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オリンピックに奪われた「終の住処」

しばらく映画館行きを我慢していましたが、この前見たかった映画を見逃して
激しく後悔したので、
行きつけの映画館で今週上映が終わる映画を
思い切って見に行ってきました。 

映画「東京オリンピック2017 都営霞ケ丘アパート」
はオリンピックに伴う再開発のために
解体される霞ケ丘アパートを
去ることを余儀なくされた住人たちの様子を
淡々と追って行きます。

もともと、1964年の東京オリンピックの前に
国立競技場周辺が整備され、
長屋などが解体されて建設されたのが
都営霞ケ丘アパートでした。

(つまり、この時もオリンピックのために
それまでの住まいからの立ち退きを迫られた
人たちがいたのです) 

10棟・300世帯が暮らす都営霞ケ丘アパートは、
そこだけで1つのコミュニティになっていました。 

次第に住民の高齢化は進みましたが、
住民たちはこのアパートをふるさとのように思い
お互いに助け合いながら暮らしていたのです。

それなのに、2012年になって、
東京都から一方的な移転要請が。

詳細を書くと長くなるので省略しますが、
東京都は一度も住民の意見をきちんと聞く場を
設けないまま、移転を
「国策により決まったこと」
として推進します。

若い人たちなど、
早期に移転要請に応じて引越す人もいましたが、
単身の高齢者や、障害や病気がある方、
経済的に余裕がない方などにとっては
移転は簡単なことではありません。

「このアパートだから安心して暮らせた、
引っ越したくない」
「引っ越したくてもできない」
と移転に反対する方たちもたくさんいたのです。

東京都の一方的なやり方に
納得できない方達がいたのも当然のことでした。 

それでも、2017年にはこのアパートは
住民すべてが退去し、
全棟解体されたのです。

この映画ではそのような経緯とともに、
このアパートを離れる前の住人たちの暮らしが
静かに描かれるのですが、
わたしにも高齢の両親がいるので、
見ていて胸が痛みました。

慣れ親しんだご近所さんとの
「ほら、あそこの朝顔があんなに綺麗に咲いて」
などという話も、
それぞれの場所に引っ越していったら、
もうできないのです。

アパートの中には昔ながらの
小さなスーパーがあるのですが、
やはり足が不自由な方、
重いものを持つのが大変な方もいるので、
店主夫妻が品物を届けることもあります。

そして、品物を届ける時は配達するだけでなく、
お客さんの家族の話を聞いて
励ましてあげたりもしているのです。

本当に、ここの人たちはお互いに
助け合って暮らしていたのです。
そして、引っ越し自体も、
70−90代の高齢者にはそれも大仕事です。

おばあちゃん二人で
エアコンの室外機を動かしているところなど、
見ていて手伝いに行きたくなりました。

住人の中には障害のある方もいますが、
移転にも特別配慮はまるでなく、
全て一人で手配しなくてはいけないのです。

東京都からは移転料として17万円余りが
支払われることになっていましたが、
それは前払いではなく、
支払いは引越完了確認後。

たとえ一時的にでも
高額な引越費用を立替払いすることは、
経済的に余裕のない方にとっては
大きな負担になったのでは。

また、特別な配慮が必要な方へのサポートも
なかったのです。 

長くなりましたので、続きはまた次回に。

今回も最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。 

*今回の上映後は青山真也監督の
舞台挨拶がありました。 

また、この映画にも登場する
「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」
共同代表の建築家、大橋智子さんも
お話を聞かせてくださいました。 

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