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【連作短編】はざまの街で #1〜#8(全8話)

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創作大賞2024応募作 疲れた魂が生まれ変わるためにその疲れを癒す「はざまの街」。 ここには疲れを癒す手伝いをする役目を担う人たちがいる。 ここを訪れる人たちを自宅で受け容れる…
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#創作大賞2024

【連作短編】はざまの街で #8最終話 月光山

 その日も晩秋の青空が広がっていた。  窓を開けると澄んだ空気に乗って、細かい音まで街を…

とーと
3週間前
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【連作短編】はざまの街で #7 記憶

 庭の欅の木に残った枯れ葉がもうわずかになった。  雲ひとつない青空だが陽の光は柔らかく…

とーと
3週間前
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【連作短編】はざまの街で #6 きのこ汁

「弟を捜してもらえませんか?」  志郎が庭の欅の落ち葉を掃いていると、背後から女の子の声…

とーと
5か月前
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【連作短編】はざまの街で #5 トマトの冷製スープ

 ジィィィというアブラゼミの鳴き声が庭に響いている。欅の木のどこかに止まっているのだろう…

とーと
5か月前
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【連作短編】はざまの街で #4 海を見下ろす公園で

 サーッと絶え間なく繊細な音を立てながら、絹糸のような雨が降り続いている。  その音に混…

とーと
10か月前
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【連作短編】はざまの街で #3 大根の味噌汁

 港からボーゥと太く長い地響きのような汽笛が聞こえる。大きな船が入ったらしい。  志郎は…

とーと
11か月前
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【連作短編】はざまの街で #2 玉子スープ

 庭の欅が若葉を芽吹く。若葉は午後の光を浴びて明るい緑色に輝く。  志郎は縁側でいつもの座椅子に寄りかかりながら、文庫本を片手にうたた寝をしていた。  そっと近づいた来栖が、その文庫本を取り上げて、角で志郎の頭をコツンと叩いた。 「いたっ。あ、来栖さん」 「おう。相変わらずジジクサいなぁ」 「来栖さんもたまには本でも読んだら?」  志郎が叩かれた頭を撫でながら言う。 「オレはもう、ありとあらゆる知識がここに詰まってるからいいの」  来栖はそう言って、自分の側頭部を人差し指でツ

【連作短編】はざまの街で #1 クラムチャウダー

【あらすじ】 疲れた魂が生まれ変わるためにその疲れを癒す「はざまの街」。 ここには疲れを癒…

とーと
1年前
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