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フォリア作品の解説など

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フォリアで制作している染、その他作品の技術や創作姿勢に対する解説です
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記事一覧

序・フォリア工房のムラ染系の仕事について

当工房の定番とする加工に「ムラ染加工」があります。 高度な日本の伝統染色の分野では、ムラ系の加工技術もいろいろなものがあります。 そんななかで、当工房が取り組んでいるのは以下のような技法です。かといって、一般的な仕上がりにはせず、そこは「フォリア流」に行います。 技法的にはだいたい の5種がメインです。 上記の技法を組み合わせたりもします。 (今後、技法は増えるかも知れません・・・) 地色の部分だけでなく、文様の部分に使う事も多々あります。 以前、当工房の看板

フォリア工房のムラ染系の仕事について・1

*全面ロウムラ加工について* 「全面ロウムラ加工」というのは主に「白ロウ」という、防染力が弱めのロウを生地全面にベッタリと置いて、その上から染料を擦り込み、ムラ加工をする事です。 着物の表地ならだいたい38cm幅×13.5mぐらい、名古屋帯なら36cm×5.5mぐらいの長さ全部に、白ロウをベッタリと置きます。 その際、着物なら白ロウは2kg程度、ロウを取るためのわら半紙は500枚程度使います。 一度目の仕上がりが今ひとつの場合は、再度、同じ加工を繰り返します・・・実に

フォリア工房のムラ染系の仕事について・2

*トラ目染* こちらも「全面ロウムラ加工」と同じように、工房内での通称がそのまま業界の通り名になってしまいました。 「トラ目」とか「虎杢」というのは、木材に表れる縞文様のようなものです。エレキギターでは、ギブソン・レスポールで有名です。 上画像のエレキギターのボディトップの材木のニュアンスを、染で出したものです。 元々は、フラットな生地への「全面ロウムラ加工」のご依頼をいただいた際、やってみたものの、良い感じに仕上がらず、他の方法を模索していて開発した技法です。怪我の

フォリア工房のムラ染系の仕事について・3

*ムラ雲絞り* 当工房では、工房内の通称でそう呼んでおりますが、絞り染業界で言われている「群雲絞り」は違う手法と、仕上がりです。 この記事で「ムラ雲絞り」というのはあくまで、当工房の手法と仕上がりである事を前提に話を進めさせていただきます。 晴れではあるけども、雲がモヤモヤと出ている空の感じに似ているので「ムラ雲絞り」と呼ぶようになりました。 ヘッダー写真のものは、強めにニュアンスを出した、白大島の着物生地に染めた当工房の「ムラ雲絞り」です。(草木染) * * * 

レース“文様”の和装についてあれこれ

当工房では、アンティークレースをモチーフにした和装の「文様染め」をしており、それは当工房のスタンダードラインのひとつです。 25年ぐらい前・・・1998年ぐらいから作り始めて、今に至ります。 技法は、全く和装染色の伝統技法で、糸目友禅(ゴム糊)とロウの文様染で染め上げます。 そのレース文様の作品を制作していると面白い体験をするのですが、 「お客さまが、レース使いの洋服はあまりお似合ではないのに、着物や帯のレース文様はとてもお似合いになる」 なんて事が起こるんですね。

フォリア工房の和装についての考え

フォリア工房、そして代表の仁平幸春の、和装への姿勢です。 文化面「いわゆる呉服」は、古臭く、水商売臭い、美術団体や呉服業界などの閉鎖的価値観で作られ着用される日本の衣類=「日本の伝統の本筋から切り離され、日本の伝統の亜種となってしまったもの」と考えています。 「和装」は、染色・染織以外の日本の伝統とも連動し、機能する立体的な存在であり、同時に現代日本の様々な文化、並びに日本以外の文化とも共鳴する「伝統と新しさが交差し、かつ同時に存在するもの=本来の伝統的衣類」としています

フォリア工房のムラ染系の仕事について・5

今回は、生地に染料や糊やロウを蒔いて、蒔絵などで言う「砂子」のような効果を出す仕事を紹介させていただきます。 いろいろな手法がありますが、当工房の「蒔きもの」の仕事は 事で、制作します。 *飛沫染(しぶき染)* ここでは「染料、あるいは顔料で行う場合」を説明いたします。 染料や顔料の場合は、下画像のような「扇筆」を使います。特に、毛がピンピンして弾力のあるものが良いです。そこに染料や顔料を含ませ、棒に打ち付ける事で飛沫を作ります。 染料や顔料へ混ぜる糊料の濃度、筆

フォリア工房のムラ染系の仕事について・4

*墨洗い流し加工* こちらは、墨や顔料で生地を染めた後、布を水に充分に浸け、それからブラシで擦り落とす加工です。簡単に言えば、デニムのストーンウォッシュのようなニュアンスを手作業で出す加工です。 和装では、金加工や上絵加工の場合は、経年変化で剥げ落ちたニュアンスを狙ったものがありますが、労働着以外では「布自体が経年変化した美しさ」を最初から狙ったものは、殆どありません。 当工房では、布自体が経年変化したかのような加工をどうにか出来ないかと試行錯誤し「染めたものをワザワザ

和装にまつわるいろいろな気持ちをすくい上げ形にするのも作り手の仕事だと考えます

フォリア工房の私たちは、着物を着る方々の、着物にまつわるいろいろな気持ちや思い出を大切にしたいと思っております。 普段「人の気持ちとか思いとか、そういう事と美は関係ない」と申しております私ですが、それはあくまで「美ってそういう性質があるよねー、怖いよねー、だから尊いよねー」という話であって、日常生活におけるモノや人間関係にまつわる思い出や気持ちは大切にしております。(当たり前です!笑)  * * * * * * * *  当工房では、 あまり袖を通す事のない、お祖母様

やっと当工房のサイトをリニューアルしましたよ!

・・・実は、およそ4年間、私の工房のサイト foglia.jp が表示されないまま放置状態になっていたのです・・・ 忘れていたわけではありません。常に考えてはおりました、しかし諸事情あり、手を付けられず・・・ ・・・しかし!しかし、やっと復活しました! ご協力いただいた方々に厚く熱く御礼申し上げます。。。m(_ _)m 今回、サイト制作をお願いしたのは KAY design closet さんです。 こちらは、子育て中のママたちのデザインチームで、サイト制作から印

よろけとゆらぎ

「よろけ」と「ゆらぎ」。。。 似ているようで違うような。。。 ・・・私はこんな風に染の仕事で使い分けています。 上の写真は名古屋帯です。 インドの古典の手描き縞を、日本の染色技法の糸目糊と、ロウでもっと繊細な感じにつくったものです。 下の画像が元ネタです。日本名で「有平縞」と呼ばれるものです。 元になった更紗はインドのものなので、かなりゆるゆるです。ロウで描いた縞です。このゆるさが良いのですね。緻密なようでゆるゆる、ゆるゆるなようで緻密で、さらにいろいろなニュアン

お客さまだけの一点ものも制作します

​フォリアでは、通常制作している工房オリジナルの染色作品は「いわゆる一点物」ではなく、同じものを何度も制作します。 なぜ、フォリアオリジナル作品を一点モノにしていないかといえば、フォリアでは工芸品は再現性を持つことが自然だと考えているからです。 フォリア工房の工芸作品制作の基本姿勢は ​ 「美的に高品質のものを何度も再生産可能な、高度で安定した技術と美意識が、正に高度な工芸品を産み出す文化の本質である」 というものです。 昔の超絶的な工芸品の多くは、現代人から観れば同

染額の「物語的な」作品について

上写真のような物語的な作風のものは、独立する前ぐらいから少しずつ作り始めたもので、独立して5年めぐらいからは、フォリアの作風の柱の一つとして認識されているものかも知れません。 (紙を染める時←紙の作品についての解説です) この作風のものは主に染額として制作しますが、時に「これを帯にして欲しい」「額裏に・・・」というご要望によって、染額をアレンジして制作することもありますし、最初からこういう文様を帯や着物として制作する事もあります。染額を元にする場合は、染額ほど重厚にはせず

フォリアの具象柄と抽象柄について

当工房で(フォリア工房)制作する染色品の作風は幅広いので「どのような制作姿勢だと、そのように幅広い作風を同時並行してそのレベルで作れるのか?」と良く訊かれるのですが、特別な事は何も無く「参照する古典自体が元々多様性を持っているので自然にそうなる」というのと「最新の創作物を分野を問わずチェックしておく事」ぐらいしか意図して行っていないので・・・誰でもやっている事しかしておりません。 技法的にも、95%が「糸目友禅と、ろうけつの併用」で制作しておりますので、特に変わった事はして