Determinataion 第2話「勇者達」

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Determinataion 第1話「善衣と悪魔」 | 記事編集 | note

()は漫画の演出方針。数字は1話ご参照。
総文字数:7,879文字

振り返り(以下ナレーション)


(⑤・⑧)
クラスメイトに理科準備室に呼び出された真衣はパープルと名乗る悪魔の襲撃を受け、呼び出してきたクラスメイトと共に毒を浴びてしまう。
(⑫・⑬)
1時間以内にどこかにいる本体を探し出さなくては死んでしまうが、校内中を探しても見つかる気配がない。
(⑭・⑮・⑯)
残り15分を切り、身体に激痛を感じる真衣だったが、今までのやり取りを思い出して敵の居場所を思いつき、必ず殺すと決意を新たにした。

再対峙


(鶴木、足を引きずって理科準備室に入ってくる)
「はあ…はあ…くっそ、結局最後の場所も見つからなかった…」
(倒れこみ、羽に話しかける)
「先生、残り5分だ。もう私には動く力が残ってねえ…何とか見つけて欲しい…」
古田、ショックを受ける
「そんな…鶴木さん…綾…私のせいで」
やせ我慢して笑う。
「古田さん…もう身体に毒はついてないと思うから、委員長の側にいてやってくれ。」
(うん…と駆け寄る古田)
「…私もせっかくだから誰かの側で…」
(ずるずるとうつ伏せで這って委員長に近づく)
(綾~と泣き出す古田)
「ダメだ…もう…」
(古田、委員長の手を取って泣く)
(椿の顔アップ)
「終わった。と思ったろ。」
背中から生えた翼が、古田のシャツの胸ポケットを突き刺した。
古田、驚く
「え?」
突き刺した箇所からは血の代わりに、大きな悲鳴が聞こえた。
「ギャアアアアアアアアアアアア!!!」
(古田、耳を塞ぐ)
(椿、立ち上がり、羽を広げる。)
(胸ポケットから小さな目玉が入ったスライムが飛び出す)
スライムから1cmほどの手足が生え、顔を押さえてのたうち回っている。
「痛い!痛い!痛い!うわぁぁぁぁ!!!」
委員長と鶴木の身体からは湯気が出ている
「おお!身体の痛みが引いてく!そうとう効いたみたいだねえ。能力が維持できなくなってきてるよ。」
「どうして、なぜ私の場所が分かった!」
立ち上がりながら見下ろす。
鶴木に戻る
(回想:⑩・⑪・⑫・⑬)
「お前は日光に当たれない。だから私たちは暗い所を探し回ったけど、学校中探しても全然見つかんねえ。小さすぎて見つからないのかとも思ったけど、よく考えたら人目の多い学校内で教室に隠れるのは難しい。」
(回想:⑦)
「おまけに、お前の発言で、私たちは勝手に本体が離れた場所にあると思いこまされた。だからここをよく調べないまま出ていったんだ。」
(回想:⑨)
「そういえば古田さん言ってたよなあ。最初に私と委員長を攻撃した時に液が飛んできて、委員長に庇われたって。」
(回想:⑤)
「でも、おかしいと思ったんだ。いくら委員長が庇ったって、あんだけ広範囲の飛び散りを受けきれるのかって。」
鶴木、強くにらんで、人差し指をさす。
「てめえは最初から遠くに本体を置いてなんかいねえ。最初の攻撃で胸ポケットに隠れて、私らが何も出来ずに死んでいくのを近くで眺めるつもりだったわけだ。日光の弱点に気づかれても大丈夫なように、わざわざ女子中学生の胸ポケットに隠れる変態野郎が。」
手をグーパーして感触を確かめる
「随分身体が楽になったよ。最後に言い残すことあるか?」
(悪魔、血管が浮き出て怒り狂う)
「人間ごときにこの私がァ!」
(突然動きが止まる)
(いきなり怒るのをやめ、鶴木を見つめて邪悪に笑う)
「おい椿ィ!テメェもどうせ殺される。テメェのくだらねえ妹の」
言い終わる前に翼で目玉を切り裂かれ、崩れ落ちた。
「敗者はさっさと死になよ。見苦しい。」

謝罪


(古田、先生、鶴木が映る)
「お!目が開いた!」
(古田、綾を抱きしめる)
「美奈子…?そうだ、私、液体に当たって動けなくなって」
(抱きかかえてたまま揺らす)
「そう!毒で危ないところだったんだけど、鶴木さんと花守先生がやっつけてくれたの!もう大丈夫なんだよ!」
「鶴木さん…そうだ…私!」
立ち上がり、鶴木に頭を下げる
「ごめんなさい!私!鶴木さんを嵌めたの!自分が助かるために、鶴木さんを嵌めた…ごめんなさい、本当にごめんなさい!」
つられて古田も立ち上がり、ごめんなさいと頭を下げる。
真衣、無言で2人に近づく
「2人とも、顔を上げて」
恐る恐る見上げる2人に、真衣はデコピンをした。
2人がのけぞる
「確かに危ないところだった。でも、突然同じ状況になったら私もそうしたかもしれない。特に委員長は、身を挺して友達を庇った。あんなの見せられたら怒れないよ。」
真衣、にっと笑う。
「だから、このデコピンでおしまい!今度何かあったら、ちゃんと私に相談してね!
 古田さんも!悪魔狩り自体はいつでも歓迎だからさ!お金になるし!」
2人、涙を浮かべ真衣に抱き着く
「ありがどう~!ごべんなざい~!」
抱き着かれ、困惑する真衣。先生と顔を見合わせて笑う。
よし、これで無事…
「一件落着。と思ったろ?」
声が聞こえ、慌てて2人を突き飛ばす。
飛んできた液体は真衣の全身を覆った。

悪魔の契約


(スライムの形状を取り戻し、全身赤色になっている)
「ゲゲゲゲゲゲ!!かかったかかった!毒がかかったぁ!」
(椿に変身。翼を広げて突き刺すも躱される。)
「二度も同じ手が効くか馬ぁ鹿!」
「なん…で…」
パープル、ニヤリと笑う。
「契約はよぉ。あのお方の契約は2つあるんだぁ。1つはお前を殺す事ぉ…そしてもう1つはぁ…命尽きた時、能力が2倍になって一時的に甦る!お前が死ぬまでなァァ!!!」
再び殴り掛かってくるのを受け止める。
「重っつ…」
ニヤリと笑う。
「どうだぁ、さっきまでとは比べ物にならんパワーだろぉ…?そしてぇ…」
椿、血を吐く
「毒の回りも!痛みも!症状もぉ!全てが2倍だァァ!!」
腕を大きく振ると、壁に叩きつけられる。
日に当たって、溶けてるのに…質量が倍になって消えるのに時間がかかってるのか…
「…センセ!今だ!」
先生、続けざまに発砲。
悪魔、口から液を吐き出し、弾丸を溶かす
「同じ手は効かんと!さっき言ったろぉ!俺に!2度!同じことを言わせるなぁ!」
鶴木に変身。叫んでいる間に距離を詰め、刀で目を切り裂いた。
悪魔、うねり声を上げる。
鳴き止み、ニヤリと笑う。
「なあ…2度目だァ…2倍だと言ったろぉ?そしたらよぉ…核も2つに増えるくらいの想定はねぇのかァ!?アアァン!?」
半分になった目玉がそれぞれ再生し、2つの目玉が出来た。
鶴木の目の前で炸裂する。
「追ってこい椿と人間!30分以内に俺を殺せなければお前も道連れだァァ!」
ぎゃはははと笑いながら目玉がそれぞれ逆方向に逃げる
先生が1つを追いかけ、近くを飛ぶコウモリに話しかける。
「鶴木!聞こえるか!私は1つを追う!もう片方は任せる!」
返事がない
「鶴木!」
(動かず、倒れこむ鶴木)
「聞こえるか!鶴木!」
やばい…マジで動けない。痛みがさっきの比じゃねえ…息してるだけで吐きそうだ。
鶴木さん!委員長と古田が駆け寄ってくるのを制止する。
「2人とも、これかかってないか…」
「うん、私たちは大丈夫。でも…」
「そっか…それはよかった…これはまじできっついから…うっ」
また血を吐く。
まずい不味いマズい、ダメだ、動け、動かないと死ぬ!動け!
拳を握るが、身体は動かない。
ふと、諦めが襲ってきた。
―私、今日ここで死ぬのかも。私が死んだら、誰か悲しんでくれるかな。この2人はどうだろう。
「委員長、最後にちょっと聞いてくれるか…」
うわ言のように呟く。委員長からの返事は聞こえない。
毒に侵されながら思いつくままに口を動かす
(以下、台詞にあう回想)
「金を稼げっていうのが、お父さんの口癖だった…父さんは弁護士で、絶対に勝てないと言われてた裁判に勝つなんて日常茶飯事だった…小5の時、裁判で稼いだ何十億円を使って、治らないって言われてた母さんの重い病気を治した…奇跡の男なんて呼ばれてたけど、お母さんの快気祝いの旅行先で、悪魔から子供を守って2人とも死んじゃった…葬式には大勢の人が来て、皆泣いてくれた。パパに世話になったからって私を引き取ってくれようとした人もいた。断ったら、せめてこれだけはってお金をもらった。私にはお金だけが残ったんだ…」
涙を流し、呟く
「あれ?なんであたし、悪魔狩りなんてやってるんだっけ…?」

原点


(縁側で遊ぶ父と娘)
娘が父の膝に乗っている。
「ねえ、お父さーん、なんでいつもいつも私に、お金を稼げっていうの~?変なことば~っかり教えるって、お母さん怒ってたよ~」
「ん~?変なことじゃねえ。大事なことさ。」
(頭を撫でられる娘の目線。父の顔は白く塗られており、よく見えない)
「いいか真衣、お金を稼ぎな。この世の中、金があれば何でもできる。美味いもんが食えるし、病気も直せるし、金が金を呼んで増えていくんだ。だからお前は金を稼げ。そんでその金でお前は―」
(白塗りが取れ、父の顔が見える。優しく、そして確りと娘を見る力強い目。)
「周りの人を幸せにするんだ。自分1人で幸せになるだけなら、金なんかいらねえ。でもな、家族が病気になった時、ダチが困った時、金があれば助けられる。そうやって本気で助けた人は、お前が困った時にきっと力になってくれる。稼げる事は、お前が得意な事だ。それで人の役に立ってりゃあそのうち勝手に仲間が出来るさ。」
(頭をグリグリ撫でまわされ、嬉しそうな娘)
「真衣、金稼いで仲間作って、そいつらと美味いもん食って、泣いて笑って死ぬまで生きろ。金で幸せを買うんじゃねえ。」
(話を聴く真衣の顔アップ)
「幸せってのはな、金を稼ぐ過程で得たもんを、金で大事にすることだ。真衣、幸せに生きろよ。」
そうだ…私は…
(回想終わり、よろよろと立ち上がる)
「私が、悪魔を狩るのは、誰かの幸せを守るため、私がお金を稼ぐのは…」
(刀を支えに立ち上がる)
「私が、幸せに生きる為だ…!」
(羽に話しかける)
「先生、ごめん、大丈夫。そっちは任せたよ。」
ふーっと息を吐き、目を瞑る。

裁きの時


教え子の事情は知ってる。
だから、人一倍目をかけていた。いつだって自分が定めた目的に、真っすぐ力強く向かっていく意志の強さは、現代社会では確かに浮いてしまう。
でも、私は知っている。
(②)
あの子の強さは、自分だけの為ではないと。
(③)
あの子は誰より、誰かの為に危険に立ち向かえる強さを持っていることを
(目玉を見つけ、銃を構える)
(銃の形状が変化。銃身が長くなり、緑の線が走るデザインに)
あの子の未来は、お前ごときが奪っていいものじゃないんだ!

憑依してるから、真衣の考えてることが分かる。
真衣の意志の強さ、その原点を知って湧き出る、この感覚は何だろう。
勇気がみなぎるような、こいつと一緒なら、何だって出来ると思えてくるような、この勇気を。
(鶴木、目を瞑ったまま、刀を振り下ろす構えをとる)
「真衣、私たちは1つ。私は真衣で、真衣は私。私は空間に干渉できる。真衣には、何だって切れる強い力がある。イメージして。大丈夫。真衣の、意志の強さに、善衣は、私達の力は、今、絶対に答える!」
(目を開き、刀を振る)

(片方見開き)
(銃から無数の弾道。全てが目玉に集中砲火)
『オールデリート』
(片方見開き)
『次元斬』
目玉真っ二つ
(先生サイドは音もなく、もう片方は驚きながら消滅)
なぜだ…あいつはもう動けないほど重症で、遠距離攻撃もないはず…
(コウモリに視線をやる)
まさか…切ったのか。俺がいる空間ごと
「バカな…そんな…事が…私の力が…申し訳…」
(サラサラと消えていく)
(鶴木から湯気が出ている)
「やった…勝った…鶴木さん達が勝ったんだ!」
(鶴木、倒れ込み、意識を失う。)

もう1人の主人公


(先生、準備室に戻る)
「鶴木!やったのね!」
(心臓マッサージをする委員長)
「操上…何してるの?」
「脈が…ないんです。鶴木さんの…脈が!」
「そんな…もう敵は倒したのよ。まだ30分だって経ってないのに…!」
(先生、時計を見る。14:15の表示)
14時にくらった毒は15分で解毒したはずなのに…!
(目に光がなく、倒れている鶴木の手を握っている操上)
どうして私の人生は上手くいかないんだろう。
(入学式、制服を着て希望に満ちた顔)
夢を持ってたはずだった
(①)
でも、憧れた様にはなれなくて
(①A)
遠くから眺めるだけの日々だった。
そのうえ憧れを裏切って
近づけたと思ったのに、
(倒れこみ、動かない鶴木)
今度は自分のせいで憧れを失うんだ。
(以下、台詞通りの回想)
私が中庭でお昼を食べようなんて言わなかったら、
鶴木さんを誘い込まなければ、
毒が抜けてすぐに起きていれば、
そもそも私に強い意志があれば
(操上も合わせた3人で敵に立ち向かっているイメージ)
―私が善衣を使えていたら
やり直したい私の人生、大っ嫌いな私の人生
せめて、この人だけは、私の憧れだけは、
(操上の後ろ姿。制服が光る)
私が、この手で助けたい!
「綾…それ…」
倒れている鶴木の下に、大きい文字盤が現れた
「なに、これ…」
「善衣だ…発動したんだ!操上!服が変わってる!」
(制服が白い学ランに変化)
これが…私の…?
(時計がギュルギュルと鳴り、左回りで巻き戻っていく)
「時計が…巻き戻ってる」
「綾!見て!」
鶴木の身体から消えていた痣が現れ、また消えていく。
パチリと鶴木が目を覚ました。
「あれ、委員長、この手はどういう…?…っていうか、私、生きてんの?」
(操上、鶴木に抱き着く)
「え?これ、どういう状況?」
(先生、近づき、下の文字盤を指さす。)
「多分、操上の力だ。」
時計の針が1時を指している。
「うわっ!これが委員長の力?」
「時計がさしてるのは午後1時。でも部屋の時計は2時20分を指してる。鶴木、身体の具合はどう?」
(言われて肩を回す)
「ばっちり。むしろ毒くらう前より調子いいかも。」
(先生、頷く)
「その時計が指してる午後1時は、1回目に鶴木達が毒をくらう前。その時間まで、鶴木の身体だけ時間がまき戻ったんじゃないかしら。」
「すごい…そんな事が」
「詳しいことはまだ分からない。でもひとまず言えるのは、操上が鶴木を助けたって事。」
(先生、駆け寄って2人を抱きしめる)
「よくやったわ操上。2人とも無事でよかった…」
(抱きしめられて微笑む2人)
時計が消え、操上は意識を失う
「綾!」
(駆け寄る古田)
「大丈夫。1番最初に善衣を使った時はこうなるものよ。よっぽど強い意志があったんだしょうね。」
(立ち上がる先生)
「保健室に運びましょ。しばらく休ませたら良くなるわ。」

決意


(操上、保健室で目を覚ます)
「お!先生!古田さん!委員長起きたよ!」
(目の前に鶴木の顔)
「綾!」
(古田、抱き着く)
「おはよう。操上。具合はどうだ?」
「えっと、特に問題なさそうです。」
「そうか。それはよかった。」
「さて、何から話したものか…まずは飲みなさい。」
(先生、紅茶のカップを操上に渡す。)
「ありがとうございます。」
(先生、ソファに腰掛ける)
「私と鶴木は、訳あってこいつの護衛をしてる。おい悪魔、出てこい。」
椿に変わる
「は~い♪」
(ふくれっ面)
「も~、そろそろ悪魔じゃなくて椿って呼んでよね。熟年夫婦じゃないんだから、おいとかお前とかでも呼ばないで。一緒に視線をくぐった仲じゃない。花守センセ♬」
(操上、驚く)
「鶴木さんなの?いやでも羽が…」
「そう!さっき何回か真衣と入れ替わってたんだよ。気づいてたみたいだね。」
(胸に手をあて、操上を見る)
「私、椿。鶴木の身体に居候してる悪魔。私、さっきみたいに悪い悪魔から狙われてて2人にボディーガードしてもらってるの♪悪魔だけど、人間の敵じゃないよ。」
「すごい…鶴木さん、悪魔と同居してるんだ…あ、私、操上(あやがみ)って言います。操上 綾。よろしくお願いします」
椿、少し驚く
「おっと意外な反応。もう少しびっくりされるかなって思ってた。」
「いや、鶴木さんってやっぱりすごいなって」
椿、古田を見る
「え~っと、古田ちゃん、だよね。綾ちゃんって、ちょっと変わってる子?」
(古田、頬をかく)
「…綾は『勇者』になるのが夢で、中1の頃からずっと鶴木さんに憧れてたんですよ。3年間、事あるごとに話しかけに行ったりしてたもんね。」
「へ~!そうなんだ!…だって。よかったね真衣」
(前のめりになる委員長)
「あ、あの、椿さん!鶴木さんって、いつも誰かを守るために命がけで戦っているんでしょうか。」
「いや分かんない。私、居候スタートしたの今朝からだから。でも多分原動力はそんなきれいなもんじゃないよ。金だよお金。」
(指を金マークに)
「そ、そうなんですか…」
(先生、咳払い)
「話を戻していいかしら。こういうわけだから、狙われる鶴木はこのままうちの附属にあがって、『勇者科』に進学する事になると思う。本人もまだまだ稼ぐ気満々だからな。」
椿が先生に話しかける。
「ねえセンセ、その『勇者科』ってのは何なの?ゲームの話?」
先生、イラつくも答える。
「お前らみたいな悪魔に、『善衣』を使って戦う職業のことを『勇者』って言うんだよ。」
ニヤリと笑う。
「へえ…そうすると護衛…もとい真衣の友達が増えるってことだね!凄い良いじゃん!」
そんだけ『勇者』が集まるなら、敵も簡単に私に手出しできないだろうし♪
「ただ操上、『善衣』が目覚めたからといって、必ずしも『勇者科』に入る必要はない。確かに報酬だったり社会的地位は高いけれど、今日みたいに命がけの戦いになることだってある。君は鶴木と違って成績も良いし、生活態度も申し分ない。良い高校・大学に行って良い会社に入る選択肢が…」
委員長が手を挙げ、先生の話を遮る。
「私、やります。鶴木さんと一緒に、勇者科に入ります。」
先生、頭を抱える
「今この場で決める事じゃない。君にはまだ選択肢が…」
(委員長、胸に手を当て声を貼る。)
「ずっと!ずっと夢だったんです。この学校に入ったのだって、附属の『勇者科』が有名だったからです。私は昨日まで『善衣』が発動しなくて、スタートラインにも立ててなかった。」
(俯いて震える)
「けど、今日は死にかけたけど!自分の意志で人を助けられた!親には心配かけるかもしれないけど、それでも諦めたくないんです!」
(時計の文字盤が浮き出てくる)
はあ~っとため息。
「それだけ意志は固いってことね。分かったわ。」
先生、鞄を探り、何かを取り出す。
「操上なら知ってると思うけど、『勇者科』の応募には、教職員の推薦が必要よ。そこは私がやるわ。」
(操上の表情がパアッっと明るくなる)
「ただし、この募集要項を満たせたらね。」
先生、鞄から取り出したパンフレットを渡す。
生徒3人のぞき込む
「個人で、あるいは3人以上のチームで輝かしい悪魔狩りの実績があるもの…?」
「3人…」
(鶴木と操上が古田をみる)
「いやいやいや!私は無理!だいたい私の制服は希望してないから『善衣』じゃないし、絶対発動しないし!」
先生がパンフレットをめくり、指をさす。
「入学試験で、チーム実技っていうのもあるわ。普通科はまだしも、『勇者科』は内部進学でも入学試験必須だから、誰かもう1人見つけてくることね。」
先生、指を立てる。
「あんた達が『勇者』を目指すのは止めない。けど、推薦が欲しかったらあと1人、見つけてくること!」
椿、操上の肩を掴み、揺らす
「ねえ~綾ちゃ~ん、知り合いで誰かいないの~?」
操上、困り顔
「う~ん…うちのクラスでいるかなあ…。」
(正門前で立ち尽くす少女。帽子を被り、スクール鞄を肩のところで手持ち。パーカーのポケットに手を突っ込んでる。)
「『善衣』使えるほど意志が強くて、勇者志望の子」
(少女の顔アップするも、顔はつばの陰で見えない)
(少女の舌打ち)

続く。

#創作大賞2023

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