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きみのすがた(データ版)
まえがきにかえて
はじめまして。そうでないかたも、こんにちは。望森ゆきです。
カエルのけろさんの物語【きみのすがた】を、noteにて冒頭(後半は有料)公開することにしました。
よいなぁ。続きが気になる! とおっしゃってくださる方は、購入していただけたらと思います。
また、紙の本(B5サイズ)にもなっており、こちらはBOOTH(https://mochimori.booth.pm/items/4926447 ) にてお求めいただけます。
では、けろさんの世界へ! いってらっしゃいませ。
コソッと(以下のツイートをリポストしていただくと、お得に続きを読んでいただけます~。よろしくお願いします)
noteでカエルのけろさんの物語【きみのすがた】を公開しました!この投稿をリポストするとお得に続きを読むことができます。
— 望森 ゆき/公募勢 (@yuki_mochimori) December 4, 2023
きみのすがた(データ版) | 望森 ゆき @yuki_mochimori #note https://t.co/UwNh5ZPYDU
本編
ある森の奥に、井戸がありました。
井戸の中には、赤い屋根のおうちがあり、カエルさんが一匹、住んでおりました。
カエルさんのおなまえは、けろといいます。
けろさんは、朝にうたの練習をして、お昼は絵を描いて、過ごしています。
実は、けろさん、おうたが得意ではありません。
そのため、カエルの仲間たちからは、〝カエルもどき〟なんていう失礼な呼ばれ方をされています。
悲しく思ったけろさんは、カエルの仲間たちの住む池から離れました。そして、井戸で暮らすようになったのです。
今日も今日とて、おひさまのあいさつが、はじまる頃になりました。
けろさんはおうたの練習をはじめます。
井戸から元気な歌声が聞こえてきます。
でもやっぱり、あまり上手ではありません。
しかし、井戸の近くを通る動物たちは、けろさんをほほえましく見守っています。
夏のある日のことです。
おひさまが、空のてっぺんで大きなあくびをしました。すると、おひさまはいるのに、こまかい雨が降り始めました。
けろさんは、絵を描く筆をとめて、窓からお外を見ました。
雨は、キラキラと光を反射させています。いつもとはまたちがう、きれいなお外の様子でした。
けろさんは少しの間、キラキラとひかる、お外の様子をながめていました。
その時、玄関のドアをノックする音がひびきました。けろさんを呼ぶ声もします。
「こんにちは~。けろさん、いらっしゃいますか~? おてがみを届けに来ました~」
けろさんはあわてて、玄関にむかいます。
「はいはい! カタツムリくん。今、ドアを開けるね」
そうして、玄関を開けると、カタツムリくんが、おてがみの束を口にくわえて、待っていてくれました。
けろさんは、カタツムリくんにお礼を言って、おてがみを受け取りました。
けろさんは、おてがみの宛名があっているか、確認をはじめました。その待ち時間に、カタツムリくんは、まったりと口を開きました。
「今日は雨が降っていますね~。ボクとしては過ごしやすい天気です~。けろさんの筆の進みはどうですか~?」
そう尋ねられたけろさんは、にがい薬を飲んだような、ムムッとした表情になりました。重いため息をつきます。
「なかなか良い作品が描けているよ。でもなかなか、これぞ、という作品はまだ描けないね……」
「納得できる作品を作るというのは、なかなかにむつかしいのですね~」
カタツムリくんもつられて、口がへの字になりました。
けろさんは、こころまちにしていた、おうたのお仕事についてのおてがみを見つけました。少し雨にぬれて、へにゃりとしていました。少しドキドキしながら、破らないようにと気をつけて、ていねいにおてがみを開けました。おてがみを読み進めるうちに、けろさんの目にはなみだがたまってきました。そのおてがみには、「今回のお仕事はけろさん以外のカエルに任せることになりました」というものだったからです。
けろさんは、しおしおとしょんぼりしてしまいました。
カタツムリくんは、そんなけろさんを見て、切ない気持ちになりました。カタツムリくんは、けろさんの明るい顔が見たくて、あるはなしを持ちかけてきました。
「まだ締め切りは先になるのですが~。けろさん、絵のコンテストに興味はないですか~?」
けろさんは目をパチクリとさせました。
けろさんは絵を描きはするけれど、その絵で何かをするなんて、考えたことがなかったからです。
「う~ん? コンテスト? どういうものなの?」
「ボクがお届けしている新聞がありますよね~? その新聞にのせる絵を募集しているのです~。集まった作品の中からのせる絵を決める、そんなコンテストです~」
「そういうものも世の中にはあるんだね。知らなかったよ。ありがとう、カタツムリくん」
カタツムリくんは、けろさんのその言葉を聞いて、にんまりしました。
「けろさん応募してみましょうよ~。きっと、けろさんの絵は、新聞にのりますよ~?」
けろさんは、困った顔をして首を横に振りました。
「けろなんかにお仕事は来ないよ……。今回のおうたのお仕事も、ダメだったもの。それにカエルらしくないよ、絵のコンテストに出るだなんて」
「そうなのですかねぇ~……。とりあえず、宛名まちがいもなかったようなので、今日はこのへんで~。失礼いたします~」
そうして、カタツムリくんは、おひさまが見守る雨の中、次のお届け先にむかって出発していきました。
けろさんは、キラキラひかる雨をながめながら、ポツリとつぶやきました。
「どうしたら〝カエルもどき〟なんて、言われなくなるんだろう……」
けろさんは、重いため息といっしょに、窓のカーテンを閉めました。
悩んでいるうちに夏が過ぎ、肌寒い季節がやってきました。
秋を感じさせる高くて青い空の下、けろさんはおうちの屋根に登りました。もうすぐおひさまもマフラーを巻くような寒い冬がやってきます。その前に、けろさんはおうちの屋根をなおさなければなりません。
けろさんは、かなづちを片手に、リズム良く、「トンカン」「トンカン」と屋根をなおしていきます。
朝から屋根をなおしていたけろさんは、ひと休みすることにしました。
けろさんは、なおした屋根の上に座り空を見上げました。
空は青く、ときどきモクモクな雲が流れていきます。風は少し涼やかで、けろさんの疲れをとってくれるようでした。
雲のかげに入り、からだが寒くなってきたけろさんは、作業に戻ろうと立ち上がりました。目を閉じて、うーんと背伸びをしました。上を向いたまま、目を開けると、空から何かが降ってくるのを、けろさんは見つけました。
けろさんの知る中でも大きなものが、雨粒のように空から降ってきています。井戸のかべを、つたってくるのではありません。宙を飛んでいます。
けろさんは、思わず目をこすりました。しかし、大きなもののかげは消えません。もっともっと大きくなっていきます。
けろさんは口をポカンと開きました。
「なにあれ……?」
大きなものはそのまま、井戸の水面に叩きつけられ、大雨のような水しぶきを上げながら沈んでいきました。
けろさんは、改めて何事かと、上見て下見て、まわりをキョロキョロと見渡しました。
水面がブクブクと泡立ちはじめました。けろさんが身構えていると、水面から何かが現れました。
「ふぅうう! 生きかえるぜぇえ!」
井戸を震わせるほどの大きな声がひびき渡りました。けろさんは、そんな大きな声にビックリして、足が滑りました。先ほどの水しぶきで、屋根はツルツルになっていたのです。
あっと思ったときには、けろさんも水の中へと落ちていました。冷たい水がけろさんを迎えます。
けろさんは、思わぬことの連続で、息の仕方を間違えてしまいました。水をたっぷり飲んでしまい、ジタバタするけろさんです。しかし、誰かが、けろさんを水の中から引き上げ、助けてくれました。
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