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設定解除でゴーストランド


「あのさピコ、「水晶埋めろ」って、言ってる?なんか…定期的に、ちらちら、水晶!という文字が脳裏に浮かび上がるんだよ」

地底に棲む吸血鬼の夫ピコ「ようやく気づいたか」


「ずっと前にみた夢が、持ってる水晶を庭にどんどん埋めなきゃ危ない!みたいな内容で。何度も似た夢みるから他のガイドからのメッセージかなと思ってた」

ピコ
「そんな親切なメッセージをくれるのはいつもの天狗だな。あと君のハイヤーセルフとか…君の家にあるあの大量の水晶、庭に埋めた方が価値的だよ。土地がパワースポット化するし。室内に置いておくと、しょっちゅう浄化してても限界があるから」


「なんとかしなきゃとは思ってた」

ピコ
「じゃあすぐ埋めたまえ。これから未曾有の大災害が起こるぞと脅されてる時節だというのに…それにね、土地がパワースポット化すれば、泥棒にも遭いにくくなるから」


「そういえば某有名サイトの宅配業者が、うちの庭をなぜかぐるっと一周するということが何度かあってね。玄関手前にあるのに、なぜか庭の奥まで行って、回って、遠回りして車に戻ってくんだよ」

ピコ
「そらみろ。もうすでに怪しい気配じゃないか。僕や天狗、他のガイドも、君と家族のことを思って警告をしてるんだぞ」

(腕を組み、えらそうに見下ろしてくるピコ)


「わかったよ、埋めるよ。センサーの監視カメラ、これ以上消費したくないしね。ところで話変わるんだけど……」

ピコ「なんだい」


「ピコってさ、私が作業中とか、寝室にいるときとか、傍らに立ってるなあ、iPadの画面覗き込んでるなあ〜とか、はっきりわかるときがあるけど…それとは違って、脳の中で、単体で佇んでるあなたが視えるときがあるんだよ。あれはなんなの?」

ピコ
「わざわざ君のそばに行くほどじゃないんだけど、リモートビューイング的に意識を飛ばして、君の動向を見下ろしてるときは、そういうことになるかも」


「脳内で立ってるピコがむこう向いてるなーってときはじゃあ、私から気が逸れてるときってことかな」

ピコ
「そうだと思うよ。さいきん君がそういう細かなことに気がつき始めて、僕としては…非常に小賢しくなってきたなと思ってる。生意気」


「さらっと悪口いってる!生意気って…ひどくない!?」

ピコ
「君のくせに生意気だなーって、思うよほんと…君はいつもぼんやり、寝てるか覚醒してるか、大して差がない、変な生き物だったのに」

私「………」

ピコ
「君は黙って、僕やバビロニアにおちょくられていればいいんだ。今さらカテゴリ変更は許さない」

私「許可制なの!?」

ピコ「ふん」


「腹立たしい…いくらなんでも馬鹿にしすぎ!」

ピコ「だって馬鹿じゃん……(小声)」

私「………」

(ギッとピコを睨むと、突然ハグ&髪の毛をごしゃごしゃにしてくるのでグーパンで応戦)


「気を取りなおすのが難しいんだけど…さっきの続き」

ピコ「うん」


「突然脳裏に浮かぶことがあるわけ。海外の映画館前に佇む女性の吸血鬼や、メガネで歯抜けのおじさんの顔が、脳内で視えたりすることがある。あれはどう解釈したらいいの?自分の松果体が視てるんだなとはわかるんだけど。あれが現実的に、どこの場所にいて…とか、そういうのがわかるわけじゃないんだよね」

ピコ
「君は小さいころとてつもなく臆病だったからなあ〜。暗がりがとにかくダメで…だから、視えてるのに視ないようにする癖がついちゃってるよね。別に死霊なんか視なくてもいいんだけどさ」


「海外の映画館前に立ってる女性吸血鬼は、意識をあなたに飛ばしてて、私がそれを捉えたってこと?目があったんだよ」

ピコ
「ああ、そうかも。親しいというわけじゃないけど、知り合いの吸血鬼」


「メガネで歯抜けのおじさんは?顔のアップが出てきたの」

ピコ
通りすがりの死霊かな。寝てる君を覗きこんだんだろ。ほっとけばいい類だよ」


「どうして顔のアップだけなの?私が目をあけたとき、歯抜けおじさんが見下ろしてくる、全身含む姿が視えるとかのほうが、現実的に納得いくんだけど」

ピコ
「だからそこは、超怖がりだった君が昔、肉眼で死霊を見過ぎないようにと自分で設定しちゃったんだよ。モブみたいな死霊はまったく視えてなくて、わりと強めの意思や感情を持ってる存在だけをキャッチしてるの。それで一瞬のビジョンとして脳内に浮かび上がるわけだ。怖がりの君は今までそれを気にも止めず生きてきたけど、僕とのコンタクト開始で過敏になってるんだな。自覚するようになってきたんだよ。どうやら自分は視えてると認識し始めた」

私「えーっ、どうしたらいいのかなあ」

ピコ「君はどうしたいわけ?」


肉眼でピコたちを視れたらいいなあ…くらいに思うかな」

ピコ
「じゃあその設定を解除するしかないね。ただ解除しちゃうと、君の生活圏が、ゴーストランドに変わっちゃうから。覚悟して」

私「そ、それは…」

ピコ
「じゃあどうする?今まで通り脳内での知覚にとどめる?」

私「…………」

ここで会話を中断。
決断を迫られています。

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