「風の歌を聴け」(村上春樹さん)を読んで

読書記録

③風の歌を聴け by村上春樹

今年6冊目の読了本。初読。

村上春樹さんの作品は数作品しか読んだことはない。だけど、私は感覚的に彼の作品が好きだ、と思う。断言できないのは数作品しか読んでいないから。だけど、私にとって彼の作品は、川の水が上から下に流れるように自然で滑らかなのだ。

この作品は村上春樹さんのデビュー作。不思議な構成だったけれど、とても読みやすかった。

印象的だった言葉

「ハートフィールドが良い文章についてこんな風に書いている。

『文章をかくという作業は、とりもなおさず自分と自分をとりまく事物との距離を確認することである。必要なものは感性ではなく、ものさしだ。』」(10頁)

書くことは自分の価値観を洗い出す作業なのかもしれない。感覚で書くことだってあるけれど、どう考えたのかを「ものさし」を使って知らず知らずのうちに書いているのだと思った。

「文明とは伝達である、と彼は言った。もし何かを表現できないなら、それは存在しないのも同じだ。いいかい、ゼロだ。」(30頁)

昔の人がどこでどんな暮らしをしていたのか、何を考えていたのかを伝える術があったからこそ、今私は「歴史」として知ることが出来ている。伝達することがなくなったら、伝わるものは何もない。すなわち文明が終わることだと妙に納得してしまった。いろいろな本を読むことが出来るのも、文明があったからこそなのだと思うと感謝🙌

「かつて誰もがクールに生きたいと考える時代があった。

高校の終り頃、僕は心に思うことの半分しか口に出すまいと決心した。理由は忘れたがその思いつきを、何年かにわたって僕は実行した。そしてある日、僕は自分が思っていることの半分しか語ることのできない人間になっていることを発見した。」(113頁)

自分が決めたことを実行することは、もしかしたら自分の可能性を狭めること、もしくは何かを選ぶ=捨てることなのかもしれない、とふと考えた。知らず知らずのうちに選択していることが、「私」という人間を形作っているのかもしれない。

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