山の上のパン屋に人が集まるわけ、は"わざわざ"ふつうを問い直せる場所だからかもしれない
わざわざ代表平田はる香さんの本を、土門蘭さんライター、あかしゆかさん(サイボウズ式ブックスチーム)編集、セプテンバーカウボーイ吉岡さんが装丁した本を藤原印刷さんが印刷するという、もう私にとっては喉から手が出るくらい羨ましいチームでつくられた本。4/29の「よき生活研究所」グランドオープン&刊行記念イベントに行ったら、平田さんのこれまで積み上げてきた"よき"が溢れまくっていて、本当に本当にいい時間だったので、言葉に残しておこうと決めました。
▶︎平田さんのふつうには哲学がある
わざわざが掲げるビジョンは、「人々が健康である社会へ」。人々が健康であることってふつうの状態なはず。でもみんながちょっとずつ自分のふつうをすり減らして殺しながら生きてて、「もっと自分のふつうを人に伝えていいんだよ、私のふつうはこうだから!」って生き様で伝えている人、それが平田さん。
私はこの本を読む前、下の記事を読んで衝撃を受けたのを覚えています。
楽して生きたい・めんどくさいことをやり続けないために・頑張りたくないから、経営者とは思えない言葉の連発にまじか….と思ってました。
まあでもみんな人間だしこの考えがチラつく瞬間だってあるよなあ、いや本当は基本天性でそう思ってるよなあ(楽とか頑張らないとかと対極にいる人が評価される社会だからそう思わないようにしてるだけで)。平田さんが違うのは、自分の求めるふつうに正直になっていること、それを「わざわざさん」という会社のビジョンにもしちゃったこと、自分のふつうを守るための責任は全部自分が負っていること。
「ふつう」って「ふつう」だから、よくも悪くもないから、1番ふわふわしてるし、気づかないうちに世の中のふつうに合わせちゃったり、自分のふつうを押し殺しちゃったりする。ふつうに向き合い続けるのって相当なエネルギーがいることだけど、平田さんは向き合い続けている。もはやキラキラゴリゴリ経営者ではなく、頑張りたくないふつうの人ですと正直にいうことで、平田さんが創ろうとしている世界観と、それを届けたい人たちとの目線をグッと同じにしているのかなと思った。ふつうと向き合うことの尊さを教えてくれた本だった。
▶︎それぞれのふつうがそれぞれの「よき」に変わる未来
意思決定の速さ、強さ、しなやかさ、全部平田さんの描く「よき」からきている。(本の言葉を借りると)「わざわざ」でものを買うと、自分自身も健康になれるし、その先にある良い生産者さんにお金がきちんと入る。自分が渡したお金が私利私欲で使われることもない。その「循環」に対する信頼、これが平田さんの考えるよき、なのです。私も、アナザー・ジャパンを始めてから、そして、チュウゴクシコクの企画展をつくる中で特に、循環みたいな目には見えないけど、ものを買う時に確かに感じる流れに強いこだわりを持つようになりました。
間違いなく、長野の山の上にあるわざわざ(わざマートも)は、自転車でふた山越えてまでも"わざわざ"買いに行きたいと思えるお店でした。なのに、その隣にあるよき生活研究所は、買うという選択をしなくてもいいですよという場所なんです。あーーーこの意味わかんない矛盾が面白い!矛盾してるけど矛盾してないのもさすがすぎて脱帽!!!
この矛盾しているようで矛盾していない背景、平田さんにとってものが売れることだけが「よき」ではないから。一人一人の「よき」が保たれるためには、一人一人のふつうと健康が保たれていることが重要で、そのための安心を届けることが「よき」だから。たしかに、ものを買うその瞬間だけ切り取ると、どんなに高価で認証マークがついてたとしてもまだ安心はしていないのだよなあ…買ったものが自分の生活に長く寄り添ってくれるものになって初めて心から安心できるものといえるのかもしれないなあ…だから「買い物の前と後もつくる」。わざわざの一気通貫した「よき」の哲学を、長野に行って、本を読んで、初めて感じられました。
おまけ)DJの血が流れてるな〜と思ったもの
もともと東京でDJを目指していた平田さん。(DJ時代にラップを死ぬほど浴びたのかな、と思ってしまいました。)イベントもずーっとメインでトークしてて、ひっきりなしに料理が出てきて、カーペットに座ったり寝転がったりしながら思い思いに過ごせる空間。DJだった過去の経験があるから無意識にでもこういうものを作れるんだろうなあ…
わざわざの姉妹店「問 tou」のコンセプトボードに書かれた言葉。ドゾ↓
私たちが作ったもの
誰かが作ったもの
方々から集めたもの
店はものに値段をつけ
客はそれを買う
もの かね ひと
売る それは店から
客へのひとつの問
問われた客はものさし
持って価値をはかる
もの かね ひと
世界にはものの数だけ
問いがある
人の数だけ解もある
touは問う
ものと人とが出会う場所
人と人が話すこと
あえて求めて
皆に問う
もの かね ひと
間にあるのはなんですか
本を手に取った瞬間、フランスパン入ってそうな紙質の本だなって思わせるくらい細部までこだわっていたり、その時々で廃盤になる紙で本文ページを構成したり、表紙のくりぬいた部分に粋な計らいがあったり、とっても手触り感のある本をありがとうございます!!(これだからKindleユーザーになれない😅)
お店をつくる人として、これから自分の生き方を決めていく21歳として、大事なところに立ち返らせてくれた本でした。また自転車で!わざわざ行きます!
最後までわざわざ読んでくださった方にも感謝を込めて….
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