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中央区での入札の競争性は十分か? - さらなる周知と制度の見直しによりより公正で効率的な入札を

 今回のテーマは、行政運営にまつわる不正防止の取組について。

 行政運営にかかる不正行為は以前からあるものですが、ここ数年で近隣の自治体でも起こっているところです。具体的には千代田区や江東区。

 千代田区では、2020年に当時の議員と職員が事業者に対して入札情報を事前に伝えるという事件がありました。結果、それぞれ逮捕されています。

 江東区でも同じように、2022年に清掃管理業務の指名競争入札に関して議員が職員に対して契約に関する秘密事項を漏らすよう働きかけたという容疑で起訴・逮捕されるという事件が起こっています。

 これらについてはそれぞれ表沙汰になったことで対象者への処分と再発防止のための委員会などが立ち上がり、今後同様の事象が生じないような対策が進められているところです。

 幸いにも、中央区においては現状このような不正行為は明らかになっていません。これは素晴らしいことですが、単に起こっていないことに満足するだけでなく、将来的にもこれらのような事件が生じないようにあらかじめできることがあればやっておくことが大事です。

 こういった観点から、現状の中央区の行政運営において不正につながりうる要素、という観点から先日の一般質問において3点今回取り上げました。

  • 調達情報のさらなる周知

  • 入札監視委員会の業務範囲の見直し

  • 任意団体への監査体制の充実

 3つまとめて書こうとしたのですが例のごとく長くなってしまったので、今回は1つめの調達情報の周知について書きます。


調達情報のさらなる周知について

どういう問題?

 公共調達は一般に公正性と透明性、経済性の確保が必要とされており、これらを実現するために公共調達の原則は競争入札とされ、最小の経費で最大の効果が求められているものです。

東京都の入札契約制度について

 この競争性を担保するために重要な要素が、できる限り調達の情報を知ってもらい、参加していただくかということ。これによって健全な競争が生まれ、中央区にとって最も有利な条件での調達が可能となります。

 他方で、その情報の伝達範囲が限られてしまうと、実質的に特定の事業者だけが入札に参加することで入札価格が高止まりして、区が不利益を被るということにもなりかねません。参加者が一部の事業者に限定されることは、業者間の談合にもつながります。


 これらの意味で、調達情報がどこまでしっかり周知されているかというかというのは大事なことと考えています。 

何が問題?

 わたしが中央区の公共調達における課題と考えている点は2つ。

問題1:情報知られていないのではないか?

 1つは、調達の情報が十分知られていないのではないかという点。

 本区の調達情報が掲載されているのは、区のwebサイト、東京電子自治体共同運営電子調達サービス、区役所の掲示板等への貼り出し。これらはいずれもそれぞれのWebサイトや設置場所に行く必要があります。

区役所での貼り出し

 頻繁に取引のある事業者であればこれらの情報を定期的に巡回しているでしょうし、これらの調達情報を集約して提供する民間サービスがあることも認識はしてます。

 しかしながら、これらの情報収集は当然に人件費やサービス利用料などのコストを必要とするものであり、そのコストは当然に価格に転嫁されうるものです。また、これらの手段を持たない事業者はそもそも調達があることすら気付かないという可能性もあります。

問題2:申込期間の設定が短すぎるのでは?

 もう1つは、申込期間が短すぎるのではないかということ。

 また、本区における調達では、参加する際の「申込期間」が設定されています。これは、いわば事前のエントリー期間なのですが、多くの調達ではこの期間がわずか「3日」に設定されています。

 たまたま記事作成時点で公開されていた「勝どき駅地下駐輪場長寿命化修繕工事」のスケジュールだとこんな感じです。

 こんな調達をやります!という文書である「入札公告」が公開されたのが7/3。そして、その日を含めた3日間(7/3 - 7/5)が「申込期間」。この申込期間に事業者のうちに申請書を提出する必要があります。というか、この期間に書類を出さないとその入札には参加できません。 

 つまり、このわずか3日間という期間に調達情報を発見して諸々の検討を踏まえて申込みを行わない限り、入札に参加することはできないということです。これでは定期的に中央区の調達情報をチェックしているような事業者以外では参加するのは実質的に困難で、結果として競争性が損なわれてしまいかねないのではないかということです。

 なお、そんなに金額の大きくない調達をスケジュール重視でやることまでを否定しているわけではないですが、今回のこの調達は予定価格(区が算出する、だいたいの金額感)が「約1億円」の案件なのです。この程度の規模のものまでこのスケジュールでやるのはちょっとマズいのではないかと考えております。

どうすれば良い?

 それぞれ、解決策は簡単です。

 調達情報のさらなる周知については、入札参加資格を保有している事業者に対してメール等の手段でプッシュ型で周知していくということです。中央省庁や他の自治体ではメール等で調達に関する情報を配信する仕組みが多く導入されております。

 申込期間についても見直すべきです。他の自治体の調達を見る限り、同様に申込期間を設けてはいますが、その期間は必ずしも「3日」ではなく「7日」などとなっています。つまり、これは運用上で決定できるもの。調達のの規模などを元に決められるべきではあると思いますが、基本的に競争性を高めるためにより長い期間を設けるべきです。

今回のやり取り

質問したこと

 今回質問したのは2点。上記の中で現状の課題に対する解決策として書いたもののの提案です。

 1つは、より周知を行うための入札情報のプッシュ型での通知の導入。もう1つは、現状だと異様に短い申込期間の見直し。

質問に対する答弁

 上記の問いに対する答弁は、以下のとおり。

問1.調達情報のさらなる積極的な周知
→ 本区の入札公告等の調達情報につきましては、24時間いつでもどこからでもインターネット上で確認できるものとなっております。また入札公告は毎週月曜日と水曜日に定期的に掲載しており、プッシュ型によらずとも受注意欲のある多くの事業者に行き届いていると考えております。
 入札の申し込み期間につきましては、本区では、必要最小限の入札期間で迅速に調達を行う観点から3日を基本として設定しておりますが、他区の入札結果と比べても参加業者数は遜色なく、競争性は適切に確保されていると認識しております。

答弁への考察

 見ての通りで、改善する気はありませんとの残念な答弁。

 「定期的に掲載しているからプッシュ型が不要」というロジックはまず理解できません。「期間が短くても参加事業者数は遜色ない」といううことですが、であれば期間を長くすればより競争が行われるということもあります。何をもって遜色ないという結論になってるのかも不明。

 ただ、この辺りの妥当性は他区の入札結果の中身まで見て比較してみなければよくわかりません。今回はそこまで踏み込めなかったことから、本当に「中央区の入札が他区と比較して競争性が担保されているのか」という点はまだ不確か

 冒頭にも書いたとおり、情報の伝達範囲が限られてしまうと、入札価格が高止まりして区が不利益を被るということにもなりかねませんし、業者間の談合にもつながります。

 中央区としては現状が妥当であるという見解は得られたので、本当にそうなのかはちょっと時間はかかりそうですが他区との比較などをやってみようと思ってます。過去の入札結果はwebサイトになくはないのですが、それを集約するのはしんどいなあというところで、良いやり方などご知見があればぜひ共有いただけると嬉しいです。



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