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防腐剤を使わないという選択

想いって見えないけど伝わる。愛を知るというのはこういうことかも知れない。大げさに聞こえてしまうかな。でも本当にありがたくて涙が出ます。(涙腺弱め)

2019年冬。今年は平年より暖かな日が続き、またまたいつもと違うことが起こっています。ミカンの収穫後、フレッシュなゆえの酸度を落ち着かせるために倉庫で寝かせるのだけど気温が高いせいでミカンが傷みやすくなってしまいました。

うふふなミカンは防腐剤は使いません。だからと言って腐ったミカンを送っては絶対にいけないわけで。(ミカンが腐ってしまうということはまだまだ窒素分が多いことが原因でもあり本当に悩ましい。この話はまた別で)

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小さな農家ができることは丁寧に丁寧に扱って検品して出荷することにつきる。すでに傷んだものはもちろん、腐りにつながる可能性がある変色が1mmでもあれば取り除く。のだけれど気温や環境によっては1日で傷みが発生してしまうこともあるので、無事にお届けできたかどうか特に今年は気がかりだった。

そして不安は的中。今年もたくさんの「美味しかったよ!」メッセージをいただき心からほっとしている反面、数件ではあるが傷んだミカンが届いてしまったことをご連絡くださった方が。

ということはそれだけではきっとないはず。うふふなミカンの会員さんは優しい方ばかりなので敢えて私に連絡をされなかった方もきっといらっしゃると思う。せっかく1年楽しみにしてくださったのにがっかりさせてしまい、本当にお詫びの言葉もなく申し訳ない氣持ちでいっぱいです。

でもこのわざわざのご連絡が本当にありがたくて。

実は出荷作業をしながら、防腐剤を使っていないミカンと使っているミカンの差が歴然で。(当園はうふふなミカン以外は慣行栽培。園主の父は○協役員笑)やっぱり防腐剤を使ったほうがいいんじゃないかっていう議論をいったりきたり。

一般的な流通(生産者(農協など)ー市場ー小売店)にのせるにはクレームのない商品を、数ヶ月前からの契約どおり、大量にタイムリーに届けなくてはならない。何があっても。(他にも産地はあるからね)

小売の現場では一円でも安く販売するために人件費も必要最小限。人も時間も想定外に割かなくてはならないクレームは最大の敵。だから腐ったミカンなんてもちろん入っていてはいけないし、保存性のよいミカンは評価され(味はその次)、市場は生産者に(極端に言えばね)腐らないミカンを求めるっていう公式が存在する。

直接お客さんの顔が見えるうふふなミカンは、逆に言えば美味しくなければ次はないし、腐ったミカンが入るなんて言語道断。緊張感がある関係だと農家は思っています。

ただ今回は驚くほど皆さん、もう愛という以外ないほど寛大で、傷んだミカンがあったよ、という報告であってクレームというのは1件もなかったのです。

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「美味しくてね、皮ごと食べてるんだよ。」「美味しいものを届けてくれてありがとう」という言葉とともに傷みがあるミカンが入っていたことをお知らせして下さり「とって食べちゃうから全然大丈夫なんだよ」とか「防腐剤を使わないってこういうことなんだよね」とか。

本当に恐縮するしかないほど私たちの想いと生産活動に寄り添ってくださる方ばかりでした。

防腐剤を使わない選択がご迷惑をおかけしたことを正当化するつもりはまったくありません。生産活動や管理手法において他にできることはないのか、改良を重ねていきます。

ただうふふなミカンを応援して下さる方のこうした思いが本当に私たちのくじけそうな氣持ちをがっちり支えてくださっていることを、逆説的で恐縮ですが、改めて感じています。

○協役員の父と防腐剤を使う、使わないで険悪になったことは言うまでもありませんが、またケンカする元氣が出てきました(笑)。これでもくじけそうになること、あるんですよ。私自身、お金と効率を200%否定できるほどできた人間ではないのです。

今回の件で、改めて命最優先の選択をしていく勇気ををいただきました。やっぱり食べるひとと作り手は仲間だと強く思います。



いただいたサポートは無農薬、自然栽培の勉強に充てさせていただきます。