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読書記録|竹田ダニエル著『世界と私のA to Z』&『#Z世代的価値観』

手に取ったきっかけ

 学生時代は自分の前後2-3歳と関わることがほどんどで、世代間の価値観の差を顕著に感じる機会が少なかったように思う。
けれど社会人になり、社内外でひとまわりもふたまわりも世代が異なる人たちと関わることで、経験してきた世の中の情勢や空気感が違うだけで、こんなにも考え方が違うのか、と思う機会が増えた。
 ただ、漠然と違いは感じるものの、Z世代とミレニアル世代・ベイビーブーマー世代との行動や価値観の差はどこから来ているのかについて、「インターネットの普及度合の差」以外には深堀して考えたことはあまりなかった。

 著者の竹田ダニエルさんのことは、若者目線で様々な社会問題や世の中のトレンドに対して鋭い切り口でコラムを発信している、アメリカ在住のZ世代の注目のライターであることは知っていたので、改めて自分の価値観に影響を与えている因子や他の世代との差分を理解したいと思い、この2冊を手に取った。

Z世代当事者による解像度の高い”価値観”の描写

 2冊共通して感じたことではあるが、自分の中で言語化されず潜在的に感じていた「なぜこうしたいと思うのか、感じているのか」について、その想い・価値観を形づくる要因となった世の中の出来事・トレンドに基づいた解説により紐解かれていくような感覚になった。
 私自身はぎりぎりZ世代に足をつっこんだミレニアルよりの世代なので、Z世代ど真ん中というわけでなはい、かつ、個人の価値観を作り上げる要因は「世代」だけではなく「ライフステージ」や「文化」などの要素も影響するのでドンピシャですべてが当てはまるわけではないが、首がもげるように共感できる部分はたくさんあった。

 また、著者の竹田ダニエルさんがアメリカ在住ということもありアメリカのZ世代の事例を中心に展開されているのだが、アメリカ・日本間の共通点や違いが垣間見れるのもこの本の面白い点だと感じた。

絶望のリアルと反応の二極化

 総じて言えるのは、技術の発達によって世界中のいろんな情報にアクセスができるようになったことや誰しもが手軽に情報発信をできることによる価値観へのインパクトが大きいということだと思う。スマホを開くと、環境問題や政府の汚職、貧富の拡大など、げんなりするような社会課題に関する情報や、「失われた30年」といわれる、働いても働いても改善されない低迷した経済状況を嘆く声ばかり目にしていると少なからず価値観には影響を与えるのは当然だろう。
 
 ただ、それらの外的刺激に対する反応の仕方はZ世代の中でも2つに分かれているのではと個人的に感じている。一方は現実に絶望し諦めてしまうタイプ、他方は自分の力で状況を変えようとするタイプだ。
 前者は、どれだけ個人が頑張っても改善されないのであればできるだけ外部に消耗されることなく自分自身の権利だけを守ろうとする傾向にあるように感じられる。会社で上の世代から苦言を呈される、決められた最低限の範囲でしかコミットしない、というのもそのような価値観によるものだろう。
 後者は自分の信条に触れることについては積極的に関与し状況を変えようとし、オンライン上での発信力やネットワークを生かしてアクションを起こしていくタイプだ。少し前までは、若者が社会課題に対して声を上げること自体がダサいというような風潮もあったように思われるけれど、最近のSNSを見ているとZ世代の芸能人やインフルエンサーなどのオピニオンリーダーによる情報発信をきっかけとした課題に対する認知の広がりや賛同する人たちのアクションが増えてきているように思う。

 このように、”Z世代的行動”と呼ばれる現代の若者のふるまいの背景だけではなく、世の中でどのような事柄への注目度が増してきているのかについての解像度もたかまるので、当事者のZ世代はもちろん、その他の世代の方にも読んでいただきたい内容である。

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