破壊王の爆破論から読み解く『アルマゲドン』
本日3月17日、金曜ロードショーにて『アルマゲドン』が放送される。『アルマゲドン』は大好きは映画なのだが、かなり評価が低い。そのギャップはなぜ生まれたのか、どのように観れば楽しめるのかを、私がマイケル・ベイ映画をどのように捉えているのか、なぜそこまで評価しているのかと併せて話していく。
■もう『アルマゲドン』のような映画は要らない?!
現代版アルマゲドンと言われ、高評価を受けたNetflix映画の『ドント・ルック・アップ』。ブルース・ウィルスのような地球を救う英雄がいないことをアイロニックに表現しており、その批評性が話題となった。そして「もうアルマゲドンは楽しめないかもしれない」という感想も散見された。
名作映画を1年間にわたって上映する午前十時の映画祭という特集上映の第12弾では、我らの『アルマゲドン』が映画祭初上映された。大阪の映画館は平日の朝にも関わらず、たくさんの人で賑わっていた。しかし、「当時観た時はもっと面白かった気がした…」「今観るとちょっとなぁ…」という声がチラホラ。
私は『アルマゲドン』をなんとなくは観たことはあったし、有名すぎて知っているシーンもたくさんあった。でも151分全てをしっかり観たのは午前十時の映画祭が初めてだった。しかし思い出補正も何もない状態で、非常に楽しく観た。
ロッテントマトも38%だ。
本当に『アルマゲドン』は駄作なのだろうか…。
■名作へのカウンターパンチ
『アルマゲドン』は宇宙飛行士の教材に使われている。映画内の科学的な誤りを指摘せよというもので、100以上ものミスが見つけられているという。『アポロ13』のように宇宙科学をリアルに再現はされていないどころか、天文学的数字でありえないことさえある。『ディープ・インパクト』のようなシリアスな雰囲気もない。だから"映画としての出来"という観点で考えてみると良くはないのかもしれない。
だが、映画としての出来が高くないのと面白くないのは訳が違う。破壊王は"リアル"よりも"面白さとカッコよさ"を優先して追求しているのだ。そもそも、リアルさを追求するだけでは良い映画は作れないと考えてる気すらしてくる。
なぜあんなにも爆破させるのか?
爽快だから!
なぜ格納庫で会議をするのか?
カッコ良いから!
なぜ英雄に地球を救わせるのか?
カッコ良いから!
例え現実味に欠けていたとしても、あれだけの爽快さを感じさせてくれる映画はそう多くない。「映画としての出来が良くない」と「映画として面白くない」、この2点はイコールでは繋げない、面白さとカッコ良さを追求すれば楽しめる!それが『アルマゲドン』の教えである。いわば『アポロ13』『ディープ・インパクト』へのカウンターパンチだ。
そもそも『ローマの休日』や『ゴッドファーザー』など、名だたる名作映画を集めて上映する「午前十時の映画祭」は、『アルマゲドン』が輝くことができる土俵ではないのだ。適材適所を考えていただきたい。
良い意味で"何も考えずに観ることができる映画"も必要だと考える。
今作のブルース・ウィルスのように地球を救うキャラクターは、いわゆる"スター俳優"にしか演じることはできない。今はもう、そういうことができる人がトム・クルーズしかいなくなってしまった。
■マイケル・ベイ監督とは…?
『アルマゲドン』単体の話はここまでにして、マイケル・ベイ映画について考えていく。
マイケル・ベイは…
1995年『バッドボーイズ』で初監督、1996年『ザ・ロック』、1998年『アルマゲドン』…とヒットメーカーになる。カーチェイスなどカッコ良く車を撮らせたら彼の右に出るものはいない。『トランスフォーマー』でMTVムービーアワード受賞。爆破シーンが印象的なことから「破壊王」と呼ばれている名監督だ。
■懐かしの「バカ洋画アクション」というジャンル
2022年は『トップガン/マーヴェリック』『RRR』が話題になった1年だった。懐かしさしえ感じる王道な展開ながら、魅せ方の上手さで映画館で映画観てる!という感覚を久しぶりに感じたと、大絶賛の嵐だった。その点に関して異論はない。私自身、2作品とも非常に楽しく観たし、大好きな映画だ。
引っかかったのは「久しぶりに」という言葉。『トップガン〜』は5月公開、『RRR』は9月公開。しかし3月には我らがマイケルベイ監督最新作『アンビュランス』という最高な映画があった。それにも関わらず、ほとんど話題になることもなくフェードアウトしていった。
『アンビュランス』は銀行強盗にジャックされた救急車がパトカーとカーチェイスする、というだけの映画。これがあり得ないくらい爆発する。ここまで爆破してくれたら、爽快すぎて観ていて清々しい。規模で比べると、『トップガン/マーヴェリック』の何倍も爆発している。
『ヒート』などの名作を破壊王なりに消化し、『ザ・ロック』など自身の作品もアップデートされていた。
なぜ一切話題になることなくフェードアウトしていったのか、客席が寂しかったのか、納得できない。『トップガン/マーヴェリック』『RRR』の爽快さが好きだった人たちに確実に刺さるものが破壊王の撮るものにあるはずなのに。
こういう映画が好き。
こういう映画を観たい。
こういう映画こそ映画館で観たい。
と、心からそう思っている。
映画好きからも下に見られがちなマイケルベイだが、彼はたった1人でそのような映画を撮り続けている。そして、私たちをずっと楽しませてくれている。
■結論、マイケル・ベイ映画とは…
名刺代わりの「爆破」はもちろん、
現代の映画に足りていない、私たちが忘れてしまった痛快なアクション描写、
何よりも爽快さとカッコ良さを最優先にして、
大きなスクリーンと音響が装備された"映画館という空間"を、最大限楽しむことができる要素を詰め込んだ
最高純度のエンターテイメント
なのである。
■マスターピース
やはり最高傑作は『ザ・ロック』…!
監督:マイケル・ベイ
制作:ジェリー・ブラッカイマー
主演:ショーン・コネリー、ニコラス・ケイジ、エド・ハリス
音楽:ハンス・ジマー
私が好きな人たちが好きなジャンルを作り上げてくれた。この座組みで失敗するはずもなく…。
初監督作品『バッドボーイズ』の後、30代前半で撮ったなんて凄すぎる。詳しくはまた別の記事で書きます。
■最後に…
誰に何を言われても一生マイケル・ベイを推すし、
アルマゲドン最高だと言い続ける!
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