『アウトレイジ』全員が悪、あるいは正義の終わらないゲーム

北野武監督作品『アウトレイジ』は仲内のヤクザの報復合戦を描いた作品だ。
ボッタクリクラブに兄弟分のヤクザをハメたことから仲内での終わらない抗争というゲームが始まる。そこではお互いが悪であり、裏を返せば自分たちが正義の世界でヤクザたちは陰惨な報復合戦を繰り広げる。
 今までの北野武監督作品とは違い主人公(たいてはビートたけしが演じる)が組織を逸脱して個人が破滅する物語とは違い、組織として破滅と世代交代を描いている。その中で行われる報復合戦というゲームは死ぬまで、あるいは勝利(現時点での)を収めなければ抜けられない。
 そこには、全員が常に勝利か敗北かというゲームの参加者であり、ゲームの参加者としてどちらかに最終的には属する。
 これは経営戦略の考え方であり、常に私たちシステムの属する中での行われるゲーム(人生)と同じ構造だ。
 特にリーマショック以降、今までのシステム(自明性といってもいい)が変わっていき、ゲームのルール(普通であること)が何であるかが失われ漠然とした中で極端な勝利(上がること)と敗北(それ以外)しかないゲーム結果と似ている。
 『アウトレイジ』はそういったルールが変わったゲームの中で極端な結果でしか物語(自分の人生の物語)を生きれない、あるいは抜けることが出来なくなったシステムの中で生きるしかない私たちをヤクザの報復合戦というわかりやすいゲームの物語として描いた作品だ。

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