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UXデザイナーがビジネスの現場で「考えていること。」 調査設計 - 後編

こんにちは。 株式会社メンバーズ UXデザイナーの酒井です。

この記事では、UXデザインの考え方を用いたプロジェクトで、実際にどのように考えてプロジェクトを進めていっているか、どのようにUXデザインのアクティビティを実践しているかといった「UXデザイナーがビジネスの現場で考えていること。」(=現場でのUXデザインの実践方法)についてお話ししていきたいと思います!

UXデザインの「調査設計フェーズで考えていること。」の後編です。

前回は、調査設計フェーズの目的と「考えていること1:プロジェクトの状況/目的/ゴールを正しく把握する。」についてお話しました。

今回は、
考えていること2:調査で「明らかにしたいこと」を明確にする。
考えていること3:コストや期間なども踏まえて、最適な調査手法を検討する。
について、お話していきたいと思います。


考えていること2
調査で「明らかにしたいこと」を明確にする。

プロジェクトが調査に期待していることがわかったので、次はその調査の中で何を明らかにしたいのかを明確にしていきます。

「明らかにしたいこと」とは、調査の中で「何に対する解像度が上がれば」調査の目的を果たすことができ、プロジェクトを前に進めるための良いインプットとなるか。ということを言語化したものなんじゃないかなと思っています。

調査で「明らかにしたいこと」の書き方(例)

前回の記事のUXデザイナー/リサーチャーへの“依頼”の例で例えると…

依頼
「ユーザーのインサイトを明らかにしたい」

真の目的
便利にサービスを使ってくれているが、特定の機能しか利用されていないので、利用している“ユーザーのインサイトを明らかに”して、サービスの<ユーザー>から<ファン>になってもらうための施策や機能を考えたい。

明らかにしたいこと

ユーザーはサービスのどんなところが良い/好きだと思って利用してくれているのかを明らかにする。また、ユーザーが<ファン>に近い感覚として使っている他のサービスは何かを知り、そのサービスの良いところ/好きなところを知ることで、ユーザーのサービスに対する価値観を知る。

依頼
「カスタマージャーニーマップを作ってユーザーの行動を可視化したい」

真の目的
“カスタマージャーニーマップを作成し、ユーザーの行動を可視化”して、ユーザーとの新たなタッチポイントを設計し、現状の施策とは別のアプローチの施策を考えたい。

明らかにしたいこと
ユーザーが日常のどんなタイミング、どんな状況、どんな手段で商品/サービスに触れているのかを知り、ユーザーの商品/サービスとの関わり方を明らかにする。

依頼
「ユーザーのサービス利用の現状を知りたい」

真の目的
“ユーザーのサービス利用の現状を知って”、サービス利用時における課題を洗い出したい。課題を把握し、ユーザーにとっての重要度の高いものから改修していきたい。

明らかにしたいこと
サービス利用時にどこに使いづらさがあるのか/どんなふうにうまく使えていないのかを知る。また、ユーザーのサービス利用の前後の状況を詳細に知ることによって、ユーザーにとってのサービスの利用位置づけとユーザー体験における課題を明らかにする。

と、いった感じになるかなと思います。
(空想で書いているので、何を想定しているんだろう?というところもあるかもですが……)

このように「明らかにしたいこと」とは、調査目的を果たすためには、調査で何を中心に知りたい(解像度を上げたい)か、を明確に記載したものです。

「明らかにしたいこと」を明文化するときはこのようなことを意識しています。

「明らかにしたいこと」を考えるときのポイント

良くない「明らかにしたいこと」の書き方

明らかにしたいこと:「サービスの<ファン>の方のユーザーインサイトを明らかにする。」
✕ 「インサイト」が何を指しているのか、わからない / 曖昧な状態
✕ 何を聞けば「インサイトが明らかに」なったことになるのかが、わからない / 曖昧な状態

良い「明らかにしたいこと」の書き方

明らかにしたいこと:ユーザーはサービスのどんなところが良い/好きだと思って利用してくれているのかを明らかにする。また、ユーザーが<ファン>に近い感覚として使っている他のサービスは何かを知り、そのサービスの良いところ/好きなところを知ることで、ユーザーのサービスに対する価値観を知る。」
 何を明らかにしたいかが、明確にわかる状態 / 見た人によって解釈に違いが生まれない状態
◎ 「インサイト」を明らかにするためには、どんな要素がどのようにわかれば良いかが明確になっている状態

「明らかにしたいこと」をちゃんと考えることによる、いいこと

「明らかにしたいこと」を明確にすることによって、こんないいことがあると思っています。

具体的にどんな調査手法を取るべきかということが考えやすくなる。
・デプスインタビューなどを実施する際はインタビュアーが常にここの「明らかにしたいこと」を念頭に置いておくことができるようになるので、インフォーマントの話を「明らかにしたいこと」に応じて広げたり深堀りしたりすることができる。
・調査の目的がより明確になるのでプロジェクトメンバー内で共通の認識を持つことができる。

といったような良いことがいくつもあるんじゃないかなと思っています。

考えていること3
コストや期間なども踏まえて、最適な調査手法を検討する。

プロジェクトの状況/目的や「明らかにしたいこと」を明確にしたら、いよいよどの調査手法で実施するかの検討をします。

プロジェクトの状況/目的や「明らかにしたいこと」を明確にしたら、どの調査手法で実施するかの検討をします。最適な調査手法を検討するにあたって考えることは「プロジェクトの制約のなかで、プロジェクトにとって最も意味がありユーザーのことを最もよく理解できる手法は何か考える。」ということです。

プロジェクトの制約のなかで、プロジェクトにとって最も意味がありユーザーのことを最もよく理解できる手法は何か考える。

調査の手法は、ざっくり言うとこのような手法があります。

・定量調査
・社内/クライアント担当者へのヒアリング
・操作ログ/アクセスデータ調査
・定性調査(デプスインタビュー/エスノグラフィ/日記調査) etc…

手法によってどんなことを知ることが得意なのかが変わってきます。また掛かる期間やコストもそれぞれです。

最初にも書いた通り、調査設計で重要なことは「プロジェクトを前に進めるために必要なインプットをつくる」という観点を持って調査を計画するということです。

ユーザー調査と分析に3ヶ月かけた後、ペルソナやCJMを作ったが、もうその頃にはプロジェクトは施策検討に入っていて、ユーザー調査の活動結果を活用しづらくなってしまっていた。みたいになってしまっては元も子もありません。
プロジェクトの状態・目的・ゴールやスケジュール・コスト・リソースといった制約を鑑み、いまプロジェクトで必要とされることにフォーカスして調査を設計することが必要です。

UXデザインの視点に立つと、「ユーザーを知る」ためにはインタビューやエスノグラフィといったユーザーから直接情報を得る方法をとる必要がありますが、プロジェクトの状況を判断し、仮でもいいのでクイックにユーザー像や課題/価値観/行動を整理することが重要であれば、デスクトップサーチやプロジェクトメンバー内にユーザーに近しい人をベースにユーザー理解を進めるという方法も良いと思います。(ただし、「仮」のものであるということは忘れない。)

このように、UXデザインの考え方を理解しつつ、プロジェクトに最適な方法を検討し、実行していくということが、調査設計においては重要だと思っています。

以上、2つの記事に渡り、ビジネス現場で実践する中で考えていることを詳細にお話したので、少し長くなりましたが、調査設計の考え方と考えるポイント、具体的な進め方についてのお話でした!

最後まで読んでいただいてありがとうございましたー!

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