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地下には真実、地上にはロマン

先日、青森の三内丸山遺跡に足を運んだ。
いまから1万五千年前から、4000年ほど前までの少なくとも1万年ほど続いた縄文時代を代表する遺跡。

90年代なかばに野球場をつくろうと開拓した土地に、それは見つかった。発掘作業をしながらも野球場の開発も進み、もう三塁側の座席まで建築されていたらしい。

それを、その時の青森市長が「やめる!」という鶴の一声をあげて、遺跡として残されることに決まったらしい。えらいぞ市長。歴史に名を刻んだね。

その遺跡には、直径2mで高さも3mほどある穴が見つかる。それが4.8mごとに等間隔に2列で並んでいた。その穴の中には、おそらく柱として立てられていた栗の木の一部が見つかる。

そこには高さ14.7mにも及ぶやぐらが立っていた。遠くを見るための物見やぐらだったのかもしれないし、お祭りの祭壇だったのかもしれない、もしかしたら星に近づくための台だったのかもしれない。

その穴の実物を見て、横に再現されたやぐらを眺める。ボランティアでツアーガイドをしてくれていた地元のおばあちゃんは、やぐらを見上げながらこう言った。

「私は学者さんじゃないから、詳しいこと分からないの。けど、すごいと思わない?穴を調べたらすごい発見がたくさんあって、どんなふうに使われたか分からないけどいろんな想像ができるの。ロマンチックじゃない?地下には真実、地上にはロマンよ」

そのおばあちゃんの顔に刻まれたシワと、声に刻まれた感覚が心地よく感じられた。
そうなんだ。地下には真実、地上にはロマンなのだ。

学者さんも、青森市長も、ボランティアツアーガイドのみなさんも、その真実とロマンを追い求め、追い焦がれていま一万五千年前のこころが残っている。

そうなんだよ。真実とロマンなんだ。人が生きる原動力は。

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