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舞台「ヒストリーボーイズ」とウルサマ スペシャルナイト✨

「ヒストリーボーイズ」
 作 : アラン・ベネット
 翻訳 : 常田景子
 演出 : 松森望宏

 主催 : CEDAR     MAパブリッシング


東池袋あうるすぽっとにて


2024年7月20日(土)〜7月28日(日)全13公演、
暑い暑い真夏の開催、お疲れさまでした。
……いい作品でした! もう、あの日の舞台は戻らないのだなと思うと、とてもさみしくせつない、です。

開場中、正面のスクリーンに用語解説が映し出され知識を蓄えることができるのですが、このスクリーンが舞台上のカメラ映像を写す方法で、終始効果的に奥行きを広げています。

あらすじを公式サイトからお借りいたします🙏

イギリスの進学校でオックスフォード大学やケンブリッジ大学の歴史学科を目指す8人の男子高校生。

 英語と一般教養の授業を担当するベテラン教師ヘクター(石川禅)は受験にはあまり役にたたない文化や芸術について教え、歴史を担当する女性教師リントット(増子倭文江)は堅実だが今ひとつ合格には結びつかないオーソドックスな授業をおこなっていた。

 学校として進学実績を上げたい校長(長谷川初範)は、オックスフォード大学に通っていた若い教師アーウィン(新木宏典)を新たに雇う。彼は受験に有効な斬新な授業をおこなっていく。

 ハンサムで頭がよく、リーダー的存在のデイキン(片岡千之助)。ユダヤ人で自分がゲイであることに悩んでいるポズナー(小西成弥)。敬虔なクリスチャンで作家志望のスクリップス(定本楓馬)。スポーツは得意だが勉強では周りに追いつけないラッジ(國島直希)。ユーモアがあり、ヘクターの授業を楽しんでいるティムズ(白又敦)。イスラム教徒で、建築に興味があるアクタール(納谷健)。独自の視点で鋭い意見を言うロックウッド(前嶋曜)。趣味で演劇に興味があるクラウザー(小田龍哉)。

 生徒たちはアーウィンとヘクター、相反する考えを持つ二人の教師の間で揺れ動きながら、大学合格を目指していく。

さらに解説には、

個性豊かな男子高校生たちの葛藤と成長、教師との対立などをユーモアたっぷりに描く中で、現代日本にも通じる、真の教育とはなにか、そして豊かな人間とは…を鋭く浮き彫りにした作品です

と書かれています。

時代は1980年代のイギリス・シェフィールド、イギリスの教育課程がかなり日本とは違うようですが、公演プログラムの増田珠子教授の寄稿がとてもわかりやすく、グッと物語を身近にしてくれるので、勝手ながら転載させていただきます🙏

「8人は義務教育を修了したあと、シックスフォームと呼ばれる2年間の過程に進学し、大学入学に直結する Aレベルという全国テストを受けている。芝居は、彼らがAレベルで好成績を納めたあと、英国一の難関大学オックスフォードかケンブリッジ合格を目指して小論文と面接対策のために学校に戻ってきたところからスタートする。(現在はAレベル受験後にまたシックスフォームで授業を受けることはないが、1980年代を舞台とし、また作者ベネット自身の1950年代の経験も反映しているため、このあたりは今日の英国の大学受験制度と異なっている)。」

(以下、私見が多く入っておりますので、実際の演出意図と違ったらごめんなさい!)

教室のシーンの前に、神経を病んだ虚な表情の青年が、歴史学者の番組をみているところがら始まります。
青年は、舞台となる高校の生徒だったポズナー、歴史学者はかつて彼の教師だったアーウィン。

ポズナーが思い出のいっぱい詰まった学校にさかのぼる音楽は、舞台下手に置かれたピアノのライブ演奏(終始奏でられる演奏がとにかくよかった!)、月日を遡る時事映像、舞台一面に映し出されるプロジェクションマッピングから、ヘクター先生が「wish me luck as you wave me goodbye」を歌いながら登場する、流れるように印象的なオープニングでした。

この曲が作品中に二度出てくるので、"もはやテーマ曲"のようだと、企画のCEDARさまのX投稿にもあるように、♬またね いつか きっと🎵…
これが最後に活きてくる。巧みですよねぇ、思い出すと泣けてきます…! 物語は終わるけど、また始まるような、巡っているような。

さて、引用が多くなりましたが、

いつも推している長谷川初範さん✨


は校長役でご出演でした✨
この舞台のなかで、教育をビジネスととらえる唯一の存在だと思います。
オックスブリッジの入学者を今年こそは我が校から出したい、その思惑が物語の舵を進めてゆきます。時に厳しく時に朗らかに、生徒にも教師にも接しますが、若い秘書にはちょっかいを出す…やんちゃぶり! 校長とて"人間"という一面が何とも艶っぽい🥹。
舞台に爽やかな風が薫るようなclearなオーラに包まれた存在感が素敵でした。公演プログラムの先生チームの座談会では、校長の経歴や背景について語られていまして、そこからご自分が演じられる上で構築し直し取り組まれる過程に感銘を受けました。登場されると、役の人生がみえてくる!キャリアが光ります。

優れた文学や芸術に触れることで、心を豊かに育もうとする熟練教師ヘクターと、
あくまで目の前の合格に必要なことをたたき込む、若く聡明なアーウィン。二人の議論のシーンには引き込まれ、ともに考えさせられました。
どちらも大切なことだと思うし、また校長が担うビジネスも然り必要なことで、
唯一の女性の出演者・リントット先生の皆を包み込むような存在は、生活の土台になる家庭の重要さを表しているようで、ラッジとのシーンは大好きでした。

そして8人の生徒たち、


役者のDNAを代々受け継ぐ片岡千之助さんは、今回が初ストレートプレイだそうでした!

「役の心で生きること」ーーいい言葉ですね……!
役者としてのキャリアが一番長いのは千之助さんでしょうし、ただものではない雰囲気はさすがだと思いますが、皆さま個性豊かで頼もしくて、固定ファンを多くお持ちなんですね。あの広いロビーを埋め尽くす花々が輝いていました。"みんな仲がいいんだろうな" と自然に感じ取れることにほっこりしました。
(サヘルローズさん出演の「未婚の女」に小田龍哉さんが出られていたと! 最前列で拝見してました、👍なんか嬉しい)

舞台は生き物なので日々違うけれど、そのなかで一番心の奥深いところに残っているのは、一幕終盤の、校長に解雇間違いなしの不祥事を叱責され意気消沈したヘクター先生とポズナーの場面です。
それまでヘクター先生は、毎日バイクに生徒を乗せていたけど、ポズナーを避けていた。のは、自分と同じ匂いを感じたからなのか、見透かされているように感じたのか。
でも誰もいない教室に座ったのは、ポズナーの席。教室に入ってきたポズナーが暗誦する詩「鼓手ホッジ」を聞いて、
心で覚えたものを「心を司る他のものと同じようにひけらかしてはいけない」と語るヘクターが、心で覚えた読書の素晴らしさを滔々と、ポズナーだけに語る。

教師と教え子が同じ方向を向き、心と心が触れ合い重なる、美しいシーン。照明も美しかった✨ お二方とも、感極まって泣いているのですよ。目に見えないものの美しさを感じて思わず涙してしまう、感動的な場面でした。
💧アカン、また泣いてまうやないか🌇

アフタートークで

演出の松森さんが、最後にヘクター先生が生徒一人ひとりにかける言葉「次に渡すんだ」という台詞について、語られていました。(その場で耳にした言葉なので、違ったらすみません)
原文では渡すものは"荷物"なのだそうで、
いいものも悪いものも全て含めて、次の人に渡すのだ、と。

それは自分たちが、楽しいことも辛いことも乗り越えて歩んできた"歴史"を残すことなのでしょうか。
ご覧になった方々が、それぞれに想いを巡らせることができる、巧みな戯曲だと思いました。


7月28日千穐楽の4日後の、
まだ感動冷めやらぬ8月1日。
同じく東池袋のサンシャインシティ文化会館で

「ウルトラヒーローズEXPO 2024 サマーフェスティバル IN 池袋サンシャインシティ ザ⭐︎ウルトラマン&ウルトラマン80 45thスペシャルナイト」


が開催されました!

「ザ⭐︎ウルトラマン」の声優・島本須美さん、
柴田秀勝さん、
「ウルトラマン80」で矢的猛(やまと たけし)先生・隊員の長谷川初範さん、
共演された城野エミ隊員の石田えりさん、
星涼子隊員=ユリアンの萩原佐代子さんもご登壇されるとあり、パイプ椅子が敷き詰められた会場は、年齢も幅広くほぼ男性のお客様で埋め尽くされ、異様なほどの熱気! 圧倒されました。
チケットは完売で、U-NEXTの配信が9月15日まで見られるそうです。

当時の貴重なお話や、長谷川さんが変身されるシーンの実演やスーツアクターのヒーローショーのアフレコも!!、
来場者特典で桜ヶ岡中学校の生徒手帳をいただけたり、至れり尽くせりのスペシャルイベントでした。

翌日、長谷川さんがご自身のFacebookに矢的先生像について書かれた投稿が素晴らしすぎて、一部掲載させていただきます🙏
放送された1980年当時、学校が荒れていた時代で、ヒーローは眉を剃ったヤンキーだったと、

そこにのんびりした音楽で着任した朝から遅刻して汗かき走って来る矢的先生。汗かき不器用で正義に熱く涙もろい。
今までのクールでカッコいいヒーローではなかった。
当時はいろいろなクレームがTV局に入っていたようだった。
「ヒーローなのに遅刻したり、頼りなく生徒に応援されてるだらしのない先生だ」とか。笑
今までのヒーローの概念を崩した矢的先生は全く当時は話題にも上らずに一年の放送を終えた。
それから人には「ウルトラシリーズの失敗作品ね」と言われてきた。

実はこの矢的先生像には、私の哲学が練り込んでいた。十代の頃から学ぶとは?「教育」教えて育むとは何かと考え悩んでいた。
一時期学校の職員室に教育雑誌を届けたり、教科書を届ける書店で働き、届ける教育雑誌を読み漁っていたこともある。

矢的先生は熱いが不器用で頼りないが、生徒と一緒に同じ目線で考える。
失恋して学校に来なくなった生徒を訪ねて話を聞き一緒に涙を流す。
先生とは生徒たちの好奇心を伸ばし、楽しく喜びを持って学ばせる先輩。これを矢的先生には練り込んでいた。
今や世界配信があり、萩原さんがウルトラマンフェスでブラジルを訪れた際には、ウルトラマン80を友達の家で観て(多分貧困地区だと推察しますが)「毎日の盗みをやめ、私の人生が変わりました!」と涙を流しながら語られたとのこと。
私には中国から「矢的先生のお陰で勉強が好きになり、今、米国の有名大学で学んでます。」

作品の世界配信のお陰で、
当時は失敗作とまで言われていた作品が時代を超えて新しい世代のファンが増えていく事はとても嬉しい。

長谷川初範さんの、8月2日のFacebookより 

さすがの矢的先生! 役づくりも巧みだけど、「ヒストリーボーイズ」のテーマに繋がっていると思いませんか?
そして一幕終盤の、ヘクター先生とポズナーのあの瞬間の姿を表していると思うのです。

1980年代が舞台の「ヒストリーボーイズ」、
1980年に放送された「ウルトラマン80」、
まったく別物のような2作品が繋がったように感じられ、とても不思議な感覚になりました。

「ウルトラヒーローズEXPO2024」は、
池袋サンシャインシティにて、
前期→8月5日まで、
後期→8月7日〜8月26日までの開催だそうです。

素晴らしいステージを、感動をありがとうございました! 

そして、今日も私たちは歴史を刻んでいるのですね。世の中のために後世の方々に恥ずかしくないように、日々懸命に生きていきたいと思います。
再演を強く願う作品のひとつ、是非またお会いできますように🙏感謝🙏


〔スタッフ〕
音楽・演奏:  和仁将平
ステージング: 広崎うらん
美術: 平山正太郎
照明: 小原ももこ
音楽・音響: 西山裕一
音響: 石神保
映像: 松澤延拓
衣裳: 藤崎コウイチ
ヘアメイク: ナリタ ミサト
歌唱指導: 白神直子
演出助手: 石川大輔 たはら ひろや
制作: 間宮春華
舞台監督: 金安凌平

製作: 児玉奈緒子


増田珠子教授執筆の
 『アラン・ベネット「ヒストリーボーイズ」未来へと引き継ぐべきものを求めて』が掲載されています。
 『現代演劇 Vol.22』2020年3月発行

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました😊💐

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