見出し画像

水田の畦畔管理29 ~センチピードグラスを育苗する~

植生がリセットされたこの畦畔

画像1

自然の植生回復を待つのではなく、積極的に「緑」を植え付けていこう。

近くの畦畔からチガヤとか、その他のイネ科雑草をパクってきてもよいのだが(笑)、ここは一つ気合いを入れて、

を植え付けようと思う。

専門的にはこれを、

植被(しょくひ)

という。

メリットは、効果が定着すれば、畦畔管理が飛躍的に楽になること。
デメリットは、植被にはお金と労力がかかること、定着するまでに時間と管理を要すること。

・・といったところだ。
要は、最初のハードルが高いんである。

けど僕としては、経験値を獲得するためにいずれ通らねばならない道だから、トライして前に進もうと考えた。

僕には初の体験
ただ、作業的には、適期に1〜2ヶ月ほど遅いことをご報告しておく。

さて。
耐寒性とか耐暑性とか、水田畦畔に適用する芝については、性質の吟味が必要だ。で、今回は、実績のある

センチピードグラス(ムカデ芝)

を採用することとした。
で、それを品種改良した、「ティフ・ブレア」という商品を使う。

この商品は、耐寒性に優れ、肥料を必要とせず、何よりも、水田に侵入しない。水田に落ちた種も発芽しない。ここ、ポイントです。

画像2

ただ、500gで10,300円(税込)のプライスだから、まあ、なかなか・・(笑)

これを直接畦畔に播種するのは心もとない。
アリさんに持っていかれるかもしれない。
今回は安全側に振って、「育苗」することとした。

資料によると、200穴のセルトレイ育苗が良さそう。なので、ホムセンに走り、資材を調達した。

画像3

セルトレイ 98円(税込)
種まき培土【40リットル/12枚分】 998円(税込)
( ホームセンター コメリ価格)

この他、
セルトレイを受けるための水稲の育苗箱
培土を攪拌するための容器(写真は、一輪車のフネ)
種子の重量を図るためのはかり

なんかが必要となる。

午後半日で一気に仕上げてしまおう!(マジか・・)

まず、培土であるが・・

画像4

他の商品同様、これも、湿り気がほぼない。なので、水をくれてやって、適度な湿り気にもっていく。握って、ほろっと崩れるくらい。

セルに詰める前に湿らせる

これ、セルトレイ育苗の大事なところです。

画像5

やった感じ、ジョウロの半分強でちょうど良かった。
あと、ホムセンの外売り場に置かれていたせいか、培土自体がアッチッチ!このまま種をまいたら、危ない。

次に、セルトレイに培土を詰めていくわけだが・・

画像6

ギュウギュウ詰め込んではいけない

水はけが悪くなって、過湿で種子が死ぬ。なので、全体に培土を盛ったら、手でツライチにするだけ。その後、作業台の上で「トントン」して沈ませる。そうすると・・

画像7

こんなふうに、数ミリのクリアランスができるのだが、このクリアランスが水やりの際にいい働きをする。
これもポイントだ。

今回、種子の性質に従い、「覆土」は行わない。

次に種子を計量する。今回は、
2g/1セルトレイ
の播種量だ。

測るとこれくらいなんだが・・

画像8

毎回こんなことはやってられないので(笑)、体積に置き換える。
結果、

画像9

小さじ1/2
に決定。(笑)

あとはガンガン作業していく。
全部で60枚作ります。

ところでセルトレイだが、地面に直置きすると、根っこが底穴から出てきてしまう。なので、

トレイは地面から浮かすことが望ましい。

これを、「エアー・プルーニング」といいます。

セルの中で根っこがぐるぐる巻きになる。
これが正しい姿。

画像13

農家さんの納屋にある材料を使っての「えいやっ!」の作業だから(笑)、理想には今一つ届かない。正しくは、水平をとって、資材も均一なものを使いたいところ。

画像10

で、並んだ姿がこちら。

画像11

ひどい!(笑)

1本のタル木が豪快に曲がっているから、ま、しゃあない。
落ち着いたら手直ししよう。

一発目は、たっぷりと、十分に水をやる。

先ほどのクリアランスがあるから、種子が流れることもない。
かん水には、ソフトな「蓮口」上向きで使用しよう。

蓮口

この時、十分にかん水されたセルトレイの重さを覚えておく。
次回以降、これが乾いたかそうでないかの目安となる。

ところで、センチピードグラスは発芽に光を必要とする「好光性種子」だ。だから覆土も控えるのだが、一方で

セルはすごく乾きやすい。

発芽のため割れた種子が乾燥状態になれば、たちまち枯死してしまう。

このため、セルトレイを濡れた新聞紙で覆い、乾燥を防ぐ

そして、発芽を確認したら、新聞紙は速やかに取り除く。

画像12

外でやる場合、このあたりが難しいところなんですね。

今回僕は、このセルトレイを、屋敷林の林床に設置した。光は当たるけど、ギンギラギンにはならないロケーション。
新聞紙を取り除いた後でも、直射日光で苗が焼けないよう、また、セルが乾燥しないような配慮を行った・・ということだ。

何日くらいで発芽してくるのか?
何%くらい発芽するのか?
その後の生育はどんな感じなのか?

全てが未知。

最初の1週間が、肝なのである。
雨に打たれ、風に吹かれながら・・





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?