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マジックアワーに楽しむコンスタブル展

昨年はいくつか英国の美術館展が
東京で開催され、
懐かしく鑑賞いたしました。

今年もずっと気になっていたのに
コロナの状態があって
なかなか行けていなかったのが
東京駅近くの三菱一号館美術館で開催中の
「テート美術館所蔵 コンスタブル展」。

ジョン・コンスタブル(1776-1837年)は
ターナー(1775-1851年)と同時代に活躍した、
19世紀の英国を代表する風景画家です。

今回の展覧会は日本でコンスタブルの作品を
まとめてみられる機会とあって
楽しみにしていました。

緊急事態宣言が開けるのを待って
チケットを予約したのですが、
その後、あまり日をおかずして
蔓延防止措置が・・・。

でも、せっかくチケットを予約していたので
見逃さないうちに出かけることに。

今日わたしが使ったチケットは
「マジックアワーチケット」。

月に1回、第3水曜日の夜間は
開館時間が延長され、
17時以降に限って
通常の入場券よりも30%OFFくらいで
入場できるチケットなのです。
(ただし事前に時間指定チケットを購入)

わたしは休日の混雑は避けたいので
今回初めてこのチケットを利用しました。

平日でしたし、雨の予報も出ていたので
空いているかな?と思いきや
お仕事帰りなどに立ち寄りやすい
時間帯だからか、思っていたよりは
お客様が着ていました。

と行っても、ゆっくり絵が見られる状態。

1枚1枚の作品をじっくり楽しむことが
できました。

コンスタブルといえば
風景画家の印象がありますが、
やはり肖像画は(写真のない時代のことでもあり)
需要があり、画家の収入にも直結するので
彼の描いた肖像画も見られたのは
意外な嬉しさ✨

ご本人のご家族の肖像画は
家族への愛や尊敬も感じられる
あたたかいものでした(^^)

また、同時代の画家の作品や
英国大先輩、ゲインズバラの作品も。

ゲインズバラの作品は1点だけでしたが、
様々な植物の描きわけ
(それぞれの植物の葉や幹の質感も)
も素晴らしく、さすがの貫禄でした。 

また、コンスタブルは
気象にも詳しかったと言われ、
作品の裏側には
描いた日付や時刻、風向きまで
書いていたと言います。
 
だからこそ、コンスタブルの作品を見ると
英国の風景を見るだけでなく、
垂れ込めた空の雰囲気や
ちょっと湿度の高い空気までが
感じられる気持ちになるのでしょうね。

今回展示されていた雲の習作は
そんな観察者の視線で
どんどん形を変えて行く雲を
ふっと捉えているような作品なのですが
手を伸ばせば届きそうな雲を
いつまでも眺めていたい気持ちに
なりました。

わたしが好きな
ソールズベリ大聖堂を描いた
「草地から望むソールズベリー大聖堂」
はスケッチのみの出展で残念でしたが、
そんな気持ちも吹き飛ぶくらい、
今回の展示には大目玉の作品があったのです。

それは、コンスタブルの作品
「ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)」
が、ターナーの作品
「ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号」
と並んで展示されること。

実はこの2作品、
1832年のロイヤル・アカデミー夏季展に
並んで出品されていた作品。

二作品がそろうのは1832年の展示を除くと
今回が3回目で、
ロンドン以外では初めての展示なのだとか。

コンスタブルの
「ウォータールー橋の開通式」は
いかにも「ロイヤル・アカデミー展出展作」
というような、絢爛豪華な大きな作品です。

飾らない風景を描く作品が多い
コンスタブルの中では
異色といってもいいかもしれません。

それに対してターナーの作品は
空から海と帆船にさしかける光が美しい
すっきりとした作品なのですが、
コンスタブルの作品と比べると
サイズ自体も小さく、
印象が薄いのです。

美術館のホームページによると
「ターナーは寒色の銀色がかった自身の海景画が、
燃えるような色彩を散りばめた
コンスタブルの大型作品の隣に配されたことを知り
「ヴァーニシング・デー(最終仕上げの日)」
と呼ばれる手直しの期間に、
《ヘレヴーツリュイス》の右下方に
鮮やかな赤色の塊を描き加えてブイの形に仕立て上げ、
一気に観客の視線を自作に引きつけようと画策したのです。
後日コンスタブルは、
『ターナーはここにやってきて、銃をぶっ放していったよ』
とこぼしたと伝えられます。」 

実際にターナーの絵の赤いブイを
手で隠して見てみましたが、
そのブイがあるかどうかで
絵の印象が変わります。

しかも、赤といえば
コンスタブルがいつも上手に使う色。

彼は人物の帽子や花の色に
少しだけ赤を使って
作品に生気を与えるのが得意なのですが、
この時はターナーが
うまく赤を使ったのです。

その2作品が並んでいるのを
見られるのはとても貴重なことですし、
ターナーのこの作品を所蔵するのが
東京富士美術館だからこそ
今回のこの特別な展示も実現したのですよね。

日本にいながら
英国の空気に再会したような
しあわせなひと時でした。

この展覧会は5月30日(日)まで開催されています。

お好きな方は、見逃さないうちにどうぞ。

今回も最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

*「芸術新潮」3月号の特集は
英国絵画史でした。

コンスタブルとターナーの
生涯と作品について取り上げられたページもあり
興味深く読みました。

もう書店には並んでいませんが、
バックナンバーはまだ取り寄せ可能です。

*電子書籍新刊
「1997〜英国で1年暮らしてみれば〜Vol.5」
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