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黄エビネが咲く庭で

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このマガジンは、医療の小説です。 医療・製薬・ITなどのビジネスを手掛けてきた私、武知志英が、日本の医療の質を高め、日本に住む人たちが安心して生きていけるようにする処方箋を、実際…
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#医療小説

黄エビネが咲く庭で (第十五章 吉田たちに差し込む一筋の光明)

黄エビネが咲く庭で (第十五章 吉田たちに差し込む一筋の光明)

第十五章 吉田たちに差し込む一筋の光明

 井出がデジタル庁長官の濱田に対して医療DX勉強会のアジェンダの案を見せながら、勉強会の方向性や議論の進め方などを話し合っている間、蒼生たちはレセプトデータの活用についての議論を深めていた。
 
 蒼井たちはレセプトデータを扱っている社会保険や国民保険の担当者にコンタクトし、アポイントをもらった。そして、その担当者にレセプトデータがどのように活用されている

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黄エビネの咲く庭で (第十四章 松坂と吉田のファーストコンタクト)

黄エビネの咲く庭で (第十四章 松坂と吉田のファーストコンタクト)

第十四章 松坂と吉田のファーストコンタクト

 ある日、吉田が会議を終えて、自分の机に戻ってきた時だった。
 吉田の机の電話が鳴った。内線からの電話だった。
「はい、もしもし」
「社長、厚生労働省の松坂さんという方からお電話です」
「えっ、厚生労働省?そうか、つないでくれ」
 電話の向こうの、吉田の会社の女性社員が、松坂を吉田に取り次いだ。

「はい、お電話代わりました。吉田でございます」
「吉田

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黄エビネが咲く庭で (第八章 吉田と蒼生の共同戦線)

黄エビネが咲く庭で (第八章 吉田と蒼生の共同戦線)

第八章 同志となった吉田と蒼生

中高年のぼやきは、ビジネスの種?

 蒼生は母の葬儀から戻り、また仕事の日々が再開した。

 その頃、蒼生の勤務先であるインフィニティヴァリューの社長の吉田は、社内に新たなプロジェクトの立ち上げを宣言し、そのメンバーの募集を告げた。
 新たなプロジェクトは、医療のビッグデータを扱う新規サービスの開発から顧客の創出、そしてそれらを近い将来吉田の会社の事業の柱の一つに

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黄エビネが咲く庭で (第六章 スマートフォン越しの母子)

黄エビネが咲く庭で (第六章 スマートフォン越しの母子)

第六章 スマートフォン越しの母子

 蒼生が母とスマートフォンのアプリ越しに顔を見ることができたのは、その頃のことだった。
 蒼生の父は高齢であることを理由に、携帯電話はガラケーだった。だが、蒼生の母はスマートフォンを使っていて、それにカメラで対面で話せるアプリを入れていた。
 蒼生は父に頼んで、母の病室に入った時にスマートフォンのアプリでテレビ通話できるようにしてもらった。
 蒼生の父は、自分が

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黄エビネが咲く庭で (第五章 父と母のひとときの儚い幸せ)

黄エビネが咲く庭で (第五章 父と母のひとときの儚い幸せ)

第五章 父と母のひとときの儚い幸せ

 退院後、蒼生の母の開口一番は
「ああ、やっぱり家はゆっくりできる」
だった。
 蒼生の父は、自宅で妻と他愛の無いこんな話ができることを心から喜んでいた。
 いつものように妻が作るご飯を食べ、妻と一緒に庭に咲くさまざまな花の手入れをし、休みの日には時折遠出をして、年に1回くらい県外に旅行に出掛けて・・・。
 そんな日がまた戻ってくると、蒼生の父は信じて疑わなか

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