優勝チームに、日本代表はいなかった、という話
近年、中学野球界では革新的な指導法や最新のトレーニング方法を取り入れるチームが増えています。そんな中、今年のポニーリーグ全国大会で優勝を果たしたのは、意外にも基本を重んじる福岡のポニー筑後リバーズでした。この結果は、私たちに多くのことを考えさせてくれます。
筑後リバーズの特徴は、一見すると地味に感じられるかもしれません。ポニーリーグが選出する(33人の)日本代表選手は一人もおらず、個人の能力も飛び抜けているわけではありません。近年流行の野球スクールのような経営形態でもありません。しかし、彼らの強さの秘密は「当たり前のことを当たり前にやる」という、教員が教える部活動的な姿勢にあります。
石田博監督代行の指導方針は、野球の技術以前に日常生活の基本を重視しています。バッグの並べ方、シューズの揃え方、挨拶、ベンチの掃除など、一見野球とは無関係に思える事柄が最優先されるのです。この基本的な生活習慣の徹底が、選手たちの心構えや責任感を育て、結果として試合での活躍につながっているのです。
練習面でも筑後リバーズは昔ながらの厳しい方法を採用しています。丸太を持って走ったり、夏場も厳しいランニングメニューをこなしたりと、一見すると時代遅れに思える練習も多いです。しかし、これらの練習は選手たち自身が覚悟を決めて選択したものです。自ら選んだ厳しい道だからこそ、努力を続けられるのです。
この「基本重視」の姿勢は、近年の野球界の傾向とは一線を画していますが「原点回帰」とも言える方針を貫いています。最近ではメンタルトレーニングも取り入れたそうです。温故知新の方針が見事に結果を出したのです。
この結果は、私たちに「本当に大切なものは何か」を考えさせます。確かに、新しい指導法や練習方法は重要です。しかし、それと同時に、規律や礼儀、基本的な生活習慣といった「人間力」を育てることの重要性を、筑後リバーズの優勝は教えてくれています。
また、この優勝は指導者の役割についても再考を促します。指導者たちは、単に厳しい練習を課すだけでなく、その意味を選手たちに理解させることに成功しています。これは、年齢に関係なく、選手との適切なコミュニケーション能力が重要であることを示しています。
それにしても、大会期間中、選手たちの急速な成長ぶりには目を見張るものがありました。わずか6日間で、顔つきも発言も大人びていく様子は、中学生ならではの素晴らしい特徴です。同時に、この時期は良くも悪くも変化しやすい時期でもあるため、周囲の大人たちの根気強い見守りと適切な指導が重要であることも再認識させられました。
この大会取材を通じて、私自身も多くの固定観念を覆されました。「革新的」であることが必ずしも最良の結果をもたらすわけではなく、時には「基本に立ち返る」ことが最も革新的な選択となりうることを学びました。
最新のトレーニング方法や指導技術を追求することも大切ですが、同時に「人間としての基本」を疎かにしてはいけないという、シンプルでありながら重要なメッセージを私たちに投げかけていると思いました。
革新と伝統のバランス、そして何より「人間力」の育成。これらの要素をいかにして調和させていくか。それが、これからの指導者たちに課せられた重要な課題なのかもしれません。
筑後リバーズの選手たちおめでとう!
いつか「キツイ練習」を見に行きたいな。
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