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制作日記-実態と様態

実態と様態は、なんとなく偶然、出てきた言葉ですが、アートにとって重要な概念であり、作品の表現や意味において深く関わっています。軽く、おちゃらけたトーンではなく、今日は、少しだけ講義的なおもむきで、制作と哲学的視点から、掘り下げて考えていきたいと思います。読んでいただければ、アートの観方のヒントになり、今まで以上に多くの情報を作品から掴めるようになると思います。
だいぶ、長めに文章になってしまったため、初めて目次機能をつかってみました。では、よろしくお願いいたします。


実態について


まず、実態について考えてみましょう。アートにおいて、実態は作品が表現する本質的な内容やテーマを指します。例えば、描かれた対象物や表現されるテーマやメッセージ、コンセプトがその作品の実態となります。何を通して表現するか? 例えば、描かれるモチーフなどの検討が必要になってきます、何をテーマにして、どのような、ストーリーで表現するのかを決めなければなりません。

アーティストとして生きたいといった場合に、直感や衝動によって、実態が決定づけらることが、重要だと思います。常に自らに問いかけがあり、それに対しての関わり方が、その作品の魅力に直結しますが、実態だけが掴めたととしても、それを伝える様態についての捉え方が未熟であっては、制作は成り立たず、常に、実態と様態の関係性に気を配る必要があります。

様態について


実態だけでは作品が持つ意味や価値を十分に表現することはできません。このとき、制作において重要となるのが、様態という概念です。

様態とは、作品の形態や外観、表現方法などを指します。アートにおいて様態は、作品が持つ実態を表現するための手段であり、作品の意味や価値を深く印象づける要素でもあります。例えば、作品の構図や色彩の配色が、作品の印象や感情表現を大きく左右します。また、作品の大きさ、立体感や素材の質感が、作品の存在感を大きく左右します。

様態の重要性について


しかし、巷の作品を、実態と様態という視点で観察すると、様態のウェイトが低く残念に思うことが、しばしばあります。教育の現場でも、実態に比重がかかりすぎて、様態についてを軽視しているため、本来伝えたいことが伝えることができない、という状況を少なからず感じます。人の感性は、理解から入ることもありますが、触感や皮膚感のようなところから伝わる情報も多いので、あまりにもそこが雑に扱われていると、とても気の毒に感じます。

様態は、作品の実態をより深く伝えるために、重要な役割を担っています。例えば、抽象画においては、作品に描かれた具体的な対象物が存在しないため、作品の実態を表現するために、色や形状、線の表現、空間の見え方などの様態が、観る側の脳内でイメージとして定着させる接点であるため、細かな様態をいかに視覚情報としての純度を高めてゆくかが、実態をより深く掴んでゆくための手がかりとなります。

様態が実態を補完する


そのように、様態が実態を補完する関係性があるため、例えば、作品の実態が暗いメッセージであるにもかかわらず、明るい色彩や軽快なリズムが使われることで、作品の様態が明るく楽しい印象を与えてしまい、伝えたいイメージと乖離してしまう場面など、不本意な結果にならないように、実態と様態を切り離すことなく、常にその関係を意識してゆくかが、制作の肝になってくるのです。

さらに、実態と様態が個々の作品だけではなく、その時代や文化背景、そして作品を制作したアーティストの個性によっても異なることがあります。例えば、同じ実態を表現する絵画であっても、ルネサンス期の作品と現代の作品では、様態が全く異なります。また、同じ様態を持つ作品でも、作品を制作したアーティストの個性によって、作品の印象や意味が大きく異なってきます。

つまり、アートにおいて実態と様態は、作品を理解し感じるため、させるために欠かせない概念であり、作品にとって重要な意味を持っています。作品を制作するアーティストは、実態と様態をどのように組み合わせるかを考えながら、自らの創作活動に取り組んでいかなければなりません。また、観る側は、作品の実態と様態を探りながら、作品を鑑賞することで、作品から受ける感動やメッセージをより深く理解することができるでしょう。

哲学の視点


アートにおける実態と様態は、哲学の視点からも考えることができます。哲学においても、現実の本質や意味を探ることが重要な課題であり、実態と様態は、哲学においても重要な概念として扱われます。

実態とは、物事が存在する実在の状態を指します。哲学的には、実態は物自体に備わっている本質的な属性を表します。例えば、木の実態は木であり、その木は葉をつけていたり、年輪があったりする様態があります。一方、様態は、物事の見かけや形態を指します。つまり、実態が物自体の本質的な属性であるのに対し、様態は物事が持つ見かけや形態、外観のことを言います。

例えば、哲学者マルティン・ハイデッガーは、実態を「存在」と呼び、様態を「存在のあり方」と呼んでいます。彼は、「存在の問い」を探求し、人間がどのように存在するかを考えました。その中で、実態と様態が密接に結びついていることを指摘しています。人間は、自己の存在を意識し、その存在を様々な形で表現することによって、自己を実存的に現すことができると考えられます。

また、哲学においては、実態と様態を切り離して考えることができるという観点から、形而上学と現象学という2つの考え方があります。形而上学は、物事の本質を探求する学問であり、実態を重視します。一方、現象学は、現象の表層を探求する学問であり、様態を重視します。これらの2つの考え方は、互いに補完し合う関係にあるとされています。

哲学とアートの比較


哲学とアートの視点を比較してみますと、哲学では、実態は本質的な属性を表すことから、実体主義的な立場を取ることがあります。すなわち、物事の本質的な属性を追求し、その真実を知ることが目的とされます。一方、アートでは、様態が重要視されます。アートは、物事の見かけや形態を通じて、感性を刺激し、人々に何かを与えることが目的とすると。アートにおいては、作品の外観や形態が重要であり、その形態が作品の意味を形成しているのです。

アートと哲学は、異なる立場や視点から実態と様態に取り組んでいますが、共通点もあります。例えば、アートにおいても哲学においても、作品や物事が持つ本質的な属性や存在のあり方を考えることがあります。また、アートにおいても、形態や外観が作品の意味を形成することがあるため、様態が重要であることも共通しています。

このように、実態と様態は、哲学とアートの両方において重要な概念であり、異なる視点から取り組まれています。哲学では実態が重視され、アートでは様態が重視されますが、両者は共通点も持っています。アートや哲学を通じて、物事の本質的な属性や存在のあり方、形態や外観の意味を深く考えることができます。

まとめ


アートにおいて実態と様態は、作品の制作の中でも大きな意味を持っています。作品を制作するアーティストは、実態と様態をどのように組み合わせるかを考えながら、自らの創作活動に取り組んでいます。また、作品を理解し感じる上でも欠かせない概念であり、観る側は、作品の実態と様態を深く探りながら、鑑賞することで、作品が発している囁きを、より深く聴くことがでると思います。


ありがとうございます。
表現したり、観たりする一助になればうれしいです!


では、また。


© 2023 Yuki KATANO

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