Diet or Alive (Part.3)

いよいよこれから始まるんだと思うと
ドキドキが止まらない。
お姉さまとの練習の成果をちゃんと出せるだろうか。
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「雪乃、ダイエットって具体的にどういう状態を指す?」
「え、ええっと・・・痩せるために摂取するカロリーを減らしたりすることですか?」
「まあ間違いではないわ。でも例えば運動して痩せたり病気で痩せたりすることとの違いは何?」
「うーんと・・・あ、運動とか病気だとカロリーを摂っても消費されたり、身体に吸収されなかったり・・・つまり摂取するカロリーの量の違いですか?」
「現在の規制法で定義されているダイエットとは『ごく短期間に人為的に体脂肪を減少させる行為』とされているのよ。これまでの判例では短期間とは約1ヶ月から1年の範囲内とされているから、たとえば2年にわたって体脂肪が徐々に減少してもそれはダイエットとは見なされないようよ。」

「えー? じゃあ1年以上の期間で行えば、法に触れないってことですかぁ?」
「まあそうなんだけど、ここで問題とされるのが『人為的』の解釈なの。故意に摂取カロリー量が減らされたことが明らかだと、それは完全に『人為的』と見なされる。」
「でもっ! 摂る量を減らさないと体重減らすことなんてムリじゃないですかぁっ!?」
「そうなの。昔は体脂肪を手術で取り去るなんて野蛮な行為が行われてたようだけど、今は禁止されてるしね。だから摂取量を減らさずに体重を減らすには、運動して脂肪を燃焼させるか体内に吸収されないようにするかどちらかしか方法がないの。」
「でも運動したあとは消費した分のカロリーを半日以内に摂取しないとダイエット目的と見なされて検挙されちゃうんですよね?」
「そう、運動後に計量して減った分の体重の八割が半日後に回復していないと、すぐに検査官に目をつけられるわ。だから運動して体重を減らすことは出来るけれどすごく時間がかかるの。それではダイエットとは言えないわ。」

「たとえば体内に吸収する前に吐いちゃったり、胃に膜を作って吸収されにくくするのもダメなんですか?」
「それらは全て『人為的』と見なされてしまうわよ。(疾病による体重減少証明書)をもらうには医師の診断書が必要だから、一発で判ってしまう。それにそんな不自然な行為をすればDLC反応が体内に記録されてクフィーダ鑑定で隠せないのよ。」
「DLC反応って?」
「私たちが摂取したり体内に取り込んだ物質は全て体内のある場所にに記録が残っているの。脳はその記録を参照して抗体を作ったり不足しているモノを取り込むよう、うながしたりしているのよ。その記録を作成するプロセスがDLC反応。でクフィーダ鑑定法を使えばその記録が読めたりするの。」

「てことは、カロリー制限とかしたら・・・丸わかりってことぉ?!」
「そういうこと。おまけに私たちの体重って一日おきに報告しなきゃいけない義務があるから、それと比較すればヘンな体重変化はすぐ判ってしまう・・・。」
「アレって、体重報告って病気の早期発見とかが目的じゃなかったんですか?!」
「もちろん表向きはそれが目的。でもこういうことにも使われるのよ。」

「ひっどーーーい! もう体重報告なんてやめますっ!」
「一定期間報告がないと、何か身体に異常が出たときの医療費がとんでもなくかかるようになるわよ? おまけにホントに病気になっても症状が出ない場合はもう手遅れになってしまうこともあるから・・・。」
「うっ・・・報告はしないわけにはいかないんですね。」
「そう、だからダイエットなんて絶対ムリ・・・。」
「えええーーーーっ(涙)」
「・・・というのが常識だけど。でもね・・・」
「もしかして何か方法があるんですか? 裏道みたいな?!」
「・・・ふふふ。」
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「それでは雪乃さん? 質問を始めるけどよろしいかしら? この会話は記録されて裁判の証拠となるかもしれないことをあらかじめ警告しておくわね。」
「ハイ・・・あの・・・お願いがあるんですけどイイですか?」
「何かしら?」
「途中で分からないこととかあったら、わたしから質問してもイイですか?」
「もちろんよ。なんでも聞いてちょうだい。ただしこの検査の結果とか過程に関わる質問には答えられないものもあることを承知しておいてください。」
「あの、わたし、わたしも将来検査官・・・じゃなかったダイエット規制技能士になりたいんですけど、高根さんに個人的に質問とかしてイイですか? 」
「まあ・・・そうね。鑑定に影響しない範囲でなら答えてあげられるかもしれないわね。そろそろデータの解析結果が出てきたようよ。始めましょうか?」
「・・・ハイ。」

もしかしたらこの時、あたしの目って「キラッ☆」って
光ったかもしんない。

(続く)

2006年05月18日

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