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【名作】『海の上のピアニスト』4K修復オリジナル版&完全版 「感想」&「比較」

 巨匠ジュゼッペ・トルナトーレ、映画音楽の神エンニオ・モリコーネ。名作「ニュー・シネマ・パラダイス」を作り上げた二人が再タッグを組んで撮った『海の上のピアニスト』劇場公開から20年の時を経て4Kデジタル修復、3時間にも及ぶ完全版が日本初公開された。

そんなことが去年10月に会ったことは受験真っただ中だった私はもちろん知らなかった。同時期に公開され見逃してた「ようこそ映画音響の世界へ」の再上映をパルシネマしんこうえんに観に行ったときに同時上映で『海の上のピアニスト 完全版』を鑑賞。「ようこそ映画音響の世界へ」をメインで観に行ったし、もちろんとても良かった(また記事にするかもです)。でも『海の上のピアニスト』の音楽が頭から離れなかった。とにかく衝撃だった。数週間後、Cinema KOBEで『海の上のピアニスト オリジナル版』が公開されたので迷うことなく劇場へ。どちらも最高!だった。一度は見逃したこの名作を劇場で、しかも両バージョン観れたことを本当に幸せに思った。

【感想】海の上の奇跡に涙…

エンニオ・モリコーネの音楽、ティム・ロスの演技、ピンポイントでココ!っていうときりがないくらい、1秒1秒が名シーン。なので特に好きなところを書いていく。

■ピアノが奏でるEモリコーネの旋律

映画館の音響であの音楽を聴けたことが最高の体験。”映画は体験”ってよく言われるけど、その意味を身をもって理解した気がした。今作を劇場で観てよかった。生まれて初めて音楽を聴いただけで感動した。音楽的センスゼロ(というかマイナスたたき出すくらい壊滅的レベル)の私でも感動。CD欲しくなった!


■作品を彩るキャスト陣

▷主演ティム・ロス(1900役)

あとちょっと若くても老けてもダメ。あの時のティム・ロスではないとあの1900は演じれなかったと思う。一番脂がのっていた、その絶妙なタイミングでのキャスティング。1900には船で生まれ、生涯一度も下りなかったからこその独特さがある。天才的なピアノの技術とは裏腹に、世界を知らない純粋さもある。でも”自分”をしっかりと持っていて、自分の執念は絶対に曲げない。その愛されるべきキャラクターが良い。


▷メラニー・ティエリー(少女役)

彼女は今作で女優として注目を浴びることとなった。天才ピアニストの1900が唯一恋した女性で、1900の気持ちを揺さぶり、悩ませるというキーマンにほぼ無名だったメラニー・ティエリー起用したのがいい選択だった。中盤に少し出てくるだけで、名前もない。でも観終わったあともずっと記憶に残っている。この後もセザール賞の主演女優賞を受賞するも、目立った活躍は見せなかった。奇跡のキャスティングが生んだ名演技だ。


▷マックスとの関係

今作で一番好きなのはマックスと1900の関係、特に二人が出会うところ。船酔いで嘔吐しているマックスに声をかけ、ストッパーなしのピアノの椅子に一緒に座り、ガラスを割ったり、物壊したり…無茶苦茶にするところ。罰として石炭をくべる作業をさせられるのだが、夜通し一緒にいて船内を無茶苦茶にし同じ罰を受けたからか、すっかり仲良くなっている。そしてマックスは誰よりも1900のことを気にかけ、唯一無二の親友になっていく。1900が船を降りるといったとき、マックスが船を降りたとき、船が爆発されたとき、マックスは誰よりもさみしかったと思う。でも親友だからこそ受け入れた。3時間熱い友情を見せてくれた。

1900が存在しなかったといっても間違いではない。マックスは冒頭でそう言っていた。そして最後には船と運命を共にし、亡くなってしまう。でも本当に1900が亡くなるのはみんなから忘れられた時。亡くなった人はもう誰かの記憶でしか生きて行けない。だからこそ多くの人にこの映画を見てもらって、奇跡を語り継いでほしい。

【比較】オリジナル版&イタリア完全版
両方映画館で観てみて

映画館の上映スケジュール的に仕方のないことなのだが、先に完全版を見てしまったのが悔やまれる。完全版は3時間もある長編。観る前はちょっと抵抗を感じた。でもいざ見てみると、笑って泣いて感動したら3時間経っていた。濃厚な3時間だった。オリジナル版ももちろん良かった。でも比較するとやっぱり完全版には敵わなかった。このシーンはないんだ…って所々でなってしまった。

■最後に…

この映画は1998年に公開された。もう20年も前のことで私含めて若い世代の人たちはこの映画のこと知らない。去年の秋に4K修復されたオリジナル版と日本初上陸のイタリア完全版が公開されたが、コロナウイルスの影響で上映期間も短く、映画館に足を運んだ人も多くなかったと思う。もっと多くの人に知ってほしいし、観てほしい。音楽だけで泣ける映画に出会えることはよくあることじゃないから。

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