛している。それらがもし無くなったとしたら、誰も人同士を必要としなくなる気がするし、今の自分だから言えることでもあるがそれは寂しいことだ。それらが不要ならばそもそも概念だけの存在でよい。

 作品の中に、死の宣告者といった立場のキャラクターがいる。名前を望月綾時という。名前自体にはどうやら「満月をもってその時は訪れる」といった暗喩が非公式ながらあるらしい。確かにストーリー的にも妥当な解釈だ。ちなみにエヴァに登場する「カヲル」ムーブをするキャラクターで、話の流れも顛末も「どうしてなんだよカヲル君!!」といったあのパターンになる。

 「(設定上、終末を運ぶ母体としての)月に望むのはひとつの結末ではなく、それぞれに流れる複雑な時間の筋道を許容すること」

 私は彼の名をそう捉えた。「りょうじ」ではなく「あやとき」と読んでしまったことも、振る舞いからそう感じたからだろうか。直面する避けられない最後はそれぞれに必ずあるのだから、そう願うかもしれない。終わりは今一斉に訪れる必要はなく、もれなく彼自身もそうありたかっただろうか。必ず終わりが訪れるものであっても、それを迎える時期に差分があることで人々の交差が生まれ、それらが織りなす複雑で豊かな時間をせめて理解してほしいと、ただの「機能」であったはずのDeath(望月綾時)という存在が主人公と共に育つことにより、そう変容したようにも思えたのだ。

 完全に私の妄想乙でしかないが、記録として書いておきたい。「お前大体何歳だ」といった真っ当な社会人はそう言いたくなるだろう、正直、自分でもそう思う。でも私はこちらのほうが好きだから、そしてそう思ったのだから仕方がない。

 「3」については「5」のようにラスボスではなく、無自覚無責任掌返しの大衆そのものをこの手で地球ごと滅ぼしたくなるような衝動には駆られず、非常に落ち着いて見ることが出来た。確かに私にはこちらのほうが合っているだろう。

 合わないものもあるが、残りのシリーズ「1」と「2」にもリメイクの機会があれば触れておきたいと思うほどに好きな世界感を持つ作品群になっている。しかし、しらけるか、拒絶か、世界に囚われてしまうかといった極端な印象を持つ人が多いので、相変わらず積極的に人にはオススメはできない作品群だ。特に「3」は基本的にいろいろな意味で感情が死ぬ可能性がある(それ故に刺激的で引き込まれる人達は一定数いるが)。人生に影響を受けたといった人も多数みかけたし、疲れている時には辞めた方が良い。

 中二属性ある?それならOK。罹患済みなら安心して飛び込んでほしい。「4」が一番好き?ちょっと君、これから焼肉を食べに行かないか…?無論奢りだ。