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【小説】私があなたに!

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自作小説、私があなたに!になります。 >あらすじ 女子高へ入学した風間 美桜(かざま みお)は、同じクラスで勉強もできて友達も多い青井 日和(あおい ひより)が嫌い。ただ、どう…
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#小説

【小説:私があなたに!】23.友達

 風間 美桜。自分勝手な理由で私を嫌いになって、そして自分勝手な理由で私を嫌いじゃなくなって、そして自分勝手な理由で私と友達になりたいと言う。  そして私は『絶対』が無い友人関係に失望して友達と距離を置いたにもかかわらず、それでもどこかで、友達ともっと仲良くなりたいと願っている。 「ねぇ、突然、嫌いになってもいいの?」 「いい」    風間さんは、まっすぐに私の目をみて答える。  そんな姿がたまらなく眩しく、こっちが目を背けたくなってしまう。 「私、自分が『こうだ』って思

【小説:私があなたに!】22.日和と美桜

(よかった…………)   「ありがとう」って言ってくれた時の風間さんは笑った顔ではなかったけど、緊張が取れた優しい顔で、すごく、すっごく可愛かった。  これから彼女と仲良くなれるかもしれない。そんな期待で私もすごく嬉しかった。  なのに………………。   「青井はなんでそんなに優しいのに、普段友達と距離を置くの?」    こんなことを聞いてきた。 「私の勘違いだったら本当にごめん。だけど、私、青井のことずっと見てた。その時に思った。青井、本当の気持ちとかを友達に言ってない

【小説:私があなたに!】21.美桜と日和②

 いきなり青井に話しかけられたときは本当に驚いたけど、最大の難関と思っていた二人で話せる時間の確保できたのは本当によかった。  なぜ、彼女の方から話しかけてくれたのかは、分からなかったけど。      手紙は昼休みに渡したと、ちひろから教えてもらった。  青井はその場で読んで少し驚いていたみたいだけど「わかった。ありがとう」と言っていたらしい。    久しぶりの学校は、授業の内容がかなり進んでいて、まっくついていけず、取り戻すためには相応に頑張らなくてはならない事実を突きつ

【小説:私があなたに!】20.ちひろ

 手紙を私に預けたみおは、心底安心したような様子だった。   (あー、かわいいなー)    青井さんの件に限らず、みおは高校に入ってからは全然余裕が無い様子だったけど、先日私の家に泊まった後は、憑き物が落ちたように柔らかい表情をするようになった。  良い変化なのだと思う。  私は私で、みおの力になれたのが嬉しかったし、何よりもみおが、みおらしく笑ってくれるがたまらなく嬉しかった。  校門をくぐったあたりから、明らかにみおが緊張しているのがわかる。  ぎゅっと学校指定のバック

【小説:私があなたに!】19.美桜と日和①

  ちひろの家から戻ったが、不思議と母親からも父親からも何も言われず、ただ「どこかに行くときは連絡しなさい」という注意を受けただけで終わった。  ちひろ母のおかげかもしれないが、逆に何をしたらこうなるのだろう。  あっけにとらわれるほどあっさりと日常に戻った。    いや、日常というにはおかしい。  学校に行って、初めて私の日常が戻ったと言えるのだろう。   (大丈夫かな…………)  友達もいないし、学校だって図書室意外に自分の居場所があったわけではない。  教室に私がい

【小説:私があなたに!】18.風間さん

 ただ、風間さんだ。    なぜ彼女は、ここまで私に執着するのだろうか。    もう1つ、分からないことがある。  私はなぜ彼女の笑った顔がみたいなどと思ったのだろう。  そんなこと、最近は友達相手に思うことはなかった。   「ふむ…………何かおかしい」    うすうす気づいていたが、気づかないフリをしていた。  どんなことになるか、分からないから。    自分にルールを課してから、自分から友達を作ろうと思ったことは一度もない。  その必要を感じなかったし、そもそも仲良くなる

【小説:私があなたに!】17.青井 日和②

「日和ちゃんは、なんでも自分の思い通りになると思ってる!」   (あぁ、これは夢だ)    同じ夢を今まで何回見ただろう。  繰り返し、繰り返しみた過去の情景。  あまりにもたくさん見たせいで、最近はこれは夢だとすぐに気がつくようになっていた。  ただ、夢の中でも、その時感じた言いようのないショックを毎回鮮明に感じてしまう。  夢だと気付けるのなら、夢の内容を少しでも変えることができればいいのに…………。 「…………っツ」    そして、あの夢から目覚めるときもいつも一緒

【小説:私があなたに!】閑話三.隠していること

「友達になれたらいいね」    私はみおちゃんにそう伝えるのが精一杯だった。  大好きなみおちゃんが傷ついていることへの苛立ちから感情が抑えられず、元凶の1つのみおちゃんのお母さんを責めてしまった。    私は、みおちゃんが好きだ。  おそらく友達としての好きという気持ち以上に…………。    ただ、それはみおちゃんに伝えることはしない。  私じゃみおちゃんを幸せにすることはできないから。  だったら、そんな気持ちは伝えない方がいいと思う。    男の子が好きとか、女の子が

【小説:私があなたに!】16.ちひろと美桜

「えっとね。みおは本当に不器用。不器用だけど、とっても優しいってことを私は知ってる。そして、逆にこれは今まで知らなかったこと」   「みおが学校に来なくなっちゃって、それで、何度かみおの家にも行って、みおのお母さんと話した。ただ…………本当に失礼なことを言っちゃうけど、ごめんね。私、私、みおのお母さん、嫌い。みおのお母さん、みおのことを心配していていたけど、自分のことばっかり考えてたし、みおのこと、何も分かってなかった。『ご近所から恥ずかしい目で見られちゃう』とか『学校に迷惑

【小説:私があなたに!】15.決意

「…………うぅん」   (……ここ……どこ?)   「みお、起きた? おはよう!」 「……なんで、ちひろ…………あっ、お、おはよう。ちひろ。そっか、昨日ちひろの家に泊まって……」 「ゆっくり寝られたみたいだね。よかった。布団いつもと違ったから、どこか痛いところない?」 「うーん。大丈夫かな。今何時?」 「お昼の1時を回ったところ」 「そっかー。って、いちじぃぃ?」 「そうだよー。朝、軽く起こしたんだけど、みお、また寝ちゃったから。よっぽど疲れてるんだと思って、いっそのこと目

【小説:私があなたに!】閑話ニ.ちひろの思い

(……みお、寝ちゃった。本当に大変だったんだね。もう大丈夫だから、一緒に解決していこ)    素人目にみても、みおはボロボロだった。  よっぽど精神的に疲弊していたのだろう。  私に会ってからもみおはたくさん泣いていた。  今はその限界がきたのだと思う。  みおは「おやすみ」と呟くと、すぐに寝入ってしまった。   (少しは助けになれたかな)    私はみおが好き。  だから、みおを傷つけることの全てが嫌い。    穏やかな寝息を立てるみおにそっと近づく。  本当にこのところ

【小説:私があなたに!】14.エスケープ

 家を出るとき、メモをリビングに残しておいた。  色々と書く時間がなかったので、今まで学校を休んでしまったことに対しての謝罪と、悩みを聞いてもらいにちひろの家にいくこと。  そして、ちひろから教えてもらった、ちひろの家の住所と電話番号も記載した。  迷惑をかける可能性があるから書きたくなかったけど、そこはちひろがどうしても譲らなかった。  メモの宛名は…………書かなかった。  ちひろの家までは歩いて10分くらい。  先ほどまでの気恥ずかしさを察してか、ちひろが少し先を歩い

【小説:私があなたに!】13.どん底

「美桜、今日も学校行かないの? いい加減にして」   (……うるさいな)   「何が気に入らないの? 今日でもう何日になると思ってるの?」   (……うるさい)   「お母さん、先生になんて言ったらいいのよ。まったく、何でこんなことになっちゃったの」  休み初めはうるさく言ってきた母親も、休みが続くにつれ、最近は話しかけてこなくなった。  学校を休んでいるからと言って、何かが楽になるとか、吹っ切れるとか、そのようなことは一切なかった。  芽生える感情は、このまま私はどうな

【小説:私があなたに!】12.日和への美桜の思い

  私はなんなのだろう。    青井 日和が嫌いだった。  ただそれは、嫌うことで自分の精神を安定させていただけだった。  自分が正しいのだと。      こんな私には絶対にならないはずだった。    私は、親にも迷惑をかけることが少ない手のかからない子供だったと思う。    必死に努力した結果だけど勉強もできたし、昔は今よりも友達も多かった。  ただ、私は何をしたかったのだろう。  私の意思はそこにあったのだろうか。    子供の頃の思い出は正直に言ってあまり良いものがない