最期の悔い

母和子の弟、大阪のおっちゃんのお話。

梅雨時期になれば、思い出すこのお話。

『ゆきぃ、ヤマモモ食べたいわぁ。おっちゃん、ヤマモモ食べたかってん。買うてきてくれへんか？』

病室で横たわる大男。
ガンの緩和ケアで、大阪から高知に連れて帰ってきた。

元々体力と健康には自信のあるこの大男。
しっかり背が高い家系を唯一引き継いだヒロおんちゃん。

祖母春子は、大正6年生まれの割に、168cmもあるイイ奥様。スポーツ万能。そしてこれにはいろいろ物議を醸したけれど、「ミス高知」だったというお話。
（またnoteネタとしてみつけたのでこれもまた書く）

母和子と、伯母直子（ナオちゃん）を産んだあと、
戦後の貧しい生活で病死した祖父。
その後、女でひとつで2人を育て、
たまたま電車通りで見初められた下司のおじいちゃんと恋に落ち、ヒロおんちゃんが産まれた。
という経緯。

なので、和子からすると、
ナオちゃんが小さい頃に結核で亡くなってから、
出来た可愛い可愛い弟。

ヒロおんちゃん。

11も離れた上に、背が高い家系のはずやのに何故か140cm台と、おもてたんと違う！和子w
祖父190cm、下司おじいちゃん185cmと春子のツレはデカいんすよ。（話が逸れた）
ヒロおんちゃん、大男は187cmは和子と並ぶとツインズ笑。全く正反対。

説明が長いwwwww

ということで、そんな大男は
ベッドに横たわってもなかなかで。

でも一気に痩せた身体は、痛々しくみてられなかった。

病院に行くと、和子は
ヒロおんちゃんのお世話をしながら、微笑んでいた。　

そんな和子をみるのが、辛くもあり、
おんちゃんの痛々しく大きな身体をみるのも辛い。
小さい和子が支えれるくらい弱っていた。

なので
「はいはい。買うてきたらええがやね。行ってくる！」と顔もろくにみずに飛び出す私。

季節は11月の末。

銀杏並木。あの黄色と、ヤマモモの紫が脳裏にある。

高知は紅葉も遅く、それと同時に雪が降るくらいのこの季節。

手も悴んで痛い。

そこから数日。毎日毎日、果物屋さん、いわゆる青果店に一軒ずつ立ち寄った。

その時初めて、「ヤマモモ」が季節限定ということを知る。

ヤマモモは、7月ぐらいだからね。

次々に在庫はないと断られる

すみません。最期に食べたいと言われて探しているんです。。。。

そんな中、一軒の青果店が
特殊な缶詰屋さんの話を教えてくれた。

いろんな缶詰売ってるから、可能性としたらそれに賭けるしかないかもしれんね。

毎日、毎日、情報を探し、いろんなお店に足を運んだ。

今だと便利なネットというものがあるけれど。
当時はまだあるようで無い時代。

調べるのにも一苦労だった。

でも、、、
あの姿を、弱りきったあの姿を。
今考えたら、毎日見れたであろうか。

逆に、難しい課題を与えてくれたことに感謝する。
そして、ひょっとしたら
元気が取り柄と豪語するおんちゃんの
優しいワガママだったのかもしれない…

弱りきった姿は見せたくない。
今その気持ちはとてもわかる。

一口食べさせてあげたい…
届けたい思いと裏腹に
頑張って探してるからまだ生きててよね！という
ジレンマ…

『おんちゃんはねぇ、体力だけが自慢やった。
小さい頃に育ったいのの家に、ヤマモモの木があってねぇ。いっつも野球の練習しよんから、練習のない雨の時期は、ヤマモモの木へ登って食べよった。ねぇちゃんは、身体が弱かってん。代わりに取ったげたなぁ？』

横でニコニコと和子は頷く。

そっか。思い出のヤマモモか。

そのはなしをしたのが最期。

12/3
家族に看取られておっちゃんはいい笑顔でした。
奇しくも、数年後の同じ日
父ヒロシは和子に看取られて亡くなりました。

そう、寒かったなあ。
手も悴んで痛いし、心も痛かった…
食べさせてあげられなかった…

雨を見つめながら。
ふと思った。

そういや、おっちゃん。
ゆきがバイクのレースしてたとき、
バイク代の足しにって…

元気にしてることはええこっちゃ！
と言いながら
お金送ってきてくれてたなぁ…

身体が弱かったゆきへのエールだったんかな？

ねぇちゃんと仲良くやってる？

ゆきも、あーちゃんも
私たちも正反対で、あんたら姉妹はって
よくいわれてたけどさ。
こっちで仲良くやりゆうきね…

元気でおれよーっていうメッセージかな。
今日の雨は、元気もくれる気がするよ…

梅雨時期になれば
思い出すお話…

最期の悔いと書いたけど、
悔いが残ってるのは私のほうかな…

見つけてあげられんでごめんね。ヤマモモ。

和子に
「あんた、季節のもん言われてもそりゃ無いろがね〜ヤマモモは梅雨時期や！」
って言われよったけど。笑

そんな和子は、かき氷のサクレ食べたい言うたねぇ。
あのひと、きっと私を困らせんために、いつでもあるもんやったんかな笑。

買いに行くいうて帰ってきそうにないき…笑

みんな向こうで仲良くしよって笑
まだまだ迎えに来られても困るきね…

ちゃんと思い出した私は、
サクレを食べた共有をしながら、
和子を思い出し、死に水やないけど、
最期に食べたい言うたなぁ…ヤマモモ
と、note書こうかなって話をしていた

今年は、お供えに、ヤマモモ買いに行こう…
大切なひとに付き合ってもらおう…
まだこんな弱った姿は見せられないけど…