見出し画像

今日の参拝72 ~春の正式参拝~

4月29日。

いよいよ時間である。
僕はいつものように御神酒と米を巫女さんに預け、昇殿する。

誰もいない拝殿で、しばし、静寂の時。

「お待たせしました。」
宮司さんがおいでになる。
僕の、春の正式参拝が始まった。

正式参拝においては、参拝者は、祝詞が奏上される間に、自分の思いを神に伝えることになる。
だが、祝詞を聞いていると、これがなかなか難しいのですね。聞いている間にその時間が終わってしまったりする。(笑)

この日僕は、3日から始まる草刈りの報告とともに、ある一つのことを神にお話しした。

それは何か?

正式参拝自体は滞りなく終了したのだけれど、「それ」について意見を求めたくて、僕は宮司さんに問うてみた。

「宮司さん、実は、思うことがあるのですが、お話を聞いていただくことは出来ますか?」

「いいですよ。では、社務所のほうへどうぞ。座敷に上がって待っていてください。」

「ありがとうございます。境内をぐるっとお参りしてから伺います。」

「了解しました。ごゆっくり。」

良かった。
まずは境内社と御神木にご挨拶しないとね。

招福稲荷神社。
作業が進んでいた「狛狐」さんの更新、無事に終わったようだ。
なんともまあ、愛らしいお姿にイメチェンされている。(笑)
良かったですねえ・・

来月は例祭です。
右は黒い狛狐さん ♪
左は白い狛狐さん ♪♪

右から秋葉社、熱田社、金刀比羅社。
お稲荷さんの右脇にある。

御神木。
一体、何枚の葉が付いているのだろう?
すさまじい命の息吹。

子安神社。
コノハナサクヤ姫、お元気ですか?
「狛獅子」さんはお変わりなさそう。

・・これでひと回り。
さてと。
足早に、僕は社務所に向かう。

傘をたたみ、お茶と茶菓子をいただきながら、軽く雑談の後、僕は宮司さんに本題を話し始める。

「前から申していたことですが、いよいよ私、今年度をもってカイシャを早期退職し、草刈りなど、農家さんを助ける仕事を始めます。」

「そもそも私がこちらの神社にお参りするようになったのは、ご祭神のハニヤスヒメが、土と堤防鎮護の神であり、その土と堤防、というイメージが、田んぼの”畦”のイメージと重なったからです。」

「ですので、田んぼの畦が守られるよう、私が畦でケガなどしないよう、お祈りをさせていただいたわけです。・・これまでは。」

「これまでは?」

「はい。どういうことかと申しますと、これがご相談なのですが・・」

「ええ。」

「実は私、この春から、”粗放的有機農業”なるものを始めます。まあ平たく言えば、肥料も農薬もやらず、耕しもしないという形なんですけれど(笑)、この場合、”土”というのが、大変重要な要素になるわけです。」

「なるほど。」

「で、そのことを考えていた時、ふと、ハニヤスヒメが、

農業の神


って思えまして・・」

「ほう。」
宮司さんの顔が変わる。

「はい。で今回、ハニヤスヒメに、”今日からは、農業の神としても崇敬させていただきます”とお伝えしました。・・宮司さんはいかが思われますか?」

僕の話を聞いておられた宮司さんは、次のようにお答えになった。

「大変いいと思います。」

話は続く。

「私自身、土というのは、”命の源”だと思っています。ハニヤスヒメで”土”というと、何か、焼き物を作る”粘土”のイメージと思われますが、そうではなくて。」

「はい。」

「ですから私としても、

我が意を得たり


という感じです。」

なんと・・・宮司さんと意気投合したのである!
午前の平和祈願祭での、責任役員の会長さんとの一件といい、思いもよらぬ結果に、心が揺さぶられる気がした。

よく言う。
神には身体がない。だから、「人」を通じて言葉を下ろす・・と。
おこがましいけれど、今回僕は、このことを感じずにはいられなかった。
いつもは厳しいハニヤスヒメが、今回は微笑んでくれたということか。

雨はずっと降り続いていたが、ここ数日の間で今日だけが雨。
宮司さん曰く、これは清めの雨であり、恵みの雨であるという。

そのお言葉を大事に胸にしまい、僕は堤治神社を後にした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?